今日、LEC東京リーガルマインドで、私の担当講座である「判例百選で書く合格答案の作法」テキスト作成を担当してくれているチーム宮武の面々の合格祝賀会をしました。彼ら全員が今年の司法試験に合格され、晴れて司法修習生となるのです。
ところが、彼らが浮かない顔をしているのです。その理由のひとつには司法修習生の弁護士事務所への就職活動が非常に厳しいこと。
そして、もう一つは法科大学院(ロースクール)の学費で多額の借金がすでにあるのに、さらに司法研修所に入って司法修習生になると借金が増えるというところにありました。
(ふるかわやさんにて)
司法修習生とは、司法試験に合格した後、最高裁判所に採用されて、司法研修所や現場での実務など1年間の研修に専念する準国家公務員のことです。
司法修習という研修は平日にフルタイムで行われ、その期間は副業やアルバイトは禁止されています。このため、これまでは司法修習生に対して国から国家公務員の大学卒初任給相当額(現在月額手取り20万円ほど)の生活費が給付されてきました。
それは、彼ら司法修習生も、たとえば検察修習の間には検察庁の取調室で取調を行い、それが証拠となって起訴・公判が行われるし、裁判修習では法廷で公判や口頭弁論に立ち会って判決起案をして、それが裁判官の言い渡す判決の原案になることもあるからです。
しかし2004年に裁判所法が改定され、2010年11月からこの給費制(給与)が廃止され、生活費等が必要な修習生には最高裁判所が一定金額を貸し付ける「貸与制」に変更されることになりました。
最高裁がカードローン会社と提携し、連帯保証人2人を取って、司法修習生に金を貸すという異常事態になります。
2010年11月1日に時間切れでいったん貸与制が施行されましたが、多くの国民の声が後押しとなり、11月26日に貸与制導入を1年延期する裁判所法改正が実現しました。
しかし、このままでは2011年11月より貸与制に移行してしまいます。
国民本位の司法のために 司法修習生の給与=給費制維持についてご理解ください!
会社に就職すれば、新人研修中や試用期間であっても給与が支給されます。たとえ戦力にならなくても、その人の人生(時間)を拘束している以上、当然のことです。まして戦力になっている司法修習生の労働には対価を支払うのが当然です。
司法試験の合格者は司法修習をうけなければ法曹資格は取得できません。研修期間中とは言え、1年間フルタイムで拘束しアルバイトも禁止しておきながら「無給」とはひどすぎます。
これでは社会の有為の人材を司法に集め、この社会を良くしていくどころか、ますます人材が逃げてしまいます。
チーム宮武の中で、親のすねをかじって無借金でロースクールを卒業したというひとは一人だけ。最低でも50万円、なんと最高は500万円借金があるというひとが二人いました。ロースクールの学費は国立大学で一年に80万円。私立だと1年で150~300万円もするのです(ロースクール制度自体の存廃も重要な論点ですが今はおきます)。
このように、給費制の現在でも、法曹志望者は、法科大学院(ロースクール)の高額な学費 と生活費を工面するため、多額の借金を抱えて苦しんでいます。
日弁連が2009年11月に実施したアンケート調査によると、司法修習生の半数以上が借金を 抱え、その平均額は318万円、最高額は1,200万円という悲惨な実態が明らかになっています。
今年から貸与制になれば、さらに約300万円の借金が上積みされることになります。
これでは、志をもった優秀な若者たちが、家庭の経済的な事情で法律家への夢を断念せざるを得ないことになりかねません。特に親元から離れて生活せざるを得ないという経済的なハンディを抱えた地方出身者にとっては深刻です。
私は冗談にならないので今晩は言いませんでしたが、今の司法修習生は、弁護士になって初めての仕事が自分の自己破産かも・・・・なんてことが弁護士会ではブラックジョークで語られています。
司法制度改革の理念は、社会の幅広い層から多様な人材を養成することにあったはずです。法曹への道は、貧富の差を問わず、広く門戸が開かれていなければなりません。お金持ちだけが法律家になれるのでは、弱者の気持ちがわからないひとが裁判官などになってしまい、結局、社会のためにならないのです。
お金がないと法律家になれなくなり、庶民感覚からほど遠い人たちが司法の世界の多数を占めるようになったとき、私たちの暮らしや権利は守られるのでしょうか。
市民目線でない裁判官が、原発差止め訴訟をすべて原告敗訴に終わらせてきました。
弱者の気持ちのわからない検察官は権力があるだけに最悪ですよね。良い人材を集めないといくら制度を改善しても、証拠ねつ造やえん罪は終わりません。
さらに、弁護士の仕事は裁判だけではありません。無料法律相談や社会的弱者のための人権救済活動、さらには法制度の改善・立法に向けた提言活動まで、公共的・公益的な活動を担っています。
しかし、これから多額の借金を抱えて実務生活をスタートさせざるを得ない若手の弁護士は、たとえ能力があり、志は高くとも、障害者の事件、外国人事件や労働事件、消費者問題などなど少数者の人権の擁護・弱者救済など金にならない仕事に向き合う余裕がなくなってしまうのではないでしょうか。
現にチーム宮武の諸君の中には、能力もあり性格も良いのに、「お金を返済すること以外は考えられない」という若者もいました。
給費制度は、何も司法修習生だけにあるのではありません。
医師の場合も、新卒医に2年間の臨床研修が義務づけられ、研修医に給与(研修機関に対して国庫補助金)が支払われています。また、防衛大学校、防衛医科大学校、気象大学、海上保安大学校、航空保安大学校の学生も、学費は無料で給与も支給されています。
有能な新人を社会が給費で育てる。それは社会全体の利益であり、社会的投資です。経済的には恵まれていなくても努力次第で専門的職業に就ける。また、そのような才能を育てることによって、社会が活性化し、若者が将来に希望を持て、閉塞感が払拭できるのです。
司法修習生への給費制存続は、有為な人材を社会で育てる社会を維持することを意味します。
勝負はこの10月、11月。
是非、ご自身の人生と生活のために、司法修習生の給費制維持問題を考えて頂きたいと思います。
さまざまな階層からやってきた法律家が育った方が良いと思われた方は
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先生のおっしゃるように、弁護士も社会のインフラの一つとして国が育てるべきだと思います。それが、将来の全体の利益の上昇につながるはずです。
給費制度は、戦後の混乱期、財政的にも窮乏の状況において作られた制度です。その当時は、法曹の重要性が認識されていたようです。
現在でも、法律家の社会における影響力は大きく、先生を始め多方面で支援活動をなさっている方も多いです。法律家の方々が、社会に還元しているものは計り知れないのではないでしょうか。
昨今、法科大学院の出願資格を得るための試験に受験しているのは8000人弱と、全国の法科大学院定員と同じです。貸与制へ移行すること等(あくまで貸与制は一要因として記載しています。)の影響で多様な人材を確保することが困難な状況となっています。
やはり、もう一度短期的な視点でなく、長期的に国民に何が利益になるのかを考えて、給費制度を維持すべきでないでしょうか。
やはり実際問題として給費制維持の論拠はとても説得力がありますよね。
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クレーマー市民を守るためではないはずでは?
受験生の間は難しかったでしょうが、これからは是非ビギナーズネットに参加してくださいね。
ビギナーズ・ネット
司法修習生の給費制維持のための若手ネットワーク
http://www.beginners-net.com/
民法の基本書ですが、川井先生か大村先生がいいと思います。
レスしにくいなぁ(^_^;)
>>「負け犬さん」
鋭いご指摘です。
では。
クレームといったとらえ方をしていると、いつまでたっても同じ問題が続いておきます。返って問題が悪化したり。
意見ととらえて、相手の話を良く聞き話し合ってみると、その中に反省すべき点があったり、業務や関係の改善のきっかけにもなります。
企業側が改善すべきこともありますから。
1つ1つ問題を見ていくことが必要です。
負け犬さんのおっしゃるクレーマー市民を守るとは具体的にはどんなことですか?
最高裁こそ、憲法番外地ですね。
また、意見を発信していきます。