佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

物数奇(ものずき)

2018年09月21日 | 手記・のり丸
今朝、Tシャツが死んだ。
丈夫な作りで定評のある(アビレックス)AVIREXの黒Tシャツで、14年生きた。
かなり色褪せしておりツギハギだらけで、そこはかとなく哀愁が漂っていた。

先日、知人の22歳の女性が言った。
「そのTシャツ…なんていうか、もう雑巾にもならないというか、ただの布キレにしか見えないというか…」
話している途中で、彼女はハッとした表情になった。
どうやら私の癖(へき)を思い出したようだ。
 
しかし私は納得した。
TシャツはもうとっくにTシャツとしての使命を果たし、寿命を迎えていたらしい。
そして今朝、私はTシャツをハサミで細かく切って「燃えるゴミ」に出した。
 
 
子供の頃から少し寂れたものに惹かれる癖(へき)があった。
新品の高級品には全く興味がわかず、チープで古ぼけている物ばかりを好んだ。
それが破れたり壊れたりすると修理して使った。
ただし修理の仕方は雑で、たいてい色ムラがあったり、ツギハギになることが多い。

これまで、その美意識を人から(特に女性から)共感されたことはほとんどなかったが、今後も自分のこの癖(へき)は続くだろうと思っている。
 
 
私の部屋にある物たちを高齢順に並べてみる。
 
 

【カバン…推定30歳】
 友人が「これ、いらんから捨てるわ」と放りかけたカバンをもらってから15年経過。
70年後には付喪神が宿って喋り出しそうな雰囲気がある。
 
【自動車工場の模型…25歳】
色々な家を転々とし、私の元に落ち着いてから5年経つ。
 
 
 
【ワークブーツ…15歳】
何度も底と中敷を張り替えている。こんなに丈夫で足に馴染む靴はない。
 
 
【腕時計(手巻き)…14歳】
毎日ネジを巻いているが、哀愁はまだ無い。後10年はかかるだろう。
 
 
【黒Tシャツ(2号)…7歳】
捨てた1号とほぼ同じデザイン。ようやくシワシワ、ヨレヨレ感が出てきた。まだツギハギはない。
「アイロンしたら?」と時々人から言われる。
 
今の所、この5点を所有しているだけで「物欲」は抑えられているようだ。
 
 
===今日のロミ===
 
 

これまでの記録 2(日常生活&野良猫)

2018年09月17日 | 主に画像(ロミ)

…また、ブレまくっとる画像じゃけど。

 

【しわしわシーツはウチのせいではない】

 

【ダンボール遊びがすぐ終わったので少し不満】

 

…何かあった時の為にハーネスに慣れるように、とハーネスを付けられたけど、避妊手術のことを思い出した。

 

【この後で、のり丸を引っ掻き、噛みまくった】

 

【ハーネスを付けられると、この時の思い出が蘇る】

 

ハーネスは無理だと悟ったのり丸は、キャリーが楽しい場所になるように考えた。

 

まず、ウチがキャリーに入って、のり丸を呼ぶ。

 

【キャリーの中でスタンバイ】

 

すると、のり丸がキャリーの扉を閉めて、「瞬間移動(…アホや)」と言いながらキャリーを移動させる。

 

【最初は一番興味があるバスタブの中に瞬間移動じゃ】

 

 

 【バスタブを満喫したら】

 

 

【またキャリーに戻り、次の瞬間移動を待つ】

 

これは本当の話。

瞬間移動にしてはエラく速度が遅いが、ダマされたふりをして、ごっこ遊びに付き合ってやっておるのじゃ。

 

【この場所はつまらんなぁと思うたら】

 

【さっさとキャリーに戻る】

 

【今度はトイレ】

 

【トイレって、どういう構造?】

 

【ここは楽しいので、なかなか出たくない】

 

遊びはすべて部屋の中だけじゃ。

しかも、のり丸がものすごく怠惰な人間で、気が向いた時にしか遊んでくれないしの。

 

【自分で遊ぶことが多い】

 

【日の光が気持ちいい】

 

【また、網戸脱走防止フェンスが付けられた】

 

ウチは生後約10ヶ月(9.5ヶ月)までショーウィンドウの中で暮らしていたから人間不信で臆病じゃけど、好奇心はかなり旺盛。

成長期に狭い檻の中に閉じ込められ、社会性が身につかなかった割には、学習能力が高く記憶力も良い。

「歴代の猫の中で、一番性格が冷たく、一番頭が良い。顔は全く美人ではないけれど、味はある」

とのり丸は言うが、ま、誉め言葉として受け取っておこうかの。

 

 

 

===野良猫画像===

 

【近所にいる兄弟。ぐっすり寝ている】

 

【朝、5時にマンションに来る赤トラ】

 

【ダーリン達】

 

【Fさんが撮影した、人なつっこい黒猫※いただき画像】

 

 【太った猫、社交的でご飯もらい放題】

 

【以前、Mさんが保護した仔猫※いただき画像】

 

じゃあ、またの。

 


静かに絶望している人間と猫

2018年09月12日 | 猫・擬人化日記
先週、台風でしばらく停電と断水になっていた。
エアコンが停止したので、網戸にして部屋に風を通していた。
猫用の網戸脱走防止フェンスは取り除かれ、ただの網戸に戻っていた。
 
のり丸は停電していた4日間、窓を開けっ放しにしたままで外出していた。
そして帰宅するとすぐにバケツを持って出ていき、何度も往復しながら水をバスタブに運んでいた。
 
 
その間、ウチはいつもとは違う外界に触れていた。
夕闇が濃くなり、空が濃紺から漆黒に移り変わる様子を静かに観察していた。
 
夜はランタンの光の下で過ごした。
 

【ランタンの光に照らされて】
 
 
のり丸は外出中に通電し、火災が起こる可能性もゼロではないと考えていた。
(…来週から地震と台風で痛んだマンションの修復工事が始まるらしい)
 
「いいか、ロミ氏、もしマンションで火災が起こったら、ここの網戸を開けて逃げるんだよ」
のり丸は網戸をスライドさせながら、ウチに説明した。
 
「それに、ここにいると隣の婆さんが気付いて外から網戸を開けてくれるかもしれない」

ウチはのり丸を無視して、爪とぎダンボールでガリガリと爪を研いだ。
 
「ともかく…いざとなったら野生の力を思い出すんだよ!」
と言いながら、のり丸は(よしよし、いいコだ、いいコだ)とウチを抱き上げた。
 
ウチは(やめてぇや!やめてぇや!)と大暴れし、のり丸の手首を噛んだ。
(…本気ではなく甘噛みだが…。本当に抱き上げられるのは嫌いなんじゃ)
 
のり丸はため息をつきながらウチをそっと床に降ろした。
ウチは怒りが収まらず、(ホンマ、腹立つわ)と、のり丸の手首にもう一度噛みついた…加減しながらじゃが。
 
「じゃ、行ってくるよ。ロミ茶、後は頼んだよ!」
と言いながら、のり丸は出ていった。
 
何が、後は頼んだよ、じゃ。
……時々、人間は意味のわからんことを言う。
それに、最近はロミ氏とか、ロミ茶とか、(ツンツンしているから)ツン吉、とか、呼び方が無茶苦茶じゃ。
 
 

仕事を「狩り」に置き換えると語弊があるが、猫の言葉で仕事を「狩り」に置き換えてみる。

のり丸とウチが生きていく為には、どうしても「食べ物」が必要じゃからの。
 
「今から狩りをして獲物を捕ってくる。ロミは留守番だ」
などと言いながら、のり丸は外界に飛び出していく。

…大阪府北部地震の時もそうじゃった。
のり丸は震源地方面に向かって狩りに出ていた。
 
 

【家具は倒れ、棚からモノは落ちる…固定が甘かったことを思い知る】
 
いつもより5時間遅れて、のり丸が帰ってきた。
「ロミーっ!ロミ茶ーっ!ツン吉ーっ!」
玄関を開けるなり、大声でウチを呼びながら入ってきた。
 
「…うにゃ…」
ウチがいつものように出ていくと、のり丸は「…ロミ…無事だったか…」と言いながらクタリと座り込んだ。
 
【確かに人間よりは地震を早くキャッチするが、恐怖は激しく感じる】
 
 
ある日突然、ベリっと山肌が削り取られて、木々が流れて、やがて山が崩れ、そこにあったものがなくなってしまう。
生きていると、無理やり日常を削り取られるような形で「変化させられる」ことがある。
そういう変化に放り込まれ、のみこまれて流されていく度に、のり丸は自分の弱さを知る。



【暗闇の中でもいつものように遊ぶ】
 
 
そんなのり丸に、ウチは停電中ずっとメッセージを送っていた。


暗闇の中でいつもと変わらず遊ぶウチを見ながら感じて欲しい。
ウチには自然のエネルギーがある。
 
人間も猫と同じく、自然(地球)の産物ではないのか。
動物も植物も鉱物も、みんなエネルギーを持っている。
 
人間も自然からエネルギーをチャージできる。
 
 
静かに絶望しながら生きているのなら、
後15年、小さな猫を守り抜く、そういうことに費やして生きても良いのではないのか。
 
無為を恐れなくても良いのではないだろうか。
何者にもなれなくても良いのではないだろうか。
 
ワイワイ騒いで絶望しながら生きている人間もいる。
人為的なもので充実しているように見せながら、心は餓死寸前のこともある。
 
選んでいる道と、真に欲している道が違うから、心が栄養失調を起こしているのじゃ。
 
 
あの時ランタンの光の下で、じわじわと湧き上がってきたリアルが、真に欲するものを照らしていたのではないだろうか。
 
 
……なんての。

(…ウチに比重がかかりすぎるのも、どうかと思うが)
 
 
 
じゃあ、またの。
 
 
 
【イラスト職人+MANGAkitで遊んでみました】
 
 
【一眼レフでちゃんと撮ろうと思いながらも、スマホが優秀なので依存しています】