12月23日(水)鈴木雅明 指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
~サントリーホール クリスマスコンサート 2009~
サントリーホール
【曲目】
◎ ヘンデル/オラトリオ「メサイア」HWV56 (孤児養育院版)
【アンコール】
鈴木優人/The first Noel 2009
S:レイチェル・ニコルズ、松井亜希/カウンターテナー:ダミアン・ギヨン/T:ゲルト・テュルク/B:ドミニク・ヴェルナー
クリスマスが近づくとわが家ではいつでもクラシック系ではバッハのクリスマスオラトリオをかけているので、クリスマスの定番ともいえるメサイアは自分としては馴染みが薄い。ライブでメサイアを聴いたことはこれまで1度しかないし、CDも持っていなかった。
今日久々にこのオラトリオを聴いて、馴染みが薄いと思っていたのに、超有名な2つの合唱曲以外にも聴いたことのあるメロディーが次々と出てきてとても楽しめ、とりわけ伸びやかで幸福感に満ちた音楽の素晴らしさを改めて感じた。
バッハコレギウムジャパンはヘンデルを演奏しても素晴らしい。1曲ずつをオケと合唱、選りすぐりのソリスト達が一丸となって生き生きと、明快かつ雄弁に表現し、長大な作品全体の明確なメッセージを築き上げて行く。
名手の集まりであるBCJのオケがうまいことは論を待たないが、今回はとりわけヴァイオリンのユニゾンの雄弁さ、表現力の豊かさに耳を奪われた。
バッハのアリアでは、様々なソロ楽器が歌にオブリガートを付けて行くのに対して、ヘンデルのこのメサイアではバッハの曲ならオブリガート楽器が担う役割の殆んどをヴァイオリンパートがユニゾンで受け持っていることに気づいた。これがヴァイオリンの雄弁さを際立たせることになった。喜び、怖れ、慰め、痛みや苦しみなどの感情、イエスの誕生や磔刑、復活などの情景をヴァイオリンのユニゾンはその場その場で繊細に、或いは大胆に描き、歌を引き立てる。その筆致の鮮やかさ、命が宿っているかのような生き生きとした様子に釘付けになった。
合唱も素晴らしかった。透明感のある美しいハーモニー、劇的な情景描写や感情表現の鮮やかさはピカイチで、生き生きとした魂が宿っていた。第3部の「死がひとりの人によって来たのだから」の内面性と劇的なものが融合した深淵な世界はとりわけ忘れ難い。
合唱団の中には芸大のバッハカンタータクラブで馴染みの顔が何人もいて、鈴木雅明/BCJならではの明快で深く掘り下げるアプローチをカンタータクラブならではの温かな慈愛が包んでいるようにも感じた。
ソリスト達も皆良かったが、中でもクリスマスの福音を告げるにふさわしい清澄な光に包まれたテュルクのテノール、艶のある美声で深みから溢れ出るような歌を聴かせたソプラノのニコルズ、そして松井亜希さんの気品のあるたたずまいの中で映える繊細でしなやかな表現の歌がとりわけ印象に残った。
「メサイア」全体から伝わってきたメッセージは「希望の光」。オラトリオとしてクリスマスを描いているのは第1部だけだが、全曲を聴き終わると世界が光に満ち溢れているように感じた。今年を締めくくるに相応しい素晴らしい演奏会だった。
BCJからのクリスマスプレゼントにもうひとつ素敵な贈り物がアンコールで添えられた。アカペラの合唱で有名な賛美歌「まきびとひつじを」のメロディーがハイセンスのアレンジで展開して行く曲で、こうしたアカペラヴォーカルアンサンブルのような洒落た乗りの音楽を歌わせてもBCJは上手い。アレンジは作曲もこなすチェンバロ担当の鈴木優人さん。BCJにはこうして常に新しい風も送り込まれていることを実感した。
~サントリーホール クリスマスコンサート 2009~
サントリーホール
【曲目】
◎ ヘンデル/オラトリオ「メサイア」HWV56 (孤児養育院版)
【アンコール】
鈴木優人/The first Noel 2009
S:レイチェル・ニコルズ、松井亜希/カウンターテナー:ダミアン・ギヨン/T:ゲルト・テュルク/B:ドミニク・ヴェルナー
クリスマスが近づくとわが家ではいつでもクラシック系ではバッハのクリスマスオラトリオをかけているので、クリスマスの定番ともいえるメサイアは自分としては馴染みが薄い。ライブでメサイアを聴いたことはこれまで1度しかないし、CDも持っていなかった。
今日久々にこのオラトリオを聴いて、馴染みが薄いと思っていたのに、超有名な2つの合唱曲以外にも聴いたことのあるメロディーが次々と出てきてとても楽しめ、とりわけ伸びやかで幸福感に満ちた音楽の素晴らしさを改めて感じた。
バッハコレギウムジャパンはヘンデルを演奏しても素晴らしい。1曲ずつをオケと合唱、選りすぐりのソリスト達が一丸となって生き生きと、明快かつ雄弁に表現し、長大な作品全体の明確なメッセージを築き上げて行く。
名手の集まりであるBCJのオケがうまいことは論を待たないが、今回はとりわけヴァイオリンのユニゾンの雄弁さ、表現力の豊かさに耳を奪われた。
バッハのアリアでは、様々なソロ楽器が歌にオブリガートを付けて行くのに対して、ヘンデルのこのメサイアではバッハの曲ならオブリガート楽器が担う役割の殆んどをヴァイオリンパートがユニゾンで受け持っていることに気づいた。これがヴァイオリンの雄弁さを際立たせることになった。喜び、怖れ、慰め、痛みや苦しみなどの感情、イエスの誕生や磔刑、復活などの情景をヴァイオリンのユニゾンはその場その場で繊細に、或いは大胆に描き、歌を引き立てる。その筆致の鮮やかさ、命が宿っているかのような生き生きとした様子に釘付けになった。
合唱も素晴らしかった。透明感のある美しいハーモニー、劇的な情景描写や感情表現の鮮やかさはピカイチで、生き生きとした魂が宿っていた。第3部の「死がひとりの人によって来たのだから」の内面性と劇的なものが融合した深淵な世界はとりわけ忘れ難い。
合唱団の中には芸大のバッハカンタータクラブで馴染みの顔が何人もいて、鈴木雅明/BCJならではの明快で深く掘り下げるアプローチをカンタータクラブならではの温かな慈愛が包んでいるようにも感じた。
ソリスト達も皆良かったが、中でもクリスマスの福音を告げるにふさわしい清澄な光に包まれたテュルクのテノール、艶のある美声で深みから溢れ出るような歌を聴かせたソプラノのニコルズ、そして松井亜希さんの気品のあるたたずまいの中で映える繊細でしなやかな表現の歌がとりわけ印象に残った。
「メサイア」全体から伝わってきたメッセージは「希望の光」。オラトリオとしてクリスマスを描いているのは第1部だけだが、全曲を聴き終わると世界が光に満ち溢れているように感じた。今年を締めくくるに相応しい素晴らしい演奏会だった。
BCJからのクリスマスプレゼントにもうひとつ素敵な贈り物がアンコールで添えられた。アカペラの合唱で有名な賛美歌「まきびとひつじを」のメロディーがハイセンスのアレンジで展開して行く曲で、こうしたアカペラヴォーカルアンサンブルのような洒落た乗りの音楽を歌わせてもBCJは上手い。アレンジは作曲もこなすチェンバロ担当の鈴木優人さん。BCJにはこうして常に新しい風も送り込まれていることを実感した。