生まれて初めてウチは河原に行った。
つまり、のり丸に強制的に連れていかれた、ということじゃ。
「蚊もおらんし、思い切って外の空気を吸うか」
と、出不精なのり丸が重い腰を上げてしぶしぶ河原に。(って、別に行かんでもいいのに)
【…なんと、瞬間移動カバンから出てみたら】
【そこは、いつも窓から見ている河原じゃった】
ハーネスと首輪の二点セットって大袈裟じゃなかろうか…。
(ウチがあまりにも細すぎてXSでも抜けることがあるからじゃが。)
【散歩の写真はこの3枚のみ】
ほとんどカバンの中に潜んでいたからの。
いくら好奇心旺盛だといっても、初めての場所で猫が楽しめるわけなかろうが…。
のり丸はウチを犬と間違えとるんじゃなかろうか。
さて、今回のテーマじゃが。
【のり丸とウチ】
ところで写真を撮ったらイラストに自動的にチェンジされる機能はすばらしいの。
「最近、お互い顔が似てきたな」とウキウキしながらウチに言うのり丸。
どこがじゃ(怒)。
…で、ウチが何が言いたいかというと、のり丸が確実に「猫(ウチ)依存症」ということじゃ。
毎晩毎晩、のり丸は大きな声で寝言を言い、ウチは「ハッ」と目を開けてしまう。
のり丸が見た夢の話を書いたところで「しょーもないこと書いてすんません」なのじゃが、今回も懲りずに書くことにするの。
☆3メートルの男☆
のり丸は四方を透明な壁で囲まれた部屋で施術をしていた。
のり丸のいる治療室に、お客様はエレベーターでやって来る。
いつの時代なのかわからないが、明石海峡大橋はとっくになくなっており、人々は横移動のエレベーターで本州(らしきもの)と四国(らしきもの)を移動している。
そして四国(らしきもの)は大部分が海洋都市になっているようじゃ。
本日のお客様の身長は3メートルぐらいあり、縦にベットを二つ繋いでうつ伏せで寝てもらっていた。
お客様は今まで触ったことのない感触の身体をしていた。
(え?え?え?…何だ?この身体。この身体、さっぱりわからん)
そのお客様は未知の存在だった。
「お客様のお身体は…なんというか私にとっては初めての感触です。私にはお客様のお身体がわかりません。
お客様はいったい何をされている方ですか?」
のり丸はお客様に正直に話した。
「そうでしょうね。実は私、あと5千年は寝ている予定でした。ところが5百年しか寝ていないのに起こされてしまったのです」
お客様は気さくに答えてくれた。
「それで不思議なお身体をされているのですね。(と、スッと納得できるものでもないのじゃが)
どうかお客様、特にお疲れの場所などのご要望ございましたら教えてください」
とのり丸がたずねると、お客様はまた気さくな感じで返答してくれた。
「疲れてはないし、コリもありませんが、お願いがあるのです」
お客様は「力は入れなくてもいいから」筋肉にそって全身を触ってもらいたい、と言った。
のり丸の手から出るエネルギーが全身に行き渡るように、とのことだった。
(そもそも、のり丸にそんなハンドパワーみたいなものがあったかの?)
その後で、「天」の名前のつくツボに鍼を打って欲しい、とお客様は言った。
「まず最初は『天泉(てんせん)』から始めてください。次が『天池(てんち)』です。順番は私が伝えていきます」
お客様が伝える「ツボ」の順番は変わっていた。
のり丸は言われた通りの順番で打っていった。
『天窓(てんそう)』を打った頃、突如お客様の全身に緑色の光が走った。
「お客様、この光の筋は…もしかして『経絡』というものでしょうか?」
と思わずのり丸がたずねると、お客様はクスクスと笑った。
「違います。東洋医学の経絡は良い線までいっていますが、間違って伝えられた部分があります。それは故意的にです」
とお客様は答えた。
「正確に伝えて、古代人の身体の鍵を全部開けられたら大変だからです。だから、わざと間違ったことを混ぜて伝えたのです」
(猿に鍵のかかった冷蔵庫の開け方を教えてはならないように…みたいな?)
と心の中でのり丸は思ったそうじゃが。
天容(てんよう)を打った時、お客様の身体に水色の光が走った。
天枢(てんすう)を打つとピンク色の光が走ったり、天府(てんぷ)を打つとオレンジ色の光が走ったり、…鍼を打つたびに、次から次へといろんなことが起こった。
「…ということは、今日お客様から教えていただいた順番で他の人には打ってはならないという事ですね」
のり丸が言うと、
「ああ、いいですよ。どんどん使ってください。のり丸さんの時代の人は全員依存症にかかっていますから。この順番で打つと、依存症にはとてもよく効きますよ」
とお客様は軽い感じでOKしてくれた。
(続く)
さて、疲れたので、寝ることにしようかの。
じゃあ、またの。