久しぶりにケイトちゃんのお話を書きました!
Wordで2頁とちょっとのお話になったので、4,5月分、まとめてこれでもいいでしょうか?m(__)m すみません……。万梨羅さんが読んでくださると嬉しいのですが……。随分、お待たせしました。どしどし感想待っています。
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まず、
これ(ケイトの番外編1)を読んでからだと、お話がスムーズに読めると思います。
お姫様つまりニーナ嬢のお父様はパーシー、お母様はエリーといいました。世界一周旅行をしているのであります。
さて、ニーナ嬢のお館からいったんはなれましょう、ショーンのここ数日の出来事を話したいと思います。
ショーンは、王室直々の申し出に拒めるはずもなく――というのはショーンの父が、ショーンとベラリナ王女とのご結婚を望んでいるということもあり――、ケイトとお互いの気持ちをたしかめあったその翌日、王宮にいました。そして言い渡されたのは、
「一か月、宮廷貴族とも触れ合い、王宮での生活を楽しめ」
ということでした。つまり、一か月だけとの約束ですけれども、いわゆる軟禁状態です。
ショーンは、お金に目がない父を恨みました。
来る日も来る日もベラリナ王女との噂が、いやおうなしに耳にはいってきます。
「ショーン様」
ある日のことです。王宮での生活も慣れてきた、二十日間くらい過ぎた頃。
「なんだアダム」
「明日のご予定ですが……、国王様によれば、王女様は、ショーン様のお館のある地方へ、つまりテンビローチェ港におもむき、世界一周クルーズを終えたベーゼ号をご見学なさるということです。ショーン様も気晴らしに行ってみては?」
「うーん」
「王女様を邪険に扱ってはいけません。友好を築いた上で、ケイト様のことをお話になられたほうが、アダムはいいと思いますよ」
「それもそうだな。うん、分かってる」
――そして、ショーンはその申し出をしたのでありました。
朝のテンビローチェ港は、霧に煙っていました。
ショーンは、久しぶりに自分の、ミスランドウ地方から引っ越してきたテンビローチェ港に近い館(やかた)に戻ってきて、バルコニーで大きく背伸びをしました。
確か、ベーゼ号は一昨日、無事、港に到着し、今日の九時から王女が見学する、という話でした。ショーンも同行します。
「アダム」
「はい、ショーン様、ここに」
「ちょっと朝の散歩をしてくる。七時になったら戻ってくるから。ちょっと呑気に、この港町を歩いてみたいんだ」
「はっ」
ショーンが歩いていくと、足が自然に大型客船が泊まるクスノキ大公園にと向かいました。そこで、燕が一匹、教会の一階の凹んだ空間に巣を作っているのを発見しました。
「クスッ」
自然に笑みが零れましたが、ひょいと巣を覗くと、びっくりしたことに、貴婦人用の麦わら帽子まで使われているではありませんか! 燕が、つまんで持って行った残りの帽子は、巣の下に落っこちています。ショーンが不思議に思って歩いていくと、霧がかった向こうに、二人のきちんとした恋人のように仲睦まじい夫婦が歩いてくるのが見えました。
「おはようございます」
「まあ、丁寧な子ね。おはようございます」
挨拶をしました。そして貴婦人は白い肘の上まである手袋をしていまして、ショーンに手の甲を差し出してきました。ショーンは身分が高いのだろうと察し、その手の甲をとって接吻いたしました。
「おやおや。帽子もなくして君はもうまた浮気かね?」
からかったようなおどけた男性の声がしました。
「まさか。ふふ、あなた」
「なんだい?」
「呼んでみただけ」
「そうかい。ははは」
ショーンは尋ねてみました。
「帽子って、どんな帽子ですか?」
「あら、ふふ、私ったら、南の島で買ったストローハットをついさっき、風に飛ばされて、まだ見つけられないのよ」
ストローハットとは麦わら帽子のことです。ショーンはもしかして、燕の巣に使われているものではないかと思い、その旨を話しました。
クスノキ大公園の教会の燕の巣に使われていた帽子は確かに、そのレディのものでした。
「くすくす。燕の巣になったのなら、本望よ。うれしいわ、ねえあなた」
「そうだね。君は物事を楽しく考える女性(ひと)だから、ぼくも嬉しいよ」
なんといちゃいちゃしている夫婦でしょう!
「あなたにお礼がしたいわ」
貴婦人が言います。
「いえいえとんでもありません、あなた方のおかげで、僕も楽しい散歩になりました」
「なんというお名前?」
「ショーン・ガーティと申します」
「わたくしはエリー・ジオライ。ねえパーシー、いいでしょ? 館にご招待しましょうよ」
「ジ、ジオライ!?」
「あら?」
「いや……、なんでもありません」
最後のほうは声が小さくなってしまったショーンでした。
「いいよ、君さえよければね」
パーシーが言います。
「じゃあ決まりね」
ふとした拍子にニーナ嬢の父上と母上に出会ってしまったショーンでした。