過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)1のつづき
こうして絵日記による言葉の訓練の方向性が見えてきたのですが,問題は息子の気まぐれでした。絵日記自体は毎日書いていたのですが,その内容を息子が先生に話すのはその日の気分次第で,数日分の日記をさかのぼってあれこれお話をする日も月に数回あったものの,完全に無視される日の方が圧倒的に多い状態でした。
毎日の絵日記の内容が平凡な日常生活で話をする気も起きない,というわけでもなく,例えば仲のいいお友達家族とグアム旅行に行って海で珍しい魚を見たり潜水艦に乗ったというレアな体験に大興奮した次の日も,先生には一切話をしませんでした。
療育はなんでもそうかもしれませんが,特に言語訓練のようなものは1回で劇的に能力が上がることはなく,回数や頻度,繰り返しが重要になります。
息子が先生に話をする頻度を何とかあげられないかと考えたのが,写真の導入です(5歳4カ月〜)。絵を描くかわりにその日にあったことがわかる写真を撮って家庭用プリンタで印刷し,一緒に話しながら絵日記に貼り付けるようにしたのです。
その効果は劇的でした。最初の1カ月は絵日記に絵を描く日と写真を貼りつける日が半々くらいでしたが,息子が先生によく話しをする日が5割以上になり,翌月から全部写真に切り替えたところ,ほぼ毎日,先生との会話が弾むようになりました。
今こうして振り返ると,私の描いた拙い絵と写真とでは情報量の差が歴然で,例えば私にはエビらしきものを描くのがやっとでしたが,写真だったらどういうカニがどれくらい獲れたかがわかります。子どもだったらどっちが人に話したくなるか……は一目瞭然ですね。
私の絵
写真
私の絵
写真
その日つかまえた魚やカニ,料理などは写真におさめやすいのですが,DVDやビデオゲームなど写真に撮りにくいものはビデオのパッケージをそのままコピーしたり,パソコンで画像検索したイメージ図を印刷して貼りました。また,訪れた施設の全景がうまく写真に撮れないような場所は,施設のパンフレットをそのまま切って貼り付けたりしました。
やがて息子は,自分に起きた出来事を先生に話すのが楽しくなったようで,種まきした野菜の種のパッケージや,折り紙の作品など,息子が先生に見せたい・話したいというものを日記にどんどん貼り付けていきました。
写真などをこれだけベタベタ貼ってしまうと,もともとの日記のテンプレートはあまり意味がなくなってしまうのですが,最終的に利用していた日記のテンプレートをここに載せておきます。月の始まりが何曜日かによってカレンダーが変わるので,7種類あります。
絵日記を写真にしたところ,思いもかけない効果もありました。写真に興味をもったクラスメイトが息子と先生の周りに集まるようになり,言葉下手な息子が友達と近づくためのきっかけにもなりました。