僕がこの家に連れて来られたのは今年の一月の中旬頃だ。
その日は今季最強寒波の日だった。
「こんな寒い日にごめんな」
のり丸がキャリーバックの中で毛布に包まれている僕に話しかけてきた。
「もうすぐ家だから…」
僕はひたすら叫び続けた。
「ギャース、ギャオース!((出せぇ、出してくれ!)」
僕は保護猫だ。
昨年、伊藤さん(仮名)という女性に保護された。
伊藤家にはすでに複数の犬や猫がいた。
そこで僕は人間の顔色をうかがいつつ、犬ともうまくやっていく社会性を身に着けた。
(アオ「蒼」という名前も伊藤さんがつけてくれた)
のり丸が保護猫を迎えるまでのいきさつは省くことにする。
簡単にいうと、のり丸はずっと先住猫のロミがひとりぼっちで退屈していると思い込んでいた。
「子猫なら大丈夫だろう」
と、のり丸は楽観的に考えて僕を連れてきた。
しかし早計だった。
先住猫と新入り猫の会わせ方の基本を間違えていた。
きっとのり丸がこれまで飼っていた猫は、新入りにフランクな猫ばかりだったのだろう。
人間は過去の経験からの思い込みから、つい間違った行動をしてしまうことがあるらしい。
僕と対面した時、先住猫のロミの動揺は激しかった。
【警戒心が強く、気位の高い先住猫】
「…ちょ!……あんた!誰???…なんで知らん若い男がウチの部屋に…キャアァァァ変質者!!!強盗!!!」
と叫んだ後、ゲッゲッゲッ、と吐いた。
その態度には僕もかなり気分を害した。
「なんだと!ごらぁーっ!」
僕も一歩も引かずに言い返した。
すると、速やかにのり丸が「ロミ悪かった、ロミごめん!」と先住猫に謝りながら、僕の入ったケージを玄関に移動した。
ワンルームだから、扉で分けられる空間は玄関しかないのだ。
「デロンギのヒーターを24時間つけるから、この場所で我慢してくれ」
と、のり丸に言われて、僕は三日間玄関で過ごした。
【ガラス越しに見える怒りの表情】
玄関での三日間は最悪の日々だった。
もちろん、玄関はぐちゃぐちゃにしてやった。
そして三日後…
やっぱり退屈だったのだろう、ロミは僕のことを認めてくれた。
異例のスピードであることは確かである。
それからは…
「ウチのやり方をしっかり見ときんさい」
ロミは僕の師匠となった。
(のり丸が激怒することばかりを教えるが)
これからは、そんな師匠との日々をつづっていこうと思う。
(ちなみに茶白猫は大きくなるといわれている。もうすぐ8ヶ月、近々去勢手術を控えている)
のり丸の視力と頭は変わらずパッとしないので、更新は未定だけどね。