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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル

2024年10月14日 | pocknのコンサート感想録2024
10月8日(火)ピエール=ロラン・エマール(Pf)
~プラチナ・シリーズ1~
東京文化会館小ホール

【曲目】
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第1曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第9番 イ短調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第2曲
♪ ベートーヴェン/7つのバガテル Op.33より 第2番 ハ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第3曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第2番 ハ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第4曲 「手回しオルガン」
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第3番 ニ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第5曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第10番 イ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第6曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第11番 変ロ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第7曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第6番 ト長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第8曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第5番 ハ短調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第9曲 「ベラ・バルトーク・イン・メモリアム」
♪ ベートーヴェン/7つのバガテル Op.33より 第7番 変イ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第10曲
♪ ベートーヴェン/11のバガテル Op.119より 第8番 ハ長調
♪ リゲティ/『ムジカ・リチェルカータ』より 第11曲 「ジローラモ・フレスコバルディへのオマージュ」
♪ ♪ ♪
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第2巻より 第7番 「悲しい鳩」
♪ ショパン/12の練習曲 Op.25より 第2番 ヘ短調
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第1巻より 第3番「妨げられた打鍵」
♪ ドビュッシー/12の練習曲より 第3番 「4度音程のために」
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第2巻より 第8番 「金属」
♪ ショパン/12の練習曲 Op.25より 第8番 変ニ長調
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第1巻より 第6番 「ワルシャワの秋」
♪ ドビュッシー/12の練習曲より 第11番 「組み合わされたアルペッジョのために」
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第1巻より 第2番 「開放弦」
♪ ドビュッシー/12の練習曲より 第7番 「半音階のために」
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第2巻より 第13番 「悪魔の階段」
【アンコール】
♪ リゲティ/3つのバガテル(1961)
♪ リゲティ/ピアノのための練習曲 第1巻より 第4番「ファンファーレ」

3年連続となるピエール=ロラン・エマールのリサイタル詣。今回もエマールは圧倒的な存在感を突きつけてきた。演奏曲目の核を成したのはリゲティ。そこに前半ではベートーヴェンが、後半ではショパンとドビュッシーがリゲティの作品と交互に組み込まれるというエマールならではの個性的なプログラム。

どの曲も演奏時間は数分という短いものばかりだが、大曲が2つ並んだようなボリュームを感じた。それは巧妙な選曲と配列によるところもあるし、エマールのピアノの音の濃さ、重さが大きく関わっていると思う。弱い音でも、一つ一つの音に確かな存在を感じさせる凝縮された質量がある。硬質で艶と輝きがあり、それらが「今音が生み出されている」という鮮烈さで真っ直ぐに向かって来る。毅然とした集中力に貫かれ、そこからは恐ろしいほどの気迫が伝わって来た。

会場には、リサイタルの前半と後半で楽器を替える旨の案内掲示があった。どちらもスタインウェイで、前半は2009年製、後半は2019年製とのこと。前半と後半では曲のテイストも異なるし、楽器の違いを耳で認識することはできなかったが、リゲティとベートーヴェンを交互に演奏した前半では、限られた音域の中での厳しい音楽という点で両者に共通性があり、時代を超えた2人の作曲家の作品が、モノトーンでストイックなひとつの世界を作り上げた。

リゲティの作品にショパンとドビュッシーの曲を組み合わせた後半では、より広い音域を縦横無尽に駆け回り、複雑なテクスチャを明晰に描き、煌びやかな響きが冴え渡った。ドビュッシーの練習曲集は、ドビュッシーのピアノ作品のなかでは演奏される機会が少ないが、音楽としては非常に研ぎ澄まされていて、これがリゲティの現代的な響きとよくマッチしていた。演奏された曲の中で、とりわけリゲティの「ワルシャワの秋」と、最後に演奏された「悪魔の階段」は集中力、気迫、熱量どれもが極限状態とも云えるレベルで聴き手の心を鷲掴みにした。

満員の客席からの大喝采とブラボーに応えて演奏したリゲティの「3つのバガテル」は、最初に低いcisの音?を一つ鳴らすだけで、あとは譜面を捲るだけ、或いは弾くポーズを取るだけで音は鳴らさないまま終わる音楽。1961年の作品というから明らかにケージの「4分33秒」へのオマージュだろう。こんな曲がリゲティにあることを知ったのも面白かった。

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