2月3日(土)Gebet ~祈り~
横浜海岸教会
【曲目】
♪ バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと命」~「主よ、人の望みの喜びよ」
♪ トスティ/祈り
♪ メンデルスゾーン/オラトリオ「パウルス」~「いまこそ我らは御使いとなった」
♪ メンデルスゾーン/オラトリオ「エリア」~「心を尽くして我を求めならば」、「いざ渇けるもの、皆水に来たれ」
♪ ロッシーニ/小荘厳ミサ~「この世の罪を」、「おお、救いの生贄よ」
♪ ロッシーニ/スターバト・マーテル~「聖なる母よ」
♪ ドヴォルザーク/聖書の歌~「主は私の羊飼い」
♪ ラフマニノフ/キリストは復活したOp.26-6
♪ ヴェルディ/レクイエム~「涙の日」
♪ ♪ ♪ ♪ バッハ/カンタータ第70番「目覚めよ!祈れ!祈れ!目覚めよ!」~冒頭合唱
♪ バッハ/カンタータ第125番「平安と喜び以て、我行かん」~デュエット「想像を絶する光が」
♪ バッハ/カンタータ第150番「主よ、我れ汝を仰ぎ望む」~デュエット「杉の森も風に吹かれて」
♪ バッハ/カンタータ第4番「キリストは死の縄目に繋がれたり」~デュエット「死に打ち勝てる者たえてなかりき」
♪ バッハ/カンタータ第173番「高められた血と肉」BWV173
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと命」~「主よ、人の望みの喜びよ」
【演奏】
S:朴 瑛実/MS:吉成文乃/T:藤井雄介/Bar:松田亜蘭/Pf:増田桃香
人類史上、最も古い音楽は「歌」だろうし、その歌で人々は太古から祈り続けてきたと思うと、「歌」と「祈り」は、根源的なところで深く結びついているといっていい。横浜の古い教会で、この「祈り」をタイトルに冠した歌の演奏会を聴いた。「祈り」の形態は多様だし、キリスト教に限らず、人々は見えない存在に畏怖しつつ祈り、様々な歌が生まれた。今回の「祈りの歌」は、どれも聖書が拠り所だが、それでもこれほど多彩な祈りの姿がある。とりわけプログラム前半は、個性の異なる7人の作曲家の作品を集め、敬虔で静かな祈りもあれば、苦しい時もポジティブに楽しんでしまう祈り、素朴で親密な祈り、荘厳で熱い祈り等々、思いや方法は様々だが、前半を聴き終わる頃には、一つの強くて大きな「祈り」で礼拝堂が、そして聴き手の心が満たされるのを感じた。
プログラム後半は全てバッハの教会カンタータから構成された。ひたすら信仰に生きたバッハの音楽は、罪深くはかない人間の魂の救済への祈りへ向かうわけだが、それがいかに豊かで深く、多様な世界であるかをあらためて実感。なかでも、ルターのコラールを軸に展開する4番のカンタータから、抗うことのできない「死」を歌った朴さんと吉成さんの、厳しさのリアルな表現が胸に迫ってきた。
出演した4人の歌い手はそれぞれ素晴らしい声と表現力の持ち主。ソプラノの朴さんは、学生時代はカンタータクラブで、柔らかく温かみのある歌に度々魅了されていたが(当時はアルトだった)、久々に聴いた朴さんの歌は、表現の幅と厚みが格段に大きくなって貫禄が付き、声の艶や深みも増し、聴き手の心を大きく包み込む頼もしさを感じた。トスティなんて絶品!
メゾの吉成さんは、聴く度に確かな成長が感じられる。様々な演奏会を自ら企画している吉成さんだが、この演奏会も彼女の企画だけに、演奏会への思い、成功への祈りは人一倍だったろうし、吉成さんの研ぎ澄まされた歌からは、それを聴き手に伝えようという思いが、真っ直ぐに伝わってきた。
テノールの藤井さんの歌唱はこれまでに何度か接しているが、これほど強いインパクトを受けたのは初めて。艶やかに磨きのかかった声の魅力が半端じゃなく、喜怒哀楽を持つ生身の人間の祈りの声が生き生きと伝わってきた。
バリトンの松田さんは、小細工のない真っ直ぐな歌を朗々と聴かせた。ラフマニノフなど、熱い思いをダイナミックに表現して聴き手を圧倒しながら、まだ余裕を感じる頼もしさがある。但し、松田さんは演奏中に譜面から目を上げるところを一度も見なかった。目線は聴き手の視覚的なインパクトだけでなく、演奏そのものとも無縁ではないはず。その点で損してしまっている。
殆どが元はオーケストラ作品で、編成や様式も様々な曲をアップライトピアノ一台で受け持った増田さんは、この大変な仕事をしっかりとこなした。バッハなどちょっと頑張り過ぎではと思うところもあったが、バッハに限らず、増田さんはこのピアノと格闘しているようだった。これはひとえに楽器の状態が原因では?とりわけ表現の豊かな肉付けが難しいように聞こえ、気の毒なほどだった。
世紀末ウィーンの光と陰~金成佳枝 & 吉成文乃~ 2017.10.9 やなか音楽ホール
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け
横浜海岸教会
【曲目】
♪ バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと命」~「主よ、人の望みの喜びよ」
♪ トスティ/祈り
♪ メンデルスゾーン/オラトリオ「パウルス」~「いまこそ我らは御使いとなった」
♪ メンデルスゾーン/オラトリオ「エリア」~「心を尽くして我を求めならば」、「いざ渇けるもの、皆水に来たれ」
♪ ロッシーニ/小荘厳ミサ~「この世の罪を」、「おお、救いの生贄よ」
♪ ロッシーニ/スターバト・マーテル~「聖なる母よ」
♪ ドヴォルザーク/聖書の歌~「主は私の羊飼い」
♪ ラフマニノフ/キリストは復活したOp.26-6
♪ ヴェルディ/レクイエム~「涙の日」
♪ バッハ/カンタータ第125番「平安と喜び以て、我行かん」~デュエット「想像を絶する光が」
♪ バッハ/カンタータ第150番「主よ、我れ汝を仰ぎ望む」~デュエット「杉の森も風に吹かれて」
♪ バッハ/カンタータ第4番「キリストは死の縄目に繋がれたり」~デュエット「死に打ち勝てる者たえてなかりき」
♪ バッハ/カンタータ第173番「高められた血と肉」BWV173
【アンコール】
♪ バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと命」~「主よ、人の望みの喜びよ」
【演奏】
S:朴 瑛実/MS:吉成文乃/T:藤井雄介/Bar:松田亜蘭/Pf:増田桃香
人類史上、最も古い音楽は「歌」だろうし、その歌で人々は太古から祈り続けてきたと思うと、「歌」と「祈り」は、根源的なところで深く結びついているといっていい。横浜の古い教会で、この「祈り」をタイトルに冠した歌の演奏会を聴いた。「祈り」の形態は多様だし、キリスト教に限らず、人々は見えない存在に畏怖しつつ祈り、様々な歌が生まれた。今回の「祈りの歌」は、どれも聖書が拠り所だが、それでもこれほど多彩な祈りの姿がある。とりわけプログラム前半は、個性の異なる7人の作曲家の作品を集め、敬虔で静かな祈りもあれば、苦しい時もポジティブに楽しんでしまう祈り、素朴で親密な祈り、荘厳で熱い祈り等々、思いや方法は様々だが、前半を聴き終わる頃には、一つの強くて大きな「祈り」で礼拝堂が、そして聴き手の心が満たされるのを感じた。
プログラム後半は全てバッハの教会カンタータから構成された。ひたすら信仰に生きたバッハの音楽は、罪深くはかない人間の魂の救済への祈りへ向かうわけだが、それがいかに豊かで深く、多様な世界であるかをあらためて実感。なかでも、ルターのコラールを軸に展開する4番のカンタータから、抗うことのできない「死」を歌った朴さんと吉成さんの、厳しさのリアルな表現が胸に迫ってきた。
出演した4人の歌い手はそれぞれ素晴らしい声と表現力の持ち主。ソプラノの朴さんは、学生時代はカンタータクラブで、柔らかく温かみのある歌に度々魅了されていたが(当時はアルトだった)、久々に聴いた朴さんの歌は、表現の幅と厚みが格段に大きくなって貫禄が付き、声の艶や深みも増し、聴き手の心を大きく包み込む頼もしさを感じた。トスティなんて絶品!
メゾの吉成さんは、聴く度に確かな成長が感じられる。様々な演奏会を自ら企画している吉成さんだが、この演奏会も彼女の企画だけに、演奏会への思い、成功への祈りは人一倍だったろうし、吉成さんの研ぎ澄まされた歌からは、それを聴き手に伝えようという思いが、真っ直ぐに伝わってきた。
テノールの藤井さんの歌唱はこれまでに何度か接しているが、これほど強いインパクトを受けたのは初めて。艶やかに磨きのかかった声の魅力が半端じゃなく、喜怒哀楽を持つ生身の人間の祈りの声が生き生きと伝わってきた。
バリトンの松田さんは、小細工のない真っ直ぐな歌を朗々と聴かせた。ラフマニノフなど、熱い思いをダイナミックに表現して聴き手を圧倒しながら、まだ余裕を感じる頼もしさがある。但し、松田さんは演奏中に譜面から目を上げるところを一度も見なかった。目線は聴き手の視覚的なインパクトだけでなく、演奏そのものとも無縁ではないはず。その点で損してしまっている。
殆どが元はオーケストラ作品で、編成や様式も様々な曲をアップライトピアノ一台で受け持った増田さんは、この大変な仕事をしっかりとこなした。バッハなどちょっと頑張り過ぎではと思うところもあったが、バッハに限らず、増田さんはこのピアノと格闘しているようだった。これはひとえに楽器の状態が原因では?とりわけ表現の豊かな肉付けが難しいように聞こえ、気の毒なほどだった。
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