ある原子中の電子が磁場を生み出し、
この刺激によって隣接する原子中の電子が引き付けられるとき、この力が発生する。
「ファンデルワールス力は、
原子間に働く力で最も弱い種類のものだ」と話すのは、
研究の共著者でオレゴン州立大学の
機械工学教授P・アレックス・グレイニー(P. Alex Greany)氏だ。
「ヤモリがこの本当に弱い力を利用できるというのは驚くべきことだ」。
ヤモリの足指には非常に多くの微小な剛毛(seta)が生えており、
さらに剛毛は枝分かれして無数の小さなヘラ状構造(spatula)の接着点になっている。
この驚異的な生体構造を利用して、上述の力が生み出される。
ヘラ状構造によって接着面積を最大化し、
体重の負荷を分散させ、自身と接着面との間に働く引力を
指数関数的に増加させることができるのだとグレイニー氏は説明する。
◆離れるしくみ
しかしヤモリが一歩進みたいときには、どうやって接着面から離れるのだろうか?
グレイニー氏らの研究チームは、
その鍵が足指に生えた微毛の角度にあることを発見した。
研究チームは数理モデルを使って、
ヤモリが単純に剛毛の角度を変化させることで簡単に接着面から
離れることができるという予測を出した。
また剛毛はただ斜めになっているのではなく、
カーブを描いている。この構造によってヤモリは膨大な量の
エネルギーを蓄え、非常に素早く方向を
変えることができるのだとグレイニー氏は語っている。
◆ヤモリ・テクノロジー
今回の研究は、ロボットのグリッパーや
足に使う繰り返し使用可能な接着剤の
開発に取り組んでいる科学者たちが、
壁を登ったり物をつかんだりできる
ロボットを考える際の参考になるだろう。
「Journal of Applied Physics」誌より。