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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

1:1コンサート(ひとりのためのコンサート)

2021年04月29日 |  pocknのコンサート感想録2021
4月27日(火)1:1コンサート(ひとりのためのコンサート)

~ゲーテ・インスティトゥート東京~



コンサートの前
併設のカフェレストランでアプフェルシュトゥルーデルとメランジェをいただいた

ヴァイオリン:田村安紗美



バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ~ラルゴ
クライスラー/シンコペーション
チャイコフスキー/アンダンテ・カンタービレ


「1:1コンサート」では、一人の演奏家がたった一人の聴衆のために音楽を奏でる。2019年にドイツで始まって大きな評判となり、ドイツ語教育やドイツ文化を世界に広めるドイツの公的機関「ゲーテ・インスティトゥート」が日本でこのコンサートを始めた。

事前に伝えられたのは、入室したら最初に1分間、演奏者とじっと見つめあうこと、約10分間の演奏が終わったらもう1度演奏者と短く見つめ合い、静かに退室すること。この間、言葉を発しないこと。

曲目や演奏者は事前には伝えられない。コンサートは無料で、コロナで苦境に立たされている芸術文化活動を支援する寄付を募っている。

ロビーで呼ばれるのを待っているときは、病院の待合室にいるような緊張。係の方に呼ばれて部屋に入ると、ヴァイオリンを携えた女性が一人。ちょっと緊張。2メートルの距離で置かれた椅子に向き合って座り、マスクを外してじっと見つめ合う。ちょっと恥ずかしい。でも、これは演奏者が何を演奏するかを決める大切な時間。心を解放して全てを読み取ってもらおうという気持ちになったら、1分は意外と短く感じた。

演奏者が立ち上がり、楽器を構えて演奏が始まった。バッハだ。温かく親密に湧き出た音が心に沁み入ってくる。空間にヴァイオリンの音色が美しく響き、楽器から発せられる生音と残響を全身に浴びる。いい曲だなとあらためて思う。アーティストが自分だけに語りかけてくれている不思議な感覚。
次の曲は聴いたことあるような、ないような・・・ 曲名も作曲者もわからない。その分、未知との出会いの気分。親しみがこもった旋律、お洒落で遊び心もあって気持ちが軽くなり、バッハの崇高な音楽と向き合っていた状態から気分がほどけて姿勢もゆるりとなった。
次はチャイコ。温かく、懐かしい気分になった。原曲でピッチカートの伴奏が入るフレーズでは、自然とピッチカートを心で奏でていた。演奏もそろそろ終盤、緊急事態宣言でまたもや演奏会の中止が相次ぎ、次はいつ聴けるだろうかと思うと切なさが込み上げてきた。これで終わりかな… 終わってほしくないなぁ、最後の長い音がとても名残り惜しかった。

素敵な時間だった。演奏者とプライベートで特別なものを共有した感覚。お礼を言いたかったがセレモニー中は話をしてはいけないので、表情で感謝を伝えたら、相手もそれに応えてくれた。マスクなしのコミュニケーションは、言葉がなくても心を通わせるために大切だなぁ。会場を出たときは穏やかで満たされた気持ちになっていた。演奏者の名前と曲目のメモを受け取った。ヴァイオリンは田村安紗美さん。2曲目はクライスラーのシンコペーション。

バッハのラルゴは、バッハの無伴奏のなかで一番好きかもと気づかせてもらえた。僕だけのために演奏してくれた3曲がどれも自分にとって特別な存在になった。リモートでは絶対にできない究極のライブコンサートだった。

コンサートを中止にしないで!
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