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鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

不二先輩誕生日おめでとー

2013-02-28 20:45:45 | テニプリ
―はじめに―


これは「テニスの王子様」の二次創作小説です。
BLが苦手な方・BLの意味が分からない方は今すぐ引き返してください。
設定も随分変えています。

設定についてはこちらをお読みください

では、2月28日と3月1日の2日間にわけて連載します。
お楽しみくださいませ。





 今日は2月28日。
 僕の誕生日は2月29日。
 手塚は今年もまた、2月28日の24時に僕に贈り物をくれるだろう。
 何なのかな……楽しみだ。
 くすっ、そのことを思うと自然に頬が緩んでしまうよ。


 不二はバークリースクエアで肌寒い中、芝生に座り込みながらうたた寝をしていた。
 目をこする。
 もうすぐでお昼休みも終わりだ。病院へ戻らないと……。
 夢を、みていた。
 昔のことをつい思い出してしまった。
 それは僕がまだ中二で幼かったころのこと――。



 あれ。この低い心地よい音色は手塚?
「不二」
君の声ってなんでこんなにもあでやかに響くんだろうね?くすっ、嬉しいよ、君に名前を呼ばれるだけでこんなにも幸せ。
「不二!グラウンド30周だ!」
心のうちでため息をつく。
「もう。せっかく眠ってたのだから、キスくらいして目覚めさせてくれればいいのに」
そう呟いて瞳をあける。そして、自分の前に仁王立ちしている手塚をみて、くすりと笑った。
「意味わからないこというな。部活中だぞ!」
「意味わからないって何だよ、もう…」
そして手塚の眼を下から捕らえる。手塚がこころなしか少し詰まったのが分かった。
「僕の気持ち、知ってるくせに」
「おまえの気持ちに応えられる自信はないといっただろう」
「手塚のこと、僕が好きなのは、いくら君でも変えられないよ」
「おまえは、俺たちの友情を、恋慕だと勘違いしているんじゃないのか?」
「ちがうっていってるでしょ!やめて。僕は手塚に恋している。それは僕自身が一番よく分かっていることなんだから」
「…そうか」
「走ってくる」
「ああ」
不二は手塚から目をそむけるようにして、グラウンドを踏みしめて走り出した。

 水のみ場でばしゃばしゃ顔を洗っていると、すっきりしてきた。横にあるタオルをとって拭こうとする――が、ない。
「ふっふっふ、だーれだ」
その瞬間、タオルが目にかぶさり、目隠しされた。
「……英二」
「……えへへ、不二だとすぐに当てちゃうにゃん」
「だってこんなことするの英二しかいないじゃない」
「えーっ、そうかなあー?乾とかもしそうじゃない?」
「ないない」
「桃ならするね!」
「あーそれはあるかもね」
不二はうなずく。と、菊丸はうれしそうに微笑んだ。えくぼができる。菊丸とは中一のころから、気のおけない友だちである。
「ちーす」
「あ、桃じゃん!」
「うわさをすれば、だね」
「不二先輩。手塚部長が呼んでいたっす。うわさ?」
「え?なんだろう?」
「そーいえば今日、不二の誕生日の一日前じゃん!それだよそれ!」
菊丸はしてやったりと笑う。その笑顔をみていると不二も微笑がこぼれてきた。
「そうだといいな」
たとえば…、プレゼントのこととかね。
「でも。ありえないって」
違った場合、虚しくなるだけだから、あらかじめありえないとしておく。
「そおかにゃ?」
「うん、だって去年くれなかったし」
「それは不二の誕生日を手塚が知らなかっただけみたいだよ?」
「まあね、そうだけど」
「俺明日不二にプレゼントあげるねー!」
「ありがとう英二。じゃ、ちょっといってくる」
「うんっ!」

 だが、不二の期待がかたちとなったのか、手塚がまず口に出した言葉は
「明日?おまえ誕生日だろう」
だった。
「えっ」
細められていた不二の瞳がうるるんとして開眼する。
「その…何か、ほしいものとか、あるか?」
「―――手塚、僕、うれしい」
「そうか」
「君がくれるものならなんでも宝物にするよ」
不二はくしゃっと微笑んだ。
「……!」
その次の瞬間、不二は驚いた。
「どうした、不二」
「君が微笑んだ……、君が微笑むところ初めて見た」
「む。俺だって喜怒哀楽の感情はあるぞ」
「えー。そおかなあ?ふふふ、いつも怒ってばっかだよ、手塚は。でもそんな君が好き」
「おまえにそういわれると、このごろ胸の中がおかしくなる」
「えっ」
「病院にいったほうがいいだろうか?」
「そ、そんなことはないと思うよ…でも、嬉しいな」
「何がだ?」
「鈍いところも大好き」
「意味がわからんぞ」
「ふふふ、ね、見て、あの雲。鯨の形にみえない?」
「そう思えば、そうだな」
冬の空は天高く、飛行機が一機空に浮かんでいた。
「僕ね…新しい技を考えているんだ。今日、放課後、僕との練習に付き合ってくれない?」
「ほう。かまわないが」


~To be continued




ナショナルギャラリー編

2012-12-04 20:35:40 | テニプリ
―はじめに―


これは「テニスの王子様」の二次創作小説です。
BLが苦手な方は今すぐ引き返してください。
ちなみにR15程度の甘さです。
設定もずいぶんと変えています。

まず、二人はもう成人です。
不二はミラクルドクターつまり医者となり、
弟の裕太は看護師です。
手塚はプロテニスプレイヤーです。

ロンドン中心部にあるナショナルギャラリーという美術館をみなさんご存知でしょうか?
ネルソン提督の像のあるトラフォルガー広場の前にある美術館です。
あ、これは本当の話ですよ。
それで、ここからが仮想の話なのですが、
不二と手塚はナショナルギャラリー近辺のアパートに住んでいます。
一応、不二兄弟の部屋、手塚の部屋、跡部の物置(部屋です)というふうに隣り合っています。
しかし、手塚の部屋に不二はほとんど入り浸り。
つまり同棲生活です。
しかし、私はエロは苦手なのでエロは無しです。

以上のことをお分かりいただけたら、どうぞ小説を読んでください。
お楽しみいただけたら、幸いです。

初秋の夕焼け雲 【ナショナルギャラリー編】

2012-12-04 19:51:21 | テニプリ
初秋の夕焼け雲

 今日も雲は漂い、爽やかな風はアパートの通路から見上げる不二の髪をそっと撫でて通り過ぎていく。
――手塚まだかなぁ。
 一人でいると、不思議だね。からかいたくなる気持ちよりも、キミを愛しいって想う気持ちのほうが強く感ぜられる。はやくキミが帰ってこないか、帰ってきてもまたいつもと同じような日常のはずなのに、そのキミと一緒の日常をずっと抱きしめて大事にし続けたいって思うんだ。

「…じ。不二」
耳元で低く響く、キミの優しさ。ひんやりと腕が冷たくって、ああボクは空を見上げたままうたた寝してたんだな、と分かった。
「不二? いい加減寒くなる時間帯だぞ」
キミの困ったような声をもうちょっとだけ聞いていたい。だめ、かなぁ? 不二はそのまま寝たふりを続けて、手塚の反応をみてみることにした。

――まったく。
 手塚はアパートの階段を上がってきて、その手すりにもたれかかりうたた寝している不二を見た。今日はね、昼過ぎに病院の勤務をぬけだすことができそうなんだ、だから夜一緒だね、という内容のメールは、取材に応じていたためすぐに返信を返せなかった。きっと不二がまた外で待っていることだろうと思った手塚は練習もそこそこに引上げてきたのだった。
 橙色の夕陽が不二の真白い肌に射して、暖かな色を与えていた。訳もなくどきどきして暫くその不二の顔を見つめていた手塚は、一陣の冷たい風が不二の長い睫毛を震えさせたのを目の当たりにして、ハッと我に返ったのだった。
「不二」
二回呼んだ。
「不二? いい加減寒くなる時間帯だぞ」
 心なしか、また睫毛が素早く揺れたように感じた。スッと切れのある瞳の入口を縁取る、色素の薄いヘーゼル色の長い睫毛はピンと張りつめて、こんなときにまでも不二の隙のない美しさを演出していた。
――はやく起こさなくては不二が風邪をひく。
不二が風邪をひくと、重い病気を患う患者さんたちの手術の予約に、大変なトラブルをきたすことは手塚も知っていた。
――でももうちょっと。
でも、もうちょっとこのまま見ていたい。おまえのあどけない寝顔。夜、手塚おまえが起きていればずっと見れるものじゃないか、そう制している理性も抑えて、手塚は口を再び開くのを躊躇していた。
 夕陽に染まる不二の顔を綺麗だと思った。めったにその時間見惚れたことがないからかもしれない、急いで言い訳めいたものを作って鼓動を打つ胸を押さえた。不二の横に、ここに、ずっと突っ立っているのも悪くない。俺の上着を不二の背中にかけてやれば寒さもそれほど感じずに済むだろう。
「…っ」
不二の唇が小刻みに揺れた。
「不二ッ」
手塚は大きな声をあげて、ついと手を伸ばした。

 あれ、どうしたのかな、どうして急にだんまりになっちゃったの。目の前にまだ手塚は立っているようだ、というのは気配で分かる。どうしたんだろ…手塚。
 夕焼け雲のあいだから射る光が、眩しかった。もう手塚ったら。早く起こしてよね。
「…っ」
一言手塚に呟こうとして、言葉が見つからずうまく声を出せなかった。どうしよう、このまま手塚が起こしてくれなかったら。もう一度寝てみて、それから起きれば自然体かな。そう思った途端、手塚の激した怒鳴り声が不二の両の耳を覆った。
「不二ッ」
――あ、しまった、怒っちゃったみたい。
内心焦って瞳を開こうとして、脳内で素早く手塚への言い訳をまとめた。
 と、ふと何か眼前の空気が揺らいだ気がして、不二は息を止めた。瞼…、じゃない。え、手塚?! どうしたの。これは――、ボクの睫毛にキミが触れている。そ、そうだよね。心臓がどきどきして、空気を伝わってキミまで届くかと思った。堪らず、不二はそっとそのまま手塚の人差し指を乗せるように神経を集中して、ゆっくりと瞳を開けた。
「手塚?」

「手塚?」
その声に、反射的に左手の人差し指を引っ込めた。
「不二! そんなところで何をしている!」
いくばくかひき加減の不二の身体を押さえて、眼鏡の奥から不二の瞳を捕らえた。困惑、不二の瞳には困惑が映っていて、それとどういうわけか頬がほんのり紅に染まっていた。
「あ、えっとぉ…ごめん、うたた寝しちゃったみたい。ありがとう手塚起こしてくれて。ううぅ、ちょっと寒いや」
「そうだろう。いったい何時間ここにいたんだ?」
「うーん、二時間くらいじゃないかな。ボク、帰ってきて遅い昼ご飯食べて、そのあとはずっとここでキミを待ってたから」
「……っ」
「手塚?」
「はぁ…とにかく家へ入れ。話はそれからだ」
不二の笑みがぱあっと花開く。
――べつに話ってほどの話、もうそんなにないでしょ。
クスッと微笑をもらした不二の、そんな心の声が聞こえてきそうで手塚は不機嫌に眉をしかめた。
「あ、そうだ」
「なんだ」
まずは不二に熱いシャワーでも浴びさせなくてはと手塚は思って、ポケットの幾つかの鍵のうち、ヒグマのシールが貼ってある鍵を鍵穴に差し込む。こっちなの? 瞳で問いかけてくる隣の彼に、こちらも眼で有無を言わせず応対する。うんっ、こっくり従順に頷く彼を、たまらなく愛しいと思った。
「ふふ、手塚、おかえり」
玄関に二人が入って、ドアが閉まる。ふり向いてにっこり笑う不二の柔らかな微笑に包まれて、何故だか身体中がくすぐったい。待ってたんだよ、剛情にそれを言っているわけでない、ただ今日も手塚が帰ってきた、という事象そのものを喜ぶ不二の笑みに、つられて俺も微笑を口に零してしまった。
「ああ。ただいま不二」
 そうっと慈しむように不二の頬に口づけを落とすと、ほわあっとそこが色づいていくのを見て、手塚はまた笑った。細かく瞬きを繰り返し、「ひどいや」と呟く。
「手塚……好きだよ?」
「ああ」
くすっと笑うおまえの全てが愛しくて。

 左手の人差し指に残る、不二のヘーゼルの睫毛の感触。夕陽を含んでいるにも関わらず、その睫毛は予想以上にひんやり冷たかった。
――花開くおまえの微笑といい相性だな。
手塚は、靴をぬいで洗面所へ向かう不二の背中を見遣ったあと、その自分の指先をじっと見つめた。そっと舐めてみると、微かに暖かな夕焼け雲の味がした。
2010/04/05