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モルゴーア・クァルテット 第50回定期演奏会

2021年01月27日 |  pocknのコンサート感想録2021
1月25日(月)モルゴーア・クァルテット
Vn:荒井英治、戸澤哲夫/Vla:小野富士/Vc:藤森亮一
~未明に放つ3本の矢!モルゴーアの真剣!~
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.ウェーベルン/弦楽四重奏曲(1905)
2.ベルク/弦楽四重奏曲 Op.3
3.シェーンベルク/弦楽四重奏曲 第1番 Op.7
【アンコール】
♪ ウェーベルン/チェロとピアノのための2つの小品~第2曲

30年近く活動を続けているモルゴーア・クァルテットはずっと気になる存在だったが、聴くのは今夜が初めて。偶然にも記念すべき50回目の定期演奏会に立ち会うこととなった。常に挑戦し続けているイメージのカルテットが、音楽史に鮮烈な影響を与えた新ウィーン楽派3人の作曲家による作品を取り上げたのが決め手だった。

と云っても実際に聴こえてきたのは、曲を知っていたベルクの作品を除いて、それぞれの作曲家から思い浮かべていたのとは異なる音楽だったが、このカルテットの充実ぶりを存分に味わうことが出来た。

最初のウェーベルン、イメージとは異なるロマンティックな曲だったが、モルゴーアの落ち着いた熟成の香りのする響きに引かれた。このカルテットはショスタコーヴィチなどのアグレッシブでシリアスな音楽を積極的に取り上げて来た印象があるので、もっと尖った野性味ある演奏をすると想像していたのだが、演奏から感じたのは、この曲に限らず自然で落ち着きのある深い響きと、緻密で丁寧な音楽づくりだ。

「4人がお互いの音をよく聴き合いながら」という次元を超えて、そんなこと意識しなくても合わせるタイミングを体が覚えているような一体感が伝わって来た。メンバー交代はあったが、長い年月をかけて醸成して生まれた響きと佇まいがある。それは中年の男が醸し出すダンディズム、全てを静かに受け止めて静かに語るハードボイルドのような魅力だ。

ベルクのカルテットでは、何だか心地よくて気づいたら瞼が閉じてしまうことが何度かあったので多くは語れないが、後半のシェーンベルクではそんなモルゴーア・クァルテットの魅力が存分に発揮されていた。恐らく初めて聴くこの曲は、「浄夜」が更に奥深く迷宮に入り込んでもがいているような音楽。これをモルゴーアの4人は、懐の深い大きな器で受けとめたうえでしっかりかみ砕いて消化し、そこに熱い魂を入れて白熱した演奏を繰り広げた。

終演後に荒井さんが、この曲は20年ぶりに取り上げたけれど、「今回の方が遥かに大変でした。。」と語っていた。スタミナが追いつかないということを自嘲気味に伝えたのだと思うが、聴いているかぎり余裕すら感じるスケールの大きな演奏で、そこから生まれる推進力は圧倒的だった。それにしてもこの曲は複雑怪奇の極致のようで、調性音楽のギリギリのところでやれることをやり尽くした観がある。ここまで来るとシェーンベルクが無調へ、そして12音技法へと舵を切ったのは必然だったようにも思えた。

こうして聴衆を極限まで追い詰めたあとのアンコールでは、その緊張感を一気に解きほぐしてくれた。こんな素晴らしいカルテットをこれまで聴いていなかったのは迂闊だった。
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