「H(息子)くんはいつも絵本の読み聞かせの時間にみんなと一緒に聞かず,部屋のはじっこで一人でおもちゃで遊んでいるんです。おうちでもっと絵本を読んであげてください」。
保育園の2歳児クラスで担任の先生から言われた言葉です。
息子の自分勝手な行動は家で絵本を読んであげてないせいだというような口ぶりでした。
ええ,確かに家で絵本の読み聞かせはしていません。
でもやろうとしてないわけではないんですよ。できないんです。
私が家で絵本を開いても,息子はまったく耳を傾けず,勝手にページをパラパラめくってどこかに走り去ってしまうんです。
本当はそう反論したかったのですが,決め付けたような態度のベテランの年配保育士にくってかかる気力もなく,「はぁ…」としか答えられませんでした。
絵本の読み聞かせが発達障害児の療育にかぎらず,子どもの成長にいい理由はわかります。
そこから得られる言葉や教訓,物の考え方が成長の糧になることはいうまでもなく,人の話を聞く姿勢を伸ばすことにもつながります。
いいのはわかる。でもできない。
物語を聞かないというと
「では好きなのは図鑑ですか?」
と発達相談で聞かれたことがあります。自閉症の子には愛読書が「図鑑」というタイプの子もいるようですが,息子の場合,図鑑にも対して興味を示しませんでした。
私は長い間,息子が絵本を聞かないことに諦めモードになっていました。
でも息子が2歳10カ月のとき,転機が訪れました。
飛行機好きな息子のために,私の友人が飛行機の出てくる絵本をプレゼントしてくれたのです。
有名なリサとガスパールシリーズの「リサ ひこうきにのる」。
主人公のリサが飛行機に乗ってニューヨークに到着するまでのあいだの機内での体験をつづった物語です。
私の仕事の関係で毎月のように飛行機に乗っていた息子にとって,機内でジュースを飲んだり映画を見たりすることが自分の経験と重なったのか,最初から最後まで絵本を聞くことができたうえに,何度も読んでくれとせがむようにまでなりました。
この一冊で絵本が楽しいとわかってからはほかの絵本に対するハードルも下がり,飛行機が出てくる「バムとケロのそらのたび」のような絵本だけでなく,いろんなジャンルの絵本も聞けるようになりました。
ここで私が学んだのは,息子が絵本を聞かなかったのは興味の偏りももちろんあるけれど,ページから次のページに行くまでのあいだの状況を言葉を聞いてイメージする力が足りなかったせいもあったということです。
私がそれまでに試した絵本では,言葉の遅れもあって,話を聞いて物語の内容を想像することが難しかったのでしょう。
私は,もっと息子の経験に沿った,息子がイメージしやすい絵本を探さず諦めていたことを反省しました。
実はうちにはこのブログで紹介している小学生の息子のほかに,もう一人,自閉症が疑われる1歳の息子がいます。
この下の子は1歳3カ月ころから発語や言語理解の退行があり,1歳半の時点で話せる言葉がありませんでした。
私は上の息子での反省をふまえ,この1歳の子にとにかく絵本をいろいろ変えて読み聞かせを試みています。図書館で一度に10冊くらい借りてくると,そのほとんどはきちんと聞けませんが,1冊か2冊は聞いてくれるものがあります。
でも,この子は明らかに上の息子よりもレスポンスがよいので,10冊中1〜2冊聞いてくれるのはいいほうなのかもしれません。なかなかいい本に出会えない場合には,こんな方法もあります。
1.はしょる
下の子はよく,動画で慣れ親しんでいる「機関車トーマス」の絵本を読んでくれと持ってくるのですが,このシリーズは幼児向けのわりに文章が長く,ちゃんと読んでも最後まで聞けません。なので全部を読まずに「ジェームス,トーマス,なかよし,おしまい!」くらいにはしょってしまったところ,かえって喜び,もっともっととせがむようになりました。
2. フォトブックを作る
上の息子に言葉を教えるのにデジカメとipadを使ったことは過去記事(言葉を引き出す 自作コミュニケーションボードとデジカメで語りかけの効果)で述べましたが,この1歳の下の子にも同じ方法を試したところ,幼すぎるのかメカそのものに興味がいってしまって映像を一緒に見てくれません。そこで,おでかけやちょっと変わったイベントがあるごとにフォトブックを作成し,それを絵本代わりに使っています。
うちではしまうまプリントを利用していますが,簡単なレイアウトや文字の追加までできて1冊198円から制作できるので,頻繁にフォトブッックを作っています。
自分で見知ったことが写真で出ているフォトブックは,どれも非常に食いつきがいいです。
3. 動画を使う
絵本,絵本といっておいてなんですが,動く絵本と考えれば動画も使えます。
動画は一般に絵本に比べて「よくない」と言われがちですが,それは使いようの問題で,見せっぱなしにせずに親子で一緒に見てインターラクティブに利用すれば役立つこともあります。
うちでは「ピングー」や「ひつじのショーン」など,言葉がなくてもストーリーがわかる単純なクレイアニメを一緒に見ながら,「壊れちゃったね」とか「悲しいね」など簡単な言葉で解説をしています。
動画の方が絵本よりも子どもの食いつきがいいので,絵本だけでは伝えきれないことも教えられるのではと期待しています。
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この下の息子が今後どういう成長をたどるのかは,データがある程度たまってからまた別の機会に発表したいと思います。
次回は息子の療育に役立った絵本を紹介します。