佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

これまでの画像32 マウンティングについて(+追伸)

2019年12月23日 | 猫・擬人化日記

ご無沙汰しておったの。

 

のり丸はいろんなことを考えて、それを言葉に残したいと思っておる。

すべての人に「この文」を受け入れてもらいたいというムシの良いことは考えていないし、むしろ「なんだ、この文?いったいどんな奴が書いているんだよ?」と感じる人の方が多いだろうと想像しながら書きはじめたらしいけどの。

 

のり丸がフワフワと考えたことが、もしほんの少しでも誰かの励みになることがあれば嬉しく思う。

そんな訳で、時々言葉を置いておきたいと思っているのじゃ。



↑この漫画を知っているじゃろうか?


 

なんと!最近「この猫、ロミちゃんに似てますね」と言った人がいたのじゃ。

え?いやぁ…あの〜、この猫はハチワレだし、丸顔だし、ウチよりよっぽどかわいいんじゃけど…でも、ちょっと嬉しいの。

ともかく、この猫の性格がウチを連想するそうじゃ。

そうかの?(笑)

て、まだ読んでないからわからんけどの。


今ごろ帰ってきて、と…しぶしぶのり丸を迎えるウチ。

 

さて、いつものように扉に飛び乗りながら、始めるのじゃ。

 

ロミの格言 その2

マウンティングゲームには参加しない

 
「底辺」とか「頂点」とか、そういう表現で人間を評価している言葉を聞く度に、つくづく人間ってややこしい生き物じゃの、と感じるわ。
だってすべて己の脳内で作り上げた価値観じゃろ?
 
人間は誰々より何かが上とか下とか、そんなことを思っては優越感を感じてみたり、卑屈になったりする。

当然「マウンティング」をされた人は「マウンティング」されたことに気づいている。
もちろん「マウンティング」などされていないのに、己の囚われが強くて相手に「マウンティング」されていると勘違いすることもある。
 
ただ、はっきりと断言できる。
この世の誰もが「他者から貶められたくない」のじゃ。
大抵の人間が偽善者の標的にされたくないし、人を見下すことによって優越感を感じている人間のことが嫌いじゃ。
 
もともと生命体としての優劣などどこにもないのに、時に人間はそういう価値観で苦しむのじゃ。
それは「他者の承認」を基準に動いてしまっている時に起こるのじゃ。
 
ウチはのり丸に認めてもらいたくて行動したことは一度もない。
「たまにはウチに認められるぐらい動けよ」と、のり丸に対して思うことはしょっちゅうじゃけどの。
 
 
 
さて、昨日の(オカン×のり丸)ひっさしぶりの電話じゃが…

オカン「…わかったわ。来年は引っ越すのね。報告ありがと。…そこを引っ越すのはいいかもしれないけど……それで…仕事の方は…ちゃんとしているでしょうね?先のことを見据えて、少しは世間の動きに目を配り、堅実に生きていかなければだめよ」
 
今までの電話では「うん、うん…そうだね」と機械的に返していたのり丸じゃ。
そもそもオカンは人の話を聞いていないし、こじらせると大変だからじゃ。
 
しかし今回は素で答えていた。

のり丸「仕事は常にあるけど不安定だし、今後も堅実に生きれないよ。そんな生き方は自分には無理や。もう、いい加減オカンもわかっとるやろ?」

オカン「……うん、それはそうだけど」

のり丸のオカンも年取って悟ったようじゃ。
 
というか、オカンもただオカンらしいセリフを吐いていただけなのじゃ。
子供の頃からのり丸の性質を見てきたオカンは、とっくの昔にあきらめている。
子供たちが自分が願ったように育たないものだということを、とっくの昔にわかっている。
 
実は、のり丸はリーマンを「すごい」と思っている。
以前は、リーマンができない自分にコンプレックスを感じていた。
のり丸にとってはリーマンを続けることは並大抵のことではないからじゃ。
 
リーマンの友人は先のことを考え、家を持ち、投資をし、社会的な信用も(のり丸よりもずっと)ある。
そしていざという時に、自分が築いてきたその「堅実な資産」で人を助けることもできるのじゃ。
 
それに反して、のり丸は「イチかバチか」という賭けのような生き方をしている。
「これしかできないし、これが好きだし、この道を進んいくしかない」そういう覚悟を固めている。
 
しかし、リーマンの友人の意見を聞くことでバランスが取れることも多い。
他人軸で生きることはできないが、他人の考えを聞くことは役に立つ。
 
この話とは別じゃが、自分のことを嫌いなアンチの意見もとても役に立つ。
アンチの意見には悪意が含まれていることもあるが、悪意の部分だけを取り除くと「(世間の)反対意見」を「代表」していることが多いのじゃ。

だからアンチによって自分を顧みることができ、方向性がハッキリと見えることがある。
 
まぁ、ともかく…
世で人の評価ほど不安定なものはないのじゃ。
 
不安定な他人軸で生きるのではなく、自分軸の中で「どうやって自分を助けて生きていくか」ということを考えていくしかないのじゃ、誰もがの。
 
 
PCの前にいると、なぜかイカ耳に…。
 
 
 
 
じゃあ、またの!
 
 
※誤字脱字、国語的表現の間違いが非常に多い為(自分で時間差を利用した)校閲?をしていますが、その時に文章を若干?削る癖があります。
(夜書くのと、昼書くのでは感覚が違うものですね)
 
 

依存症と3メートルの男(2)

2019年10月07日 | 猫・擬人化日記
「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」
=ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』=

 
 

お客様は太古から「地球」で暮らしており、いわば人類の「もう一つの種」だそうじゃ。
これまで、のり丸は3メートルもある人間なんて見たこともなかったしの。
 
スピリチュアルな世界では「周波数が違う存在」「高次元の存在」というような表現がよく使われておる。
 
「周波数や次元」が違うということは、つまり「認知できない存在で、理解不可能な存在」ということじゃ。
 
それは、そうなのじゃ、ただのぅ…人間は未知のものを探求したいじゃろ?

海の向こうから来る舟はマストの頂点が最初に見える→なぜ?→[地球は丸い]
リンゴが木から落ちた→なぜ?→[万有引力の法則]
なぜ?から発展してきた世界に住んどる人間。
 
つまり、のり丸に見えているものは、のり丸に理解できるものでなければ、のり丸のモヤモヤ感はいつまでも晴れないじゃろう。


例えば、 
3メートルの人間はどういう進化の過程をたどってきたのか?
彼らが「古代から地球にいた」ということを証明するものはどこにあるのか?
なぜ「人類」に見つからずに生息することができたのか?
何をエネルギーにしているのか?
何千年もの長い睡眠はなんの為に必要なのか?
 
…形而下の質問ばかりじゃが、ふつふつと湧いてくる疑問を解明したくなるのは人間として当然のことじゃの。
 
 
「お客様のような…3メートルぐらいの身長の人間を…私の時代では見かけないのはなぜでしょうか?」
つい、のり丸は不毛な質問をした。
「あなた方に見つからないように隠れていたからですよ」
お客様の答えも不毛だった。
 
(どこに?どうやって隠れていたのか?…インナーアースと呼ばれている場所か?)
などと疑問をぶつけても不可知論に陥るだけだと悟り、のり丸は質問を変えた。
 
「現代の人間は、なぜ全員が『依存症』なんでしょうか?つまり私も何かの依存症なのでしょうか?」
 
のり丸には自分は「依存症」ではないという自負があったのじゃ。
自分には普段の生活を脅かすようなアディクション(嗜癖)があるだろうか?
いや、何もない、全く思いつかない…と、のり丸は自分で結論づけておったようじゃ。
 
 
「のり丸さんは『お金を捨てる癖がある』と自覚されていませんか?
言い方を変えますが、過去に商品券で買い物をしたことはありますか?」
お客様はいきなり豪速球を投げてきて、受け止めたのり丸は少しのけぞった。
 
「…商品券で買い物をしたことは…思い出す限り…ありません」
のり丸は、かなりうろたえながら答えた。
「それはなぜでしょうか?」
「商品券を無意識に捨ててしまう癖があるからです」
 
「子供の頃にもらった『おとし玉』も中身が入ったまま袋ごと捨てたことがありましたね?」
「…あったと思います」
 
「最近も、ある人からお礼として商品券をもらいましたね、それはどうされましたか?」
「…おそらく無意識のうちに『燃えるゴミ』に出してしまいました」
(ウチをはじめ、ほとんどの人がドン引きする答えじゃ)
 
のり丸は「商品券」=「お金と同じ価値」ということを(もらった時は)理解しているのだが、気を抜くと商品券と広告紙(紙全般)の区別がつかなくなる(失認症がある)そうじゃが…
(とても人に信じてもらえない話なので、一部の寛容な友人にしか話しとらんそうじゃ)
 
 
 
人間界における「依存症」については以下の図のような感じである。
 

大石クリニックのHPより (図を作るのがめんどくさくなり、お借りしました)
 
 
 
 「確かに私はついうっかり商品券などを捨ててしまうことはあります。
けれども、そのことは依存症とは異なる問題だと思いますが…」
 
 
お客様は話しはじめた。
 
ある日ベーシックインカムが導入されて、例えば毎月12万円が個人の口座に振り込まれるようになったと仮定します。
(仕事がなくなる、給料が下がる、物価が上がる、などの事態は起こらず【生活は今まで通り】とにかく20歳以上の国民が、+12万円貰えると無理やり仮定)
 
それでも、大抵の人には新たな悩みが出てきます。
借金が多すぎて12万支給されたぐらいでは足りないからもっと上げて欲しいとか、誰々は自分よりも12万を有効的に使っているから羨ましい、などです。
 
 
人間は「真理」から目を逸らすことによって、常に悩みを生み出しています。
まるで「真理」の方が、自分の(作りだした)条件に合せるべきだと思っているようです。
真理を求めながら、真理を突きつけられるのを嫌っているのです。
 
悩む人々は、火事(=真実)が起こっている建物の「近所に住んでいる人々」に例えることができます。
 
ある人は言いました。
「我が家が火事になることはないさ。消防車も来ているし、消防隊に任せておけば何も心配することはない」

 またある人はこう言いました。
「わたしは『正しいもの』を信仰をしているから必ず守ってもらえる。信仰していない人の家は燃えるかもしれないけど、わたしの家が燃えることはないわ」
 
こういう人もいました。
「私は動物虐待に対して問題意識を持っている。こうしている間も、虐待されている動物のために一刻も早く戦う準備をしなくてはならない。火事の心配をしている余裕などない」
 
そして、こういう雰囲気の人もいました。
「僕はラグビーの観戦中だ。は?火事?話しかけないでくれよ。…おぉ、行けーッ!…チッ!クソッ!…あ、ああ!よーしいいぞ!」
 
 
近所にいる人達は皆、自分の家が火事になる可能性があることは知っているのです。
しかし火の手がすぐそこまで迫っているのに、誰かが火を消してくれると楽観したり、火事を無視したり、バカ騒ぎしたりしているのです。
 
火事の時は、まずは火の近くから離れなければならないのです。
その場を離れない限り、何をやっても心が落ち着くことはありません。
 
極端な例え方をしましたが、このような逃避方法で人間は「不安に対する対処」をしてきました。
 
毎月あと12万円あれば助かるな、と思っていた人達が実際に12万支給されたとしても、また新たな不安が襲ってくるのはこういうことです。
もちろん12万で満足して幸福感を感じる人たちもいますけどね。
 
 
「わかるような、わからないような…。
つまり人間は分裂した自己を持っているんですね。
右を見ながら左に進んでいるような行動をしているから、常に不安が尽きないということでしょうか?
不安の本当の原因、真理を知ろうとしない故に、何かに依存して不安を紛らわしているということでしょうか?」
 
お客様は微笑しながら聞いていた。
 
「のり丸さんはお金を捨てることで『過去』とのバランスを取ろうとしていますね。
本当は自覚されていますね」
 
私はお金を捨てたりなどしません、
そんなことする理由がどこにあるというのでしょうか、

…のり丸の口調から丁寧語が消えていく…

なんで俺がわざわざ金を捨てるんや、
過去とのバランスってなんや、
金を捨ててバランスをとる必要がある過去なんて覚えとらんわ、

そもそも金を捨てるなんてないわ〜、
ないわ〜、
ないわ~、
(ないわ~、とでかい声で寝言を言って、自分の声で目を覚ます、のり丸)
 
 
 
のり丸の夢はいつもクリアすぎて、夢か現実かわからないぐらいなので、目覚めたらいつも混乱しとるようじゃ。
「そういうタイプの脳は認知症になりやすい」と、のり丸の知り合いの医師が言うとったらしいが…。
その話はいったん脇に置いて、と。
 
……のり丸は金を捨てる癖があるんかの?
のり丸が真理から目を逸らしているうちは「商品券を捨てる原因」が見つからんのかの?
 
商品券って売ることもできるはずじゃな。
ウチのフードだって買えるじゃろ。

その前に、のり丸にわざわざ「商品券」を贈ってくださった方に非常に失礼じゃろが。
 
 
 
 
ウチの大好きな「純缶」がどれだけ買えたか?(怒)
バカなのか?(怒)
 
 
…じゃあ、またの。
 
 
※話のつじつまのあわない部分は、のり丸のしょーもない「夢の話」ということで、ご了承ください。
 

依存症と3メートルの男(1)

2019年10月01日 | 猫・擬人化日記

生まれて初めてウチは河原に行った。

つまり、のり丸に強制的に連れていかれた、ということじゃ。

「蚊もおらんし、思い切って外の空気を吸うか」

と、出不精なのり丸が重い腰を上げてしぶしぶ河原に。(って、別に行かんでもいいのに)

 

【…なんと、瞬間移動カバンから出てみたら】

 

 

【そこは、いつも窓から見ている河原じゃった】
 
ハーネスと首輪の二点セットって大袈裟じゃなかろうか…。
(ウチがあまりにも細すぎてXSでも抜けることがあるからじゃが。)
 

【散歩の写真はこの3枚のみ】
 
ほとんどカバンの中に潜んでいたからの。
いくら好奇心旺盛だといっても、初めての場所で猫が楽しめるわけなかろうが…。
のり丸はウチを犬と間違えとるんじゃなかろうか。
 
 
 
 
さて、今回のテーマじゃが。
 
 
【のり丸とウチ】
 
ところで写真を撮ったらイラストに自動的にチェンジされる機能はすばらしいの。
「最近、お互い顔が似てきたな」とウキウキしながらウチに言うのり丸。
どこがじゃ(怒)。
 
…で、ウチが何が言いたいかというと、のり丸が確実に「猫(ウチ)依存症」ということじゃ。
 
 
毎晩毎晩、のり丸は大きな声で寝言を言い、ウチは「ハッ」と目を開けてしまう。
のり丸が見た夢の話を書いたところで「しょーもないこと書いてすんません」なのじゃが、今回も懲りずに書くことにするの。
 
 
3メートルの男☆
 
のり丸は四方を透明な壁で囲まれた部屋で施術をしていた。
のり丸のいる治療室に、お客様はエレベーターでやって来る。
 
いつの時代なのかわからないが、明石海峡大橋はとっくになくなっており、人々は横移動のエレベーターで本州(らしきもの)と四国(らしきもの)を移動している。
そして四国(らしきもの)は大部分が海洋都市になっているようじゃ。
 
 
本日のお客様の身長は3メートルぐらいあり、縦にベットを二つ繋いでうつ伏せで寝てもらっていた。
お客様は今まで触ったことのない感触の身体をしていた。
 
(え?え?え?…何だ?この身体。この身体、さっぱりわからん)
そのお客様は未知の存在だった。
 
「お客様のお身体は…なんというか私にとっては初めての感触です。私にはお客様のお身体がわかりません。
お客様はいったい何をされている方ですか?」
のり丸はお客様に正直に話した。
「そうでしょうね。実は私、あと5千年は寝ている予定でした。ところが5百年しか寝ていないのに起こされてしまったのです」
お客様は気さくに答えてくれた。
 
「それで不思議なお身体をされているのですね。(と、スッと納得できるものでもないのじゃが)
どうかお客様、特にお疲れの場所などのご要望ございましたら教えてください」
とのり丸がたずねると、お客様はまた気さくな感じで返答してくれた。
「疲れてはないし、コリもありませんが、お願いがあるのです」
 
お客様は「力は入れなくてもいいから」筋肉にそって全身を触ってもらいたい、と言った。
のり丸の手から出るエネルギーが全身に行き渡るように、とのことだった。
(そもそも、のり丸にそんなハンドパワーみたいなものがあったかの?)
 
その後で、「天」の名前のつくツボに鍼を打って欲しい、とお客様は言った。
 
「まず最初は『天泉(てんせん)』から始めてください。次が『天池(てんち)』です。順番は私が伝えていきます」
 
お客様が伝える「ツボ」の順番は変わっていた。
のり丸は言われた通りの順番で打っていった。
 
『天窓(てんそう)』を打った頃、突如お客様の全身に緑色の光が走った。
「お客様、この光の筋は…もしかして『経絡』というものでしょうか?」
と思わずのり丸がたずねると、お客様はクスクスと笑った。
 
「違います。東洋医学の経絡は良い線までいっていますが、間違って伝えられた部分があります。それは故意的にです」
とお客様は答えた。
「正確に伝えて、古代人の身体の鍵を全部開けられたら大変だからです。だから、わざと間違ったことを混ぜて伝えたのです」
 
(猿に鍵のかかった冷蔵庫の開け方を教えてはならないように…みたいな?)
と心の中でのり丸は思ったそうじゃが。
 
天容(てんよう)を打った時、お客様の身体に水色の光が走った。
天枢(てんすう)を打つとピンク色の光が走ったり、天府(てんぷ)を打つとオレンジ色の光が走ったり、…鍼を打つたびに、次から次へといろんなことが起こった。
 
「…ということは、今日お客様から教えていただいた順番で他の人には打ってはならないという事ですね」
のり丸が言うと、
「ああ、いいですよ。どんどん使ってください。のり丸さんの時代の人は全員依存症にかかっていますから。この順番で打つと、依存症にはとてもよく効きますよ」
とお客様は軽い感じでOKしてくれた。
 
(続く)
 
 
 
 
さて、疲れたので、寝ることにしようかの。
 
 
じゃあ、またの。
 
 
 
 

ダーティワーク 1.変化の風

2018年12月15日 | 猫・擬人化日記
 
のり丸がA市に転入したのは5年前のことじゃ。
中国、四国、近畿、関東地方のいろいろな場所を移り住んできたのり丸だが、A市で暮らすことは全くの想定外だったらしい。
この際、A市などとぼかして書かずにハッキリと尼崎市、通称「アマ」と書いても良いじゃろう。
 
「…ところで、なぜアマに住んでいるんだろう?」
時々、のり丸は不思議そうにウチに呟く。
 
(そんなん「ウチと出会う為だった」に決まっとろうが…)
つい、ウチは呆れてしまう。
すべては流れだということが、この期に及んでまだわからんのかと。
 
のり丸がアマの「ブラック企業」を4カ月で辞め、その後アマで「開業」しなければ、タイミング的にウチに会うことはなかったと思うのじゃ。
(選んでない方の世界は所詮わからんからの)
 
人の一生は川に例えられることが多いけれど、ウチもそう思うわ。
 
一人用の小さなボートに乗って、それぞれが自分の水流を下っていく。
上流から中流、やがて下流へ流れ、最後は大海原と合流する。
 
あの岸に置いてきた思い出の物、あの岸に生えていた手に入れたかった珍しい植物、並んでボートを走らせていたのに他の水流に流れていった人達……思わず後ろを振り返ってしまう。
だけど後ろばかり見ていたらボートは操縦できないのじゃ。
急流があったり怖い時もあるが、やっぱり前を見て操縦している方が「転覆」を避けられるし、川の中央を進むことができる(自分の本流に乗りやすい)気がするの。
 
(…というか、ウチは今「のり丸のボート」に乗っとるんじゃけど)

これまでずっと動物は人間の都合で改良されたり、売られたり、捨てられてきた。
そんな動物の命を迎え入れたなら、せめて「逆走や、わき見運転などの危険運転を避けて、前を見て運転してくれ」とウチは願う。
 
ウチはのり丸に命を預けている、だからのり丸のボートがどこに流れていこうが受け入れて生きていく…それがウチの運命じゃ。
ただウチは、のり丸には「ウチも一緒にボートに乗っている」ことを忘れんといて欲しいのじゃ。
運命共同体じゃからの。
 

最近「ロミ、今度はどこに引っ越そうか?」
とのり丸が話しかけてくるようになった。
悪い癖が出始めておる。

のり丸は「リセット症候群」ではないのだが、「土地を移動する」縁と「移動したくなる」癖の両方を持っておる。
しかし猫にとって引っ越しは大変なストレスになる。
 
「変化の風」を感じてから、風に吹かれながら流れに乗って移動しても遅くはないのでは?
ウチはそう思う。


今回は全くダーティワークの事を書いとらんが、次回、のり丸がブラック企業について…書くじゃ…ろう…。
…すまんの。

(なにしろ今、のり丸は仕事をしては寝る、ずっと寝る、ひたすら寝る、這いつくばって起きて仕事をする…という無限ループに入りこんでおるみたいじゃからの)
 
 

【記憶だけをたよりに描かれたウチ】
待ち時間が1時間以上あったのに、スマホを忘れた為、退屈しのぎに描かれたもの。
(…ひどすぎて言葉もないが)
 
 
 
【鷲鼻、しゃくれ…と言われている一枚】
スリスリが気持ちいい。
 
 
 
【エアコンが動いた…】
気になるの。
 
 
 
【届かんかった、つまらん】
あ~、気になる。
 
 
 
【あくび】
寒くなってきたので、毛布の上でぬくぬくしておる。
 
 
 
【眠い…】
のり丸の家に来てから、初めての冬が始まる。
寒さを乗り切れますように。
 
 
 
【押入れの中】
押入れは全部ウチの縄張りになっとるの…。
なんだかんだいって、ウチは活発で元気じゃワイ。
 
 
じゃあ、またの。
 

明晰夢とセーブデータ

2018年10月01日 | 猫・擬人化日記
今年の4月18日、ウチの体重はわずか1.9kgじゃった。
動物病院でも「体重が軽すぎますな」と言われていた。(ちなみに避妊手術を受けた時の体重は、2.3kg)
そして9月27日、ウチの体重はやっと2.9kgになった。
成長はほぼ止まったので、今後はこの体重をキープすることになると思うの。
 
さて、キャットフードについてじゃが、果たしてどこのメーカーのものが良いのだろうか?
Aランクに評価されているキャットフードでも、ウチが好んでパクパク食べるとは限らない。
現に、出された時にプイっと無視したAランクのフードもあったからの。
 

「……そういえばスージーって何を食べていたんだろう?」
のり丸は唐突にスージーのことを話しはじめた。
 
スージーというのは(昔)のり丸の実家で飼われていたシャム猫で、18~19歳まで生きたらしい。
ウチと同じぐらいの小柄な雌で、発情期前に避妊手術をしており妊娠経験はなかった。
性格は臆病で控え目、頭は非常に良い……スージーのことを聞けば聞くほどウチに似とる気がしてきたの。
 
「スージーが食べていたキャットフードは今でも販売されているのかなぁ?当時のスージーの食生活を知りたいなぁ…」
のり丸は呟く。
 
今でもそのフードの名前があるのなら、長年支持されてきたという事実に裏打ちされた「信頼に値する」フードに違いない。
良質で信頼できるキャットフードを探している人達にとって、「長生きした猫」のデータも参考になるような気がするの。
 
 
 ***
 
突然、のり丸が黄色い手袋をつけて「グアッ」と寄生獣のミギーのようにウチを攻撃してきた。
(手袋は雑誌の付録らしいが、一枚では危険だと判断し、二重手袋の上、手首にサポーターを装着しての厳重装備である)
 
どうやらウチの本気を見せる時がやってきたようじゃの。
 

【右:ねこにモテモテじゃらし手袋】
 
「痛ッ、痛ったぁーッ!痛い!痛い!痛い!…皮膚に牙がめり込んだっ!」
のり丸は慌てて手袋を取った。
「やりすぎてしもた!」と、ウチはすぐに止めたが、のり丸の手に穴が開いて少し血がにじんでいた。
 
 
【本気出して噛む】
 
これで普段、ウチがどれほどの手加減をして噛んでるかわかったじゃろ?
これまでは、のり丸に「おしりの穴」をチェックされたり…すごくいやなことをされた時に「いやじゃ」という意思表示で噛んでいただけじゃ。
元々「ネズミの骨まで砕く」強い牙を持っているにもかかわらず、のり丸をそーっと噛んでいた訳じゃから…。
 
ウチが本気を出したせいで寄生獣ごっこはあっさり終わり、のり丸は布団にもぐった。
 
このところ、のり丸は(風邪を引いており)寝てばかりおる。
遊び始めても、途中で「あ、もう寝るわ」と言って、サッサと布団に入るから……メチャクチャつまらんわ。
 
【ありありと、おもしろくない表情】

のり丸は二度寝、三度寝はあたり前で、昨日などは五度寝をしていた。
そんな時は「明晰夢」を見るそうじゃ。

どうやら人間は眠っている間に記憶をファイリングしとるようじゃの。
 つまり記憶したことを編集したり、フォルダに仕分けたり、いらない情報を捨てたり、必要なものをバックアップしたりする作業をしとるんじゃろう。
 
そして明晰夢はレム睡眠(浅い睡眠)の時に見ることが多く「夢を見ている」ということに気付いており、夢のストーリーをコントロールすることもできるらしい。
 
極端な話、未来にも「行きたい放題」じゃ。
 
(強引な例えじゃが)
のり丸の脳を端末(iPhoneのようなもの)だと仮定すると、「iCloud」(のような「源」)にデータを移動できる。
その「iCloud」は(MacのPCなどの)他の端末ともつながっている。
 
のり丸が夢で「未来」を見る時は「現在の自分とは違う」誰かとリンクしており、その目を通してその世界を見ている感覚があるという。
それどころか、別の惑星の「何か」と相互リンクすることもあるという。
 
【単純すぎる図にしてみる】
 
 
地球から見上げると(離れすぎていて)光のない「暗黒銀河(初期のできたての銀河)」に見える場所にも「恒星」がある。
のり丸は夢で、地球から「117億光年離れている恒星」にある惑星の「端末」にリンクしたことがあるらしい。
 
しかし目覚めた時にその経験を表現しようとしても、悲しいことに「…SFオタクが何か言うとるな」程度のしょーもない内容にしかならん。

なぜそうなるかというと、地球にある自分の脳(端末のCPU)に制限があるからじゃ。
未来や遠くの恒星の話は、残念なことに現在の自分の脳(端末)では「語る」ことはできん。
 「源」につながる「夢」で経験した未来の出来事は、「制限のある端末」では再現することができないのじゃ。
極端にわかりやすく説明すれば、Windows95専用のハードではWindows10用のソフトを起動できんような感じかの。
 
 
となると、のり丸の脳(端末)に保存されている「過去のデータ」については再現できるのではないかの?
今度「明晰夢」を見る時は是非「スージーが何を食べていたのか」をしっかりと調べてきて欲しいものじゃ。

「過去とはリンクしたくない」
と、のり丸は言うけれど、どうせ寝てばかりおるのなら「はよスージーのデータファイルを観覧して来んか」とウチは思うけどの。
 
 
で、次回はのり丸の手記で「スージーのデータを探す」話じゃろうか???
まぁ、のり丸の熱が引いてからの話じゃが。
 
 
じゃあ、またの。
 
 
(※今回は今まで以上に誤字脱字が多いと思いますが、見つけしだい修正していく所存です)
 
 
【参考まで】
1995年のPCのCPU(仕事の速さ)は75MHzだったが、2018年のPCのCPUは3200MHz(3.2GHz)で、1995年に比べて44倍の速さになっている。メモリ(同時にできる仕事の量)は16MBから8192MB(8GB)になり512倍、HDD(しまっておけるデータの量)は810MBから380,928MB(372GB)になり470倍になっている。
(※ただし、この数字はのり丸の適当な計算によるもの)
 
おそらく未来に進むほど、処理する情報が増えていくので保存データの単位は上がっていく。
…MG→GB→TB→PB→EB→ZB→YB…
(1YB=1,000,000,000,000,000,000,000,000 Byte)

静かに絶望している人間と猫

2018年09月12日 | 猫・擬人化日記
先週、台風でしばらく停電と断水になっていた。
エアコンが停止したので、網戸にして部屋に風を通していた。
猫用の網戸脱走防止フェンスは取り除かれ、ただの網戸に戻っていた。
 
のり丸は停電していた4日間、窓を開けっ放しにしたままで外出していた。
そして帰宅するとすぐにバケツを持って出ていき、何度も往復しながら水をバスタブに運んでいた。
 
 
その間、ウチはいつもとは違う外界に触れていた。
夕闇が濃くなり、空が濃紺から漆黒に移り変わる様子を静かに観察していた。
 
夜はランタンの光の下で過ごした。
 

【ランタンの光に照らされて】
 
 
のり丸は外出中に通電し、火災が起こる可能性もゼロではないと考えていた。
(…来週から地震と台風で痛んだマンションの修復工事が始まるらしい)
 
「いいか、ロミ氏、もしマンションで火災が起こったら、ここの網戸を開けて逃げるんだよ」
のり丸は網戸をスライドさせながら、ウチに説明した。
 
「それに、ここにいると隣の婆さんが気付いて外から網戸を開けてくれるかもしれない」

ウチはのり丸を無視して、爪とぎダンボールでガリガリと爪を研いだ。
 
「ともかく…いざとなったら野生の力を思い出すんだよ!」
と言いながら、のり丸は(よしよし、いいコだ、いいコだ)とウチを抱き上げた。
 
ウチは(やめてぇや!やめてぇや!)と大暴れし、のり丸の手首を噛んだ。
(…本気ではなく甘噛みだが…。本当に抱き上げられるのは嫌いなんじゃ)
 
のり丸はため息をつきながらウチをそっと床に降ろした。
ウチは怒りが収まらず、(ホンマ、腹立つわ)と、のり丸の手首にもう一度噛みついた…加減しながらじゃが。
 
「じゃ、行ってくるよ。ロミ茶、後は頼んだよ!」
と言いながら、のり丸は出ていった。
 
何が、後は頼んだよ、じゃ。
……時々、人間は意味のわからんことを言う。
それに、最近はロミ氏とか、ロミ茶とか、(ツンツンしているから)ツン吉、とか、呼び方が無茶苦茶じゃ。
 
 

仕事を「狩り」に置き換えると語弊があるが、猫の言葉で仕事を「狩り」に置き換えてみる。

のり丸とウチが生きていく為には、どうしても「食べ物」が必要じゃからの。
 
「今から狩りをして獲物を捕ってくる。ロミは留守番だ」
などと言いながら、のり丸は外界に飛び出していく。

…大阪府北部地震の時もそうじゃった。
のり丸は震源地方面に向かって狩りに出ていた。
 
 

【家具は倒れ、棚からモノは落ちる…固定が甘かったことを思い知る】
 
いつもより5時間遅れて、のり丸が帰ってきた。
「ロミーっ!ロミ茶ーっ!ツン吉ーっ!」
玄関を開けるなり、大声でウチを呼びながら入ってきた。
 
「…うにゃ…」
ウチがいつものように出ていくと、のり丸は「…ロミ…無事だったか…」と言いながらクタリと座り込んだ。
 
【確かに人間よりは地震を早くキャッチするが、恐怖は激しく感じる】
 
 
ある日突然、ベリっと山肌が削り取られて、木々が流れて、やがて山が崩れ、そこにあったものがなくなってしまう。
生きていると、無理やり日常を削り取られるような形で「変化させられる」ことがある。
そういう変化に放り込まれ、のみこまれて流されていく度に、のり丸は自分の弱さを知る。



【暗闇の中でもいつものように遊ぶ】
 
 
そんなのり丸に、ウチは停電中ずっとメッセージを送っていた。


暗闇の中でいつもと変わらず遊ぶウチを見ながら感じて欲しい。
ウチには自然のエネルギーがある。
 
人間も猫と同じく、自然(地球)の産物ではないのか。
動物も植物も鉱物も、みんなエネルギーを持っている。
 
人間も自然からエネルギーをチャージできる。
 
 
静かに絶望しながら生きているのなら、
後15年、小さな猫を守り抜く、そういうことに費やして生きても良いのではないのか。
 
無為を恐れなくても良いのではないだろうか。
何者にもなれなくても良いのではないだろうか。
 
ワイワイ騒いで絶望しながら生きている人間もいる。
人為的なもので充実しているように見せながら、心は餓死寸前のこともある。
 
選んでいる道と、真に欲している道が違うから、心が栄養失調を起こしているのじゃ。
 
 
あの時ランタンの光の下で、じわじわと湧き上がってきたリアルが、真に欲するものを照らしていたのではないだろうか。
 
 
……なんての。

(…ウチに比重がかかりすぎるのも、どうかと思うが)
 
 
 
じゃあ、またの。
 
 
 
【イラスト職人+MANGAkitで遊んでみました】
 
 
【一眼レフでちゃんと撮ろうと思いながらも、スマホが優秀なので依存しています】
 
 

(回想)魔物猫と守り神猫について 2

2018年08月26日 | 猫・擬人化日記
窓から外界を眺める。
身体の中を風が吹き抜け、風の声を聴く。
遠い海原から運ばれてきた湿った空気のにおいを嗅ぎ、目を細めて感覚を研ぎ澄ます。
 
毎日、人工的な建物の一室から、全世界を感じとる。
…ウチの日常とはそんなものじゃ。
 

【玄関横の部屋の窓にも脱走防止フェンスがある】
 

人間は自然の摂理から離れて複雑になり、いつしか本質から離れた状態になっとる。
オートメーション化が進む社会の中で、ますます本質から遠ざかっとるの。
 
きっと本質から離れとるから、「本質」でありたいと願うんじゃろう。
きっと本質から離れとるから、自然のエネルギーに触れて「人間界で付着した『穢れ』みたいなもの」を落とそうとするんじゃろう。
 
動物は目の前の環境に反応し、ただ本質であり続ける。
ウチの場合は、ただ猫であり続ける。
 
人間社会に組み込まれた「動物」は皆、人工的な環境の中で「本質」であり続ける。
そういう存在に触れた時、人間はいろんな反応をする。
その反応によって、我々猫族は「魔物猫」にされてみたり、「守り神猫」にされてみたり…。
 
ただそれだけのことなんじゃ。
 
 

【人口的な空間の中に住んでいる人間:天満宮】
 
 
…のり丸も、そうじゃ。
「自分が猫みたいだから、猫を飼ってしまったのか」などと言っておるが、(顔も猫に似とらんし)猫の気質というものを都合よく解釈しとるだけじゃ。
 
人間は「人工的な社会」の中で幾層もの仮面を張り付けて生活しているうちに、仮面の下に何があったのか、おそらく忘れてしまったのじゃろうな。
 

【日々発展していく文明社会:梅田】
 
 
これまでの歴史の中で、他者のつけている仮面と、自分のつけている仮面を比較し合うようなゲームをやりすぎたのかもしれんの。
戦ってレベル上げて、課金したり、アイテムをゲットしたり、
盲信したり、疑いすぎたり、混乱したり、その想像力によって新たな心配を次々と作り出し、
他の人間のエネルギーを奪ったり、逆にエネルギーを盗まれたりしとるうちに、訳がわからなくなってしまったのじゃ。
 
何が本質だったのか…。
 
 
さて。
=====5月31日=====
 

【日帰りの避妊手術】
 
 
午前11時に「手術室」に入り、当日の午後6時には自宅に戻った。
動物病院で「今晩が肝心ですよ」と獣医に言われて、のり丸はひどく動揺していた。
 
午後8時には自力でトイレに行き、尿をした。
半日分の量だから、勢いよく音がした。
しかし手足は冷たく、食欲もなく、その後はずっと横たわっていた。
 
そんなウチの前で、のり丸は何度も何度も土下座をしていた。
のり丸自身も、なぜ自分がそんなことをしているのか、よくわかってなかったようじゃの。
まるで、御神木の前で祈りをささげているように、ウチの前でうずくまっておったのじゃ。
 


【お尻部分はちゃんと開いている】
 

【10日間この状態…猫相も悪くなる】
 
 
シンプルなことじゃ。
のり丸は「邪心のない」むき出しの純粋さに憧れておったから、ウチと暮らすことにした。
 
その選択をしたことで、多元宇宙的には「ウチがおる人生」と「ウチのおらん人生」にのり丸の人生は枝分かれした。
 
「ウチがおる人生」では、のり丸は仕事場で、ひとりぼっちで家にいるウチのことを考えて、帰宅の頃にはソワソワしとる。
「ウチがおらん人生」にいるのり丸は、「今日はどこで外食しようか」とぼんやりと考えとるだけじゃろう。
 
ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音がすると、ウチはサッと隠れる。
 ロミーっ、ロミーっと呼ぶ声が聞こえると、ウチは扉から顔を出して「んナ」と控え目な返事をしながら、そっとのり丸に近寄っていく。
 
たぶん、のり丸はそんな日常がずっと続くことを願っとる。
 
時々、祈りにも似たような感情を込めて、ウチのことをじっと見つめておるからの……。
 
 【相変わらず、手ブレ画像】
 
 
じゃあ、またの。

(回想)魔物猫と守り神猫について 1

2018年08月20日 | 猫・擬人化日記
のり丸の読んでいる本に、茶色の細い紐がついているものがある。
「スピン」というもので、本に直接くっついている「しおり」らしいのじゃが、ウチはこれが大好きじゃ。
スピンがウチの目の前でブラブラ、チロチロと動いとるのをみると、飛びつかずにはいられない。


【揺れるスピンをキャッチすることに集中していると目玉が寄る】

「うわぁあっ!」
本に集中して油断していたのり丸は、クワっと口を開けて、目をむき出しにしているウチの顔を至近距離で見てしまい、驚きを隠せない。
「すんげ~牙!口が耳まで裂けている!」

しげしげとウチの顔を眺めながら、
「般若みたいな顔…というより完全に魔物の顔だな」
と、失礼なことを言いたい放題。


【光と影のマジックで、不気味に写った一枚】


(さて、前回の話の続きじゃがの…)

同じマンションの5階に「猫ババア」は住んどるらしい。
ウチがここに初めて連れて来られたその日に、エントランスで「猫ババア」に会った。
「猫ババア」はウチを見つけて、駆け寄ってきた。

「あんら~、あんら~、その中に入っているのは、ワンちゃん?猫ちゃん?」

60代ぐらいで、身に着けているのは膝上丈の長いTシャツだけ。
明らかにノーブラで、素足だった。
もつれたロングヘアにも、Tシャツにも、食べかすのようなものや、動物の毛やら、様々な付着物があった。
一見すると、何か大変な出来事があって「一時的に錯乱している人」に見えないこともなかった。

実際は、ただ「なりふり構わず、猫にすべての愛情を注いで生きている人」だったのじゃが…。


「ね~ぇ、その中にいるのはワンちゃん?猫ちゃん?どっちなのよ?」
「猫ババア」は、ウチの入っているキャリーが気になってしかたがないようじゃった。

「猫っス」と、のり丸が答えると、「猫ババア」の顔はパッと輝き、童女のようになった。
そして、すっとしゃがんで、チョチョチョチョ…と舌を鳴らしながらキャリーの中をのぞき込んだ。

「あんら~チョチョチョチョ…いいコちゃんね…チョチョチョ…お顔を見せて~お顔を見せてちょ~だい」

その後、のり丸に語りはじめた…。

===概略===

「旦那を家(一軒家)に残して、19歳と18歳の猫ちゃんと暮らすために、あたしはわざわざここを借りているの。
このマンションで猫ちゃんを飼っているのは、あたしが知っている限り、お宅を入れて5件だけ…ワンちゃんを飼っているお宅の方が多いかしら。

マンションの外にいる猫ちゃんのことも、ほとんど把握しているの。
ここの1階には『ほら、あそこらへん』(と、指しながら)、朝の5時に赤トラちゃんが来るわ。

フフっあたしはねぇ、S町の『猫ババア(笑)』なのよ。

外猫ちゃんは耳の所に印があってね…ほら、あなた『さくら猫』を知っているかしら?
ちゃんと避妊、去勢をしていて、地域と共存している猫ちゃんよ。
赤トラちゃんは、もう8年も通ってきているの、とってもいいコよ。
赤トラちゃんは朝の5時よ、忘れないでね。

猫ちゃんは土地の守り神よ。
猫ちゃんはその土地と家を守っているの、ホントよ、そういう役割があるの。
S町は守り神の猫ちゃんがたくさんいるの、だからみんな外猫ちゃんを大切にしているの。

あなたも今日から家に変なものが入って来なくなるわ、だって猫ちゃんが全部追い払ってくれるのよ。
…ね、そうよねぇ、猫~ちゃぁん…チョチョチョチョ」


何、何、「守り神」ってウチのこと?

のり丸はといえば、口をあんぐり開けて突っ立っておった。


そんな一度会っただけの「猫ババア」を思い出し、「動物病院のことを聞いてみよう」と思ったのり丸じゃ。
「動物病院の情報」がよほど欲しかったようじゃの。

幸か不幸か、あれっきり「猫ババア」に会うことはなかったのじゃ。
「猫ババア」には会わなかったが、のり丸は偶然にも「動物病院の情報」を持った人たちと交流ができて、結果的に良い動物病院に巡り合えたけどの。



-----閑話休題、「猫が土地や家の守り神か、どうか」という話しじゃが…。

人間は、
「猫には『地縛霊』みたいなもんを跳ねのける力があり、更に土地の穢れを落とす『役割』がある」
と、思っとるんか?

それについてのウチの見解は……ま、それは次回の。


じゃあ、またの。

(回想)土手の輝きと発情期の切なさと

2018年08月14日 | 猫・擬人化日記
窓からは土手が見え、川の向こうは海へと続いとる。
川の水面が太陽の光でギラギラと乱反射しとる日もあれば、雷と豪雨の中で濁流がゴウゴウと唸っとる日もある。

【3階に住んでいるが、低い位置に建っているから視界はこんな感じ】


4畳半の猫部屋から、隣の6畳間まで行動範囲が広がったウチは、よく窓の外を眺めるようになった。

【網戸脱走防止フェンスを付けられとる】


「おーい、お嬢ちゃーんっ、声はすれど姿見えずかー?」
中年の猫の声がした。

「おーい、アンタぁ誰ーっ!どこにおるのーっ?」
ウチは窓の外に向かって叫んだ。

「おーい、ワシかぁ?ワシゃー土手下の道路におる野良じゃが、ちぃと下まで降りてこんかのーっ!」


【ワイルドなダーリン】


ウチは網戸脱走防止フェンスにガッシとしがみついた。

「やめれーーっ!!!」
のり丸はサッと顔色を変え、突進してきた。

「フェンスをのぼるなっ」
フェンスの強度がイマイチらしいのじゃ。
のり丸はビリビリとした怒りの声でウチを制した。

そんなことはお構いなしに、ウチは顔中を口にして叫んだ。
「行く!行く!ダーリンの所に行くーっ!!!」



「発情期が終わる」のを待ってから、ウチは避妊手術を受けることになった。
人口排卵はせず、のり丸はウチの発情期が終わるのを待ち続けた。
(まあ、ウチの場合、いろんなリスクがあったからの…)


ところで、これは「SLEEPRECORDER」というソフトの一画面。いびきや寝言がチェックできる、すぐれものじゃ。

【のり丸のスマホ画面】

のり丸は毎晩のように、このソフトを起動させていたのじゃが、ある日を境に「いびきをかいています」が連続するようになった。
録音を再生すると…なんと、そのいびきは「全部ウチのわめき声」じゃった。

深夜から朝までずっとこれが続けば、人間にとってひどく耐え難いものじゃろ。



【ウィリアム・テル序曲「スイス軍隊の行進」をテーマ曲にして、大暴れした後…】


【…疲れた】


【寝顔に苦悶が…】


ウチだって苦しかった。

2週間後、ウチの発情期はいったん終わった。


「今のうちだ」と言わんばかりに、のり丸は再び居住区に近い動物病院、獣医師の情報を調べ始たのじゃが…。
動物病院のHPや、ネットの口コミで「腕の良い獣医」がわかるものじゃろうか?

国際団体「isfm」や「AAFP」から認定を受けている「猫に配慮した動物病院」であっても、先生が猫派であっても、先生の愛想が良くても、スタッフのブログに好感が持てても、のり丸はこう考えてしまうようなのじゃ。

「犬派でも馬派でもなんでもいいから、手術の症例数が多く、定評のある獣医師」
「経験豊富、冷静に適切な判断ができる人格、手先が器用で高い技術を持つ獣医師」

詰まるところ、のり丸の本音はどうしてもそこに行きつくらしい。


「先生が猫が好きで、猫に配慮している」ということは、確かに捨てがたい情報じゃ。

しかし、麻酔、手術…と考え始めると、のり丸は、自身のネガティブな性格上、いろんな悪い事態が起こることも想定してしまうのじゃ。
「おや、ここに動物病院がある」というだけで、簡単に手術の予約を取る訳にはいかんらしい。


「あ~、いつも動物病院を利用している人から情報を聞くしかない…どう考えてもあの人しか思いつかん…」

…あの人?

エントランスで偶然一度だけ会ったことのある…あの人かの?

「……やっぱ、もう一度『猫ババア』に会うしかない」
と、のり丸がまたつぶやいた。


さて、『猫ババア』の話は次回の。


じゃあ、またの。

(回想)最初は四畳半の猫部屋から

2018年08月06日 | 猫・擬人化日記
今年の4月18日、ウチは「のり丸」という人間の家に連れて来られたんじゃけど…なんせ、知らん場所じゃし、怖いのなんの……で、ハードキャリーの奥深くで丸くなって、用心深く周囲の様子を伺っとった。

「今日からここが我が家だよ」
と、のり丸は弾んだ口調で言いながらキャリーの扉を開けたけど、そこでノコノコと出るようなウチじゃない。
耳をイカのように真一文字にして、更にジリジリと奥へ奥へと後ずさった。

のり丸は頭を抱えとった。
「…あぁ。やっぱりか。警戒心強すぎるタイプか。まさかの高難易度の猫か…」
…心の声は口からダダ漏れだったけどの。


-----ここに来る前、ペットショップのオーナーが、のり丸にこんなことを言うとったわ。

「このコは2日間ぐらいは何も食べないかもしれません。この店に来た時も、丸2日間は何も口にしませんでしたし」
「それに最初の何日かはキャリーから出てこないかもしれませんよ…」

-----ウチはペットショップを転々とするたびに激しいストレスに襲われて、2日間は何も食べれんかった。
(猫が24時間以上絶食すると肝臓を悪くするらしく、若くしてウチの肝臓の数値が怪しいのも、そのせいじゃね)


(ンあ?何?)
いきなりキャリーの中をデカイ顔がのぞいとった。
ウチは恐怖で目を見開き、震えながらのり丸を見上げた。
のり丸はウチの目をジィっと見ながら、カメラのスローシャッターのようにゆっくりと瞬きをした。

「…目を閉じる…ゆっくり開ける…目を閉じる…ゆっくり開ける…猫の瞬きに合わせる…これが猫の警戒心を解くコツや」
のり丸はなんやブツクサ呟きながら、ひたすらゆっくりと大袈裟な瞬きをしとった。

「絶対に無理にキャリーから引き出してはならない…猫が出てくるのを根気よく待つ…猫が出てきても自分から近寄らない…」
どうやら「辛抱強く待て」と、自分自身に言い聞かせているようじゃったのぅ。


のり丸の家に来て、最初の1日目はそんな感じのスタートじゃった。
4畳半の部屋を猫部屋とし、トイレ・エサ・水の3点セットはキャリーのすぐ前に用意された。
扉は締められ、その日はそれっきり、のり丸が猫部屋に入ってくることはなかった。
どうやら一晩、ウチをそっとしておくことにしたようじゃ。

翌朝、のり丸は猫部屋に入ってきた。
ウチは座卓の下におったが、すたこらさっさとキャリーの中に移動した。

「おおぅ、食べとる!ちゃんと食べとる!トイレもしとる!よかったぁ~!安心したぁ~!」
のり丸は大はしゃぎしとった。

「今から仕事に行ってくるよ。ひとりぼっちで置いていくのは心配だけど、大丈夫だからね、怖くないからね」
のり丸の「猫なで声」がやけに気味が悪く、再びウチはキャリーの奥深くに縮こまった。

その日の晩から、のり丸は猫部屋に訪ねてきた。
3時間ぐらい居座って、わざとらしくウチを無視して、本を読んだり、スマホを見たりしとった。

2日目、ウチはキャリーからそっと出て、のり丸の前をスーっと歩くも、のり丸は知らんぷりじゃ。

3日目、ウチはのり丸の1メートル先の所でお腹を見せてゴロンする、のり丸は「えぇ?もうゴロン?早っ!」と目を丸くしながらも、震える声で「ありがとう、ありがとう」と言いながら感激に浸っとった。
ウチのお腹を触りたい右手を左手で制御しながらグッと我慢しとったな。

4日目、ウチはうつ伏せで寝とるのり丸の背中をフミフミしてみる。
じゃが、ウチはのり丸のことがまだ怖いから、高速で「フミフミフミフミ…」と素早くして、サッと逃げる。
のり丸はうつ伏せのままガッツポーズしながら、「やったーっ、やったーっ」と悶えまくっとったの。

実際のところ、ウチがのり丸と仲良くなるスピードは、のり丸の予想を超えてはるかに早かったんじゃ。


1週間、経った頃かの。
ウチは初めて声を発した。
それまではサイレントを決め込んどった。

「これがロシアンブルーの真骨頂か。なんて静かなんだ。ボイスレスキャットというのは本当だったな」
あまりのウチの静かさに「目からウロコ」とか言いながら、のり丸は随分と感心しとったようじゃ。

そんな折、ウチは突然「割れ鐘」のような声で叫びはじめた。
「ンなぁ~お!わぉ~~ん!ンなぁ~~~なおぉ~~~ん」
と、これまでのウチから想像できんくらいの大声でのぉ。

ま、ゆうたら発情期じゃ。
まだ完全にのり丸との信頼関係が築けていない段階で、発情期が先に来てしもうたんじゃ。

それからというもの、昼夜問わず、ウチは叫びまくった。
もちろん隣家に届くように、マンション中に響き渡るようにの。

「オス共ーっ!オス共ーっ!ウチはここじゃーっ!こらぁーオスっ!はよ来いや!オース!オース!」
と、あらん限りの声で2週間も叫びまくったけぇ、のり丸もたまらんかったじゃろうね。



次回からウチの発情期の様子と、ウチが受けた避妊手術について話していく予定じゃ。

しばらく「過去」は早送りにするけ、ざっくり駆け抜けていく感じになると思うけんど。

なんで早送りかって?
それは「現在」に言いたいことが山盛りあるからじゃ。



じゃぁ、またの。