Everyone says I love you !

弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

ロシア軍が占拠しているウクライナのザポリージャ原発で火災発生。両国が相手に責任ありと非難合戦。しかし、ウクライナ領の原発をロシア軍が攻撃して占拠したこと自体が国際法違反の戦争犯罪であることを忘れるな。

2024年08月13日 | ロシアによるウクライナ侵略

上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。

 

 

 ロシアによるウクライナ戦争を語るときに、うちではよく「反米こじらせ派」と「親露派」という言葉を使いますが、わたくし、あのプーチン大統領を絶賛する親露派のことは正直理解できないのですが、反米にはシンパシーを覚えます。

 だって、戦後世界で、ソ連や中国が国内での粛清や少数民族虐殺で何百何千万という人を殺したという話はありますが、こと戦争にかけては他国に戦争を仕掛けて多くの人を殺してきたのは何と言ってもアメリカ合衆国です。

 例えば、ベトナム戦争では500万人ものベトナム人民を殺したのがアメリカです。

 だから、この現代世界で平和を真剣に希求していれば、アメリカ合衆国については徹底的に非難するのは当たり前なんですよ。

ジョンソン英首相がロシアの安保理常任理事国からの「解任」を提案。それが可能ならベトナム戦争やイラク戦争を起こした米国も解任せよ。常任理事国制度も彼らの核保有だけを合法化するNPT条約も要らない。

第二次大戦後、休みなく他国に戦争を仕掛けて何百万人も殺し続けてきたアメリカ合衆国に、自由と民主主義の旗手を気取る資格はない。

 

 

 

 ことに日本はいまだにアメリカの属国のように米軍基地が林立していて、米軍兵による犯罪や基地による騒音や公害が後を絶たず、辺野古にはまた海兵隊のための新基地が作られようとしています。

 1970年前後の安保闘争がそうであったように、日本で平和運動をしようと思ったら、多かれ少なかれ、反米になりますよ。

 そして、日本のように歴代自民党政権、自公政権がアメリカにひれ伏していて抑え込まれていたら、親米右翼でいるほうがずっと楽なので、そういう論者はごまんといるじゃないですか。

 それに対して反米を唱えていたら、この同調圧力の大きい日本社会ではそれは生きづらいわけで、そういう意味でも、日本では反米は即、反権力を意味するのですから、むしろ反米を貫いている方はリスペクトです。

 その中でうちで反米拗らせと呼ぶ人たちは、本来、平和と人権保障のために反米になったはずが、反米が判断軸になってしまって、平和や人権が二の次になる本末転倒なことになっているから批判しているわけです。

 例えば、ロシアがウクライナに侵略してウクライナの人々を殺し、両国の兵士の命も奪っているのに、ロシアを非難するよりもずっと大きな熱量で「アメリカの代理戦争をしている」ウクライナを責めるようであれば、これはもう反米をこじらせているとしか言いようがないのです。

 ですが、親露派と反米拗らせ論者を比べれば、親露派のほうが宇宙人のようにはやはり感じます。

アメリカの産軍複合体はウクライナという新たな「市場」を見つけた。第二次大戦後、世界中で戦争をしまくり、イスラエルによる武力行使を放置するアメリカに、ロシアによるウクライナ侵略を非難する資格はない。

自民党が防衛装備移転三原則見直しで殺傷能力のある兵器の輸出を狙う。バイデン大統領が日本の防衛費増額は「私が説得した」。ウクライナ戦争を口実にした日米産軍複合体の口車に乗せられるな!

 

 

 さて、前振りが超長くなりましたが、2024年8月6日早朝からウクライナと国境を接するロシア西部クルスク州にウクライナ軍が侵攻しているそうです。

 「今こそ停戦を」求める親露派の面々が一斉に、ウクライナを非難。。。。

 するかと思ったのですが、数日間はまったくの沈黙で驚きました。

 その理由は、ロシアに侵略されているウクライナの自衛権の行使としてウクライナの越境攻撃は適法だから。

 という国際法に準拠した理由ではもちろんなく。

 

 

 親露派から見てこのウクライナ軍の奇襲攻撃の成功がプーチン大統領のメンツ丸つぶれだったかららしく(-_-;)、ロシア政府がウクライナの「テロ」に反撃すると公式に認めたのでやっと日本の親露派もウクライナ批判を開始しだしました。

 親露派って日本に暮らしているのにそこまでプーチン氏と一体化してるのかと驚き、やはり親露派脳は理解できないなと思わざるを得ませんでした。

国境なき医師団の病院がロシア軍により72時間の間に2度砲撃を受け、医師らが死傷。「ロシア軍が民間インフラ、住宅地、医療施設に攻撃を続けている」と批判声明。ロシアの戦争犯罪は西側のフェイクではない。

 

 

 さて、ロシア政府が公式にウクライナ軍に攻め入られていることを認めたので、大っぴらにこのことを発言してよくなった親露派陰謀論者たち。

 もしこのウクライナの越境攻撃がうまくいきすぎたら

「ロシアが核兵器で反撃するかもしれない。ウクライナは停戦すべきだ」

と主張し、もしこの攻撃が失敗に終わっても

「ウクライナ軍の犠牲が大きすぎる。ウクライナは停戦すべきだ」

とどちらにしても即時停戦を主張するのに決まっていますから、始末に負えません(-_-;)。

 そもそも、たとえば核による威嚇も核兵器の使用ももちろん国際法違反であり、その違法行為の主体はプーチン大統領とロシア政府なのに、そちらは全く非難しないところが親露派の親露派たるゆえんです。

伊勢崎賢治氏は親露派というより反米拗らせだが、むしろ商業反米というのが当たっている。

菅野志桜里氏などと同じく9条に自衛隊条項を明記せよという「新9条論」=改憲論者で、共産党を除名された松竹伸幸氏と「自衛隊を活かす会」まで作っているのに、9条の絶対平和主義を語るなど、別に何の信念も特になく目立つために拗れたことを言っている風だ。

 

 

 さて、ロシアに侵略されているウクライナの軍隊が、越境してロシアに攻め入ってウクライナ攻撃に使われているロシアの基地やその兵站を担っている天然ガスの基地を攻撃するのは、もちろんウクライナ国家の自衛権の範囲内です。

 そうではありますが、ウクライナ軍が進軍しているロシア領にはロシアの市民が暮らしているわけで、その方たちが何万人も避難していると聞くと、ウクライナ市民もそうであるように、お気の毒だとしかいいようがなく、複雑な気持ちになります。

 まあ、ロシアにウクライナが侵略されても「たかが領土」じゃないかと言っていた「今こそ停戦を」一派は、ロシア市民が家を追われ避難することにについても歯牙にもかけないのがむしろ論理的なのですが。

イスラエル軍のガザ侵攻から100日。追い立てられるパレスチナの民「自分たちが先に立ち退いてしまえば次は隣が襲われる」「土地を追われるのは体から魂を奪われるようなもの」。「たかが領土」論の傲慢を知れ。

 

 

 あとまだ重大な懸念があって、ウクライナ軍はもう国境から10キロ以上進撃し、一説には400平方キロメートルのロシアの領土を支配下に置いたとも伝えられているので、私が心配なのは、ウクライナ軍がロシアの民間人に対して復讐心から残虐な行為をしないかということです。

 2022年2月のロシア軍の侵略開始以来、それはそれはロシア軍に痛めつけられ、戦争犯罪で苦しめられてきたウクライナの民衆。

 今、この侵略戦争開始以来初めてウクライナ軍がロシアに攻め入ったわけで、ロシア軍がウクライナ人にやったことに対する報復として、ウクライナ軍が残酷な行為をしないか、それだけは注視していなければなりません。

ボグナー国連人権監視団団長「戦争犯罪だ。国際人権法の重大な違反」。ロシア軍は侵略開始してからウクライナで民間人864人を拘束し9割以上を拷問し77人を裁判なしで即決処刑。ロシア軍は即時撤退せよ。

 

「 ロシア占領下のウクライナ南部拘置施設に拘束されていた多数のウクライナ人が拷問や性的暴行を受けていた」とする調査結果を国際的専門家チームが公表。ロシア軍占領の現状を固定化する停戦は今はできない。

 

ノーベル平和賞団体のマトビチュク代表「占領は戦争の一形態であり、そこでは暴力が続いています。強制移送、拷問、性的暴力、アイデンティティーの否定、強制的な養子縁組が起きるのが占領されるということです」

 

 

 さて、ウクライナ戦争での戦争犯罪と言えば、ウクライナに侵略を開始して以来、ロシア軍がやったことの中で最も危険な違法行為の一つが原発攻撃です。

 ゼレンスキー大統領は8月11日の深夜に、同国南部にあるザポリージャ原子力発電所の敷地内でロシア軍が火災を起こしたとX(旧ツイッター)に投稿し、世界各国・地域と国際原子力機関(IAEA)に対応を求めました。

 ザポリージャ原発はご存じの通り、ヨーロッパ最大の原子力発電所です。

 今回の火災は、不意打ちを食らったプーチン政権によるゼレンスキー政権への牽制球なのかもしれませんが、この原発が万一事故を起こしたら、その被害はウクライナだけではなくヨーロッパから全世界に及ぶ可能性があります。

国際法違反で戦争犯罪にもなりかねないロシア軍の原発攻撃に沈黙する橋下徹氏。ウクライナ人に「旧ソ連から時代は変わった」「中国がロシアに働きかける可能性もある」からロシアと妥協しろと言い募る(呆)。

 

更田原子力規制委員会委員長が「日本の原発は戦争を想定していない。審査の中で検討も議論もしていない。仮定すらしていない」。そしてロシア軍がチェルノブイリ原発の電力を切断。原発はリスクでしかない。

 

ロシアが占領している欧州最大のザポリージャ原発を盾にロシア軍がウクライナ軍を攻撃し、ウクライナ軍がこれに反撃する双方の狂気。核兵器も原発も戦争も世界から廃絶するしか人類が生き残る道はない。

 
 
 
 しかし、すかさずロシアはこの火災をウクライナ軍の攻撃のせいだと非難。
 
 IAEAのグロッシ事務局長は声明を出し、攻撃の責任を特定はせず、
 
「このような無謀な攻撃は原発の安全を危険にさらし、事故のリスクを高める。今すぐに止めなければならない」
 
と述べました。
 
 今回の火災がどちらの攻撃や原因で起こったかは別にして、そもそもウクライナ領内の原発をロシア軍が占拠しているからには、ロシア軍がこのザポリージャ原発を攻撃したことだけは明らかです。
 
 そしてもちろん、戦争中の原発攻撃はジュネーブ条約に違反する戦争犯罪です。
 
 今回のウクライナ軍のロシア侵攻より前に、ロシア軍による違法な原発攻撃と占拠がまず大きく取り上げられるべきでしょう。

ウクライナ軍が優勢だったときに、そのせいでロシア軍が核兵器を使うかもしれない、それは迷惑だと人でなしなことを言っていた親露派。

ロシアの原発攻撃で放射性物質が全世界にまき散らされるのは迷惑じゃないのか。

 

ロシア軍の原発攻撃について一言もコメントしたことがない「今こそ停戦を」一派。

ウクライナ戦争に対する「即時停戦派」がなぜ「徹底抗戦派」より、国際世論でも国内的にも支持を得られないのか。その理由は即時停戦派の偏頗性=偏っていて不公平、にある。

 

ロシア軍の戦争犯罪をスルーして、よく「今こそ停戦を」などと言えたものだ。

ロシアがウクライナの民間人に数百発のクラスター爆弾を使用。ウクライナ全土のインフラ施設にミサイル攻撃。ザポロジエ原発がロシアのミサイル攻撃で外部電源停止。ウクライナ戦争を泥沼化しているのはロシアだ。

 
これまで侵略しているロシア軍には撤退を求めず、侵略されているウクライナに停戦を求める「今こそ停戦を」派は、ロシア軍による原発攻撃に一度も言及したことさえありません。
というか、ロシア軍による強姦も拷問も処刑も一切触れたことがないのですが。
 
即時停戦派は停戦したほうが停戦しないよりも人命が助けられるのは理の当然だと主張しているのですが、彼らは停戦してロシア軍の占領が恒久化したときに、その占領地でロシア軍によってウクライナ市民の命と権利がどれだけ奪われるかについては全く見ず、考慮していません。
 
戦争開始から二年半もの間、ロシア軍がウクライナ領を占領しているときの戦争犯罪やウクライナ民衆の被害を完全にスルーしてきた親露派や反米こじらせ派に、ウクライナ人の人命を尊重するには停戦したほうがいいとリスク評価をする資格はないのです。
 
そして、パレスチナ自治区ガザに侵攻しているイスラエル政府には停戦を求め、ウクライナ戦争では侵略しているロシアに停戦を求めず、被害国ウクライナに停戦を求める彼らのダブスタは、彼らが批判する欧米諸国がロシアは非難してイスラエルは擁護するダブスタといい勝負です。
 
特にウクライナへの軍事援助は否定、ロシアへの経済制裁も否定、ロシアは万博にも五輪にも広島長崎の平和式典にも全部招待されるべきだと、ロシアの利益になることしか言わない親露派が、ウクライナ人の人命尊重のために即時停戦をと、急にウクライナ人のためになるといい出しても、まったく説得力がなく報道もされないのは当然です。
 

上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。

 

 

ロシア軍、占拠中のザポリージャ原発で火災起こす-ウクライナ大統領

 

ウクライナのゼレンスキー大統領は11日遅く、同国南部にあるザポリージャ原子力発電所の敷地内でロシア軍が火災を起こしたとソーシャルメディアX(旧ツイッター)に投稿し、世界各国・地域と国際原子力機関(IAEA)に対応を求めた。

  ゼレンスキー氏によると、放射線量の水準は今のところ正常範囲内にある。

  ロシアはウクライナへの全面侵攻開始直後の2022年3月にザポリージャ原発を占拠した。それ以降、同原発はウクライナの電力網から切り離されているが、ロシアは同原発を自国の電力網に接続できないでいる。IAEAは安全性悪化が懸念されるとして、ロシアに対し同原発をウクライナに返還するよう要求している。

 

 

ザポロジエ原発で火災、ウクライナとロシアが互いを非難

ザポロジエ原発で火災、ウクライナとロシアが互いを非難
 ウクライナとロシアは11日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所の敷地内で火災を起こしたと互いを非難した。いずれも放射線量上昇の兆候はないとしている。写真は同原発。ウクライナで昨年6月撮影(2024年 ロイター/Alina Smutko)
[11日 ロイター] - ウクライナとロシアは11日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所の敷地内で火災を起こしたと互いを非難した。いずれも放射線量上昇の兆候はないとしている。
国際原子力機関(IAEA)は同機関の専門家らが複数の爆発の後、原発の北側から黒煙が上がるのを目撃したと明らかにし、「冷却塔の一つが無人機攻撃を受けたと伝えられた」とXに投稿した。原発の安全性への影響は報告されていないという。
IAEAのグロッシ事務局長は声明で、攻撃の責任を特定はせず「このような無謀な攻撃は原発の安全を危険にさらし、事故のリスクを高める。今すぐに止めなければならない」と述べた。
ロシア国営通信のタスとRIAは原子力企業ロスアトムの情報として、主要な火災は鎮火したと伝えた。
ウクライナの原子力企業エネルゴアトムは冷却塔の一つと別の設備が被害を受けたとした。
グロッシ事務局長は冷却塔の状況を調査するため「即時アクセス」を要請したと述べた。グロッシ氏の声明に対し、ロシア、ウクライナからの反応はいまのところない。
 
 

上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 取調べで「検察なめんな」と... | トップ | メルトダウンした福島原発の... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なお)
2024-08-13 09:45:48
う~~~む。
自国領内の原発を攻撃しちゃうって、頭おかしくないですか?

例えば、
柏崎苅羽原発を中国が占拠。
国際法違反だからと、日本が柏崎カリバ原発を攻撃した、みたいな事でしょ。
岸田さんの頭がおかしくなったのではと、中国より自国の政府の事が不安になります。

どっちが良い悪いの議論は一先ず横に置いて、
先ずは落ち着け!停戦しなさい!
と言うのが日本のあるべき姿ではないかと思います。
返信する
Unknown (raymiyatake)
2024-08-13 22:39:07
だからウクライナの攻撃じゃないと考えるのが自然ですね

ロシア軍が占領していたダム破壊と同じです
返信する
Unknown (秋風亭遊穂)
2024-08-17 20:59:36
 なおさんがウクライナの仕業だと決めてかかる具体的な証拠・事象を聞いてみたいもの。

 さて、new Scientist 誌がこの事件について取り上げている。ロシアは、「ウクライナの神風ドローンが攻撃をした」とうそぶいたが、IAEAはドローンの痕跡はなかったと発表している。すぐばれる嘘をつくクレムリンの低俗さを、なおさんは認知すべきだろう。

Russian-occupied Ukrainian nuclear plant at risk, warn former workers
(New Scientist 13 August 2024)

 では、火災の原因は何か?ロシアでなかったとしたら、つまり原発の損傷が引き起こしたとしたら、それも恐ろしい話だ。ロシアが占領している以上、ロシアが安全管理の責任を負うのは当然。そもそも原発を軍隊が占領する異常さを、なおさんはどう考えているのか? 原発の恐ろしさをどこまで知っているのか? 即時停戦をまじめに考えるなら、まずはじめに原発からロシア軍の撤退を論じるべきではないのか。
 
 以前、この原発に勤務していた方が new Scientist 誌のインタビューに答えている。経験豊富なスタッフが多数退職しており、加えて設備の品質低下も懸念されている。ロシアの管理下にあるため、職員は状況について公に話すことを恐れていると。

 国際社会がザポリージャ原発の安全性をどこまで支援できるか。やはりロシア軍の撤退を強く求めてもらいたい。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ロシアによるウクライナ侵略」カテゴリの最新記事