市町村からは中学生16人の出場が決まり条件を満たせなければ出場停止となる事を告げられている。その条件とは体重は55キロから60キロ以下で身長には条件はなかった。直也には身長には条件が無い事が有利とみられたのだが。直也の身長は1メートル70センチで体重は69キロだった。体重を9キロから10キロの減量しなければならなかった。10月に入ると減量と練習のプランが作られた。ボクシングジムの会長は直也の両親へ会い直也の今後の事を相談した。直也の両親はジムから学校へ通う事を承諾しボシングジムの会長の元に預ける事になったのだ。減量と練習のプランは厳しいものだったが直也にとっては有りがたい事だった。
「別れの何もかもが忘れられる」と直也は思った時でもある。
直也は心の刃を隠し無心の中でプランをこなしていく。ボクシングジムへ通う他の学生達は直也を見ながらも声を掛けようとはしない。優子も同じく直也の姿を見ながらベンチに座っているだけだ。汗を流しながらの減量でリング上へ直也が上がれば優子はリング下で直也を見つめる。直也はボクシングジムの隅で減量の為に汗をかきながら微かな声で何かを口ずさむようになる。
「一試合3ラウンド試合は4回戦、4回戦で優勝だ」
狂い始めたかのように思えた直也は優勝すると心の中の決意が自然と呟いて口に出ていたのだ。
「頑張って直也!」と優子は優勝と口ずさむ直也に微かな声を掛けていた。
11月上旬にはプラン通りに進み体重59キロまで減量は終了した。毎日毎日だ早朝マラソンから学校からジムでの練習が続く。直也は常にTシャツを着ていたが減量が終わるとTシャツを脱ぎリングの上でのスパーリングが始まる。年上の学生達とのスパーリングの相手が変わり毎日3ラウンドずつ行われた。そして会長はモノクロのボクシングのポスターを直也に見せた。優勝に近いとされる選手は大きく載せられ、たったの3センチ角に映っていたのが直也だった。コピーで作られたポスターに直也が写っているとは誰も思えないようだった。
「直也!お前の写真は小っちゃいなー」
ボクシングジムの会長は笑いながら直也をからかってるように見えるが直也の心の中の闘争心に火をつけていた。
試合に必要なのは心理戦で無心の闘争心だけで良かったのだ。試合まで後3日、直也の眼の色は、これまでの直也の眼ではなくなった。ポスターは公民館に貼られていた。偶然か?そのポスターを見て直也に気づいた大地(ダイチ)がいた直也にとっては竹馬の友だった。そしてポスターを見ながら久美子の作った「ドリームキャッチャー」を握りしめていた。「直兄ちゃんを守ってあげてね」竹馬の友の宇地木大地(ウジキダイチ)は久美子と約束があった様だった。
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