前回の記事「電子母」では,母の仕事を電子デバイス(AmazonのEcho)に肩代わりしてもらう方法について紹介しましたが,それでもなお手が足りないことはいくらでもあります。
今回は電子デバイスをさらに活用した対策を紹介します。
************************************************************************************************************
Echoのリマインダー機能を導入してからというもの,私が息子に口やかましくあれこれ注意することは圧倒的に減りました。
しかし,呼びかけはあくまで機械から息子への一方通行なため,息子の行動を促すことには有効でも,してほしくない行動の抑止力としては働きません。宿題から逃れようとする息子を止めるのに,リマインダーは無力でした。
Echoの導入をしたのは小学校4年生で,息子の宿題の量も増えていました。これを息子が自ら進んでやるはずもなく,宿題をやりとげるのに見守り,というか見張りがいります。
とはいえ,私が仕事から帰ってくる時間は18時〜19時すぎ,そこから夕食を準備して食べさせて片付けて……となると,家事をこなすだけで精一杯。手が回りません。
さらに,息子には7歳離れた幼い弟がいて,この2人をどうにかしつつ,家事を終わらせるのは至難な技です。
息子を机に座らせた後に弟に別室で動画を見させて夕食の片付けをしていると,息子がいつの間にか席を立って,弟の幼児向け番組を覗き見しているではありませんか。注意して何度席に戻しても同じことの繰り返し。
息子を机につなぎとめておいてくれる人がほしい……,そこで思いついたのがじじ(義父)の存在です。
じじの家は飛行機に乗らなければ行けないほど遠く,ちょっと家に来て息子を見張ってくださいとは簡単には言えません。そこで再びEchoの力を借りることにしました。
Echoはリマインダー機能のほかに,他のAIスピーカーにはない優れた機能がついていました。「呼びかけ」という機能です。これは,Echo同士で顔を見ながら対話ができるというもので,同一アカウントであれば片方からの呼びかけで自動的に接続できる,つまり相手が応答するといったリアクションをとらなくても向こうの様子を見ることができるのです。
Echoを息子の机に1台,じじの家に1台設置する必要があるので最初は投資がいりますが,この問題を解決できるならと早速導入することにしました。じじの家のEchoの設定は,夫が直接出向いて行いました。家にEchoを導入してから2カ月後,小4の3学期から遠隔の見張りを開始しました。
最初はとにかく机の前に生きた目を置くことが目的で,勉強があまりはかどっていなさそうのときに,適宜声掛けをしてもらうようにしました。
この作戦は,家の中に手が増え,じじにとっても孫の顔を見られる機会が増えて一石二鳥!と完璧に思えたのですが,そんなにすべてが順調に運んだわけではありませんでした。
宿題の量は,低学年から比べたら増えたと言っても,集中すれば10〜20分で終わるような量。それがすぐに集中して時間通り終わることもあれば,気乗りせずまったく進まないこともあり。それに対し,じじが声掛けをしても反発してけんかになったり,と,日によってできたりできなかったりの繰り返しになりました。
オンラインでの見守りは,対面式と異なり,ネット回線や機械の問題で音がとぎれとぎれになってしまうこともマイナスに働きました。
オンラインでの対話は,互いに相手の話を聞く意思のある者同士が話せば,たとえ聞き取りにくい場面が合っても成立しますが,息子はもともと人の話を聞くのが苦手。日本語の理解も柔軟性にかけるため,一つの言葉だけ聞きかじって勝手な解釈をして怒り出したりと,息子の性格上,難しいところがありました。
しかしながら,うちにはほかの選択肢がなく,Echoを介した見守りにかけることにしました。夫は,けんかの原因となりがちな音声品質の低さを改善するために,ネット回線をチェックしてくれました。調べてみたら,家のネットが遅かったのは電話回線の差込口(モジュラーコンセント)とモデムをつないでいたモデムケーブルが悪かったらしく,新しいものに取り替えたら通信速度が上がり,音声品質も安定しました(ケーブル,通信速度のキーワード検索でいろいろ情報がでてきます)。夫実家のケーブルも,夫が取り替えに行きました。
私の方も,けんかがあったときにじじと本人の双方に聞き取りを行うなどして,対策を考えました。
こうして何とか宿題の見守りを軌道に乗せることができました。
こうなるとEchoは電子母ではなく電子じじとでも呼ぶべきでしょうか。
機械の中身が実は人間,という仕事を「メカニカルターク」と呼ぶそうです。
Echoは進化して,メカニカルタークをこなすようになりました。
こうして1年以上が経過した頃,コロナの影響で学校が休校になり,このメカニカルタークが大活躍!となりそうですが,そうそう簡単にはいきませんでした。
自主勉強やその他の勉強が定着するまでには,かなりの工夫と労力がいりました。次回はその詳細をお伝えします。
つづく
*2021年7月6日,一部修正