今回は、少し・・昔のお話
8月に入ったばかりの或る日、母に言われたこの一言が全ての始まりでした。
「あそこのペットショップに、可愛い仔ウサギがいるよ」
・・・"あそこのペットショップ"とは、我が家から歩いて5分程の処にあるディスカウントショップ内に入っているペットショップのこと。
毎日の忙しさにかまけて、動物を飼おうなどとは露ほど思っていなかったのですが、やはり見ているだけでも癒されるから
・・と、買い物の折には必ず立ち寄って眺めていました
しかし、不況のあおりか、そのディスカウントショップは全館閉店することが決まっており、8月下旬の閉店に向けての売り尽くしセールが始まった頃でした。
当時、親の仕事を手伝っていた私は、ある程度時間の自由もきくことから、母の言葉に乗って見に行ってみることにしました
あまり広くもないスペースに、犬猫から亀に昆虫、熱帯魚まで一通り揃っていて、在庫処分のように『生体全て10%引き』の赤札があちこちにぶら下がっていました。
まして今は夏休み真っ只中
・・・子供を連れた家族連れが多くひしめきあっていました。
お目当ての仔ウサギは、すぐに見つかりました。
古ぼけた錆びたケージ。汚れた新聞紙が敷かれ、トイレ砂が少し入った三角トイレに、ほとんど入っていないエサ入れと水のみ器。
その隅にじっとうずくまり、周囲の喧騒など全く気にしないかのように目を閉じている小さな茶色いウサギ。
隣りには、これよりもう少し大きく、売り物なのか綺麗なケージに1匹ずつデップリ大きくなった大人ウサギが3匹居ました。
幼い仔はこの仔だけ。それまで兄弟と一緒に居たけど売れ残ってしまったのか、最初から親兄弟と引き離されたのか分かりません。
あまりにも動かないので、・・病気なのかな
・・と思うぐらい・・・でも、ナゼか一目で魅かれてしまったのです
赤ちゃんはみんな可愛いもの・・・一時想いを抱いても、時が過ぎれば忘れてしまうさ
と、何度自分の中で葛藤したか・・・・・それでも、それ以上に、何かほうっておけない不思議な縁を感じていたのかもしれません
結局、幾度となく脳裏によぎる姿が気になって、毎日ペットショップに足を運ぶようになりました。
数日後見に行くと、今度は目をパッチリ開け、毛づくろいをしていました。
あまりのあどけなさに、ますます情は湧くばかり
なおも、「こんなに可愛いし、夏休みだし、割引されているんだから、すぐに買い手がつくんだろうな」と、必死に思い込み抵抗するもう1人の自分が居ました
また数日経った或る日、その仔のケージに、3倍は体格差があろうかという大人ウサギが同居していました。
ただでさえ狭いケージの中、大人ウサギは活発に動き回っており、またがれようが後ろ足で蹴られようが、その仔はまたじっと隅にうずくまっていました
日々、『買い取り予約』の札が貼られ、犬や猫のショーケースも段々寂しくなっていきます。
1週間、悩みぬいて、母に切り出しました。
「今度、あの仔がまだ居たら、飼いたい」
多分反対されるだろうな・・・と想っていたら、意外にあっさりと
「いいんじゃない。飼ってみたら」と、OKが出ました
翌日、遠くに住む弟一家が帰省してきて、彼らと一緒にペットショップへ行きました
"一度決心したものの、もう貰い手がいたらどうしよう・・・・・
"とドキドキしながらケージに向かうと、変わらずじっとしたままの、あの仔が居ました
店長らしいお兄さんに頼んで、抱っこさせてもらいました。
両手にすっぽり入って余る程の小さく、軽く、弱々しい仔・・でもふわふわ暖かくて、即座に「予約します
」と申し出ていました
私の言葉に、大喜びする当時3歳の姪っ子と、まさかウサギを飼うなんて言い出すと思っていなかった・・と驚く弟夫婦の顔を、今でも思い出します
閉店日が差し迫っているからか、早く引き取りに来るよう念を押され、この日は帰宅しました。
そして、真新しいケージを持って再びペットショップに行った8月11日、『1割引の天使』が、我が家にやって来ました
この仔の名前は、「まろん」
こうして、私のうさ飼いの日々が始まりました