冬休みが終わると幼少期から青少年期になる準備とあっという間に春休みになると春休みの間の海は、それほど良い波はありませんがたまにいい波があり、海が好きな直也の心は海に向かってます。直也と友達は連絡をとりあい、次の日の時間を決め海に行く準備をしています。そんな時、裏口の木戸から久美子が鍵を開ける姿がありました。小さい身体で、木戸にぶら下がってる姿を見た直也は、こっけいな姿の久美子を見て笑うばかりでした。これまでも木戸にぶら下がって鍵を開けて、中庭に入ってきた事を直也は知りました。
「クーコ、おまえ変な格好までして鍵を開けてたんだなぁ、木戸をたたけば開けてやったのによ」
「ううんっ、いいの、だって直にぃいるかどうかわからないじゃない?」
「そうだけどさ、声かけてみればいいじゃんか、中庭にいれば開けてあげるのに」
「そうか、そうだよね、ハハハ」
久美子の微笑みは天使のように見えてきた直也ですが、まだ自分の気持ちに気づく事はありません。この日は、一日ゆっくり2人で縁側で過ごし、久美子はドリームキャッチャーを作りながら色々なことを話し、昼食、夕食を一緒に食べて終わりました。次の日、直也は友達との約束で、海へ行く支度をしていたとき、また久美子が遊びに来ました。
「直にぃ、どこ行くの?一緒に連れてってよ」
久美子は、直也がどこかにいってしまうと思い涙目で直也をみつめています。
「どうした、家で何かあったのか?」
直也は、久美子の涙目が気になってどうしようもなかった。久美子の家では借金に負われ、信じられない事を家族が考えてるという噂があったからです。何かがあった事は、久美子の様子で直也は半信半疑でわかっていましたが、まさか久美子が自分の事で涙した事は気づきませんでした。しかしこの時、久美子は直也の事を思う自分の気持ちに気づいていたのです。久美子は手で涙を拭きながら笑顔をみせていましたが、久美子の心の中では「言えない何でもない」と、グッと何かにこらえながら首を横に振っただけでした。久美子の気持ちを考えて直也は深く追求する事はありませんし、久美子に気分転換を促していました。
「いいよ、自転車で片道約2時間の海に行くけど、それでいい?」
「うん、どこでもいいよ、直にぃと一緒なら」
直也は河川敷のサイクリング道路を走っていると友達が一人二人三人と、いつものように集まってきます。
その光景を見る久美子は口を開け驚きながら、直也達と一緒に海に行くのは初めてでした。
「すごいね、すごーいねぇ」
自転車で風を切りながら、大きな声を出して久美子は直也に叫んでいます。友達が一人二人から六人と自然と増えてくる様子は、久美子にとっては感動を与えられてました。
「ねぇ、いつもこんなふうに集まってくるのー、直兄ちゃん」
久美子は沈んでいた表情が変わり、まんべんなく笑顔を見せるようになります。直也の友達も久美子と海に行くのは初めてで不思議そうにしてながらも、みんな笑顔で海に向かって走って行きます。友達はきっと「なんで」って思ってたんだろう。「ん?」と友達は首をかしげていました。しかし考えるよりも行動の方が先、何があろうと目的は同じ男の子も女の子も直也達には関係ない。友達になるのは自由、友達からはずれるのも自由だ遊びたければ遊びに来ればいいという考え方でした。でも、ある暗黙のルールがあったのです。決して仲間同士や赤の他人の悪口は言わないこと愚痴るのは良し常に助けあう事でした。久美子以外は、黙って海へ自転車を走らせて行きます。2時間の間、久美子は最初はうるさかったのですが2時間のサイクリングで疲れたのか言葉もなく静かなものです。海につくと、ちょっとビックリ、結構いい波がありました。その日は波乗りには最高の海のようでした。海辺を見まわすと浜辺にはサーファー達の人が多くいました。自転車をいつもの場所へ止めて、浜辺へあるって行く直也と友達でしたが、久美子がいなくなるのです。
「なあ、久美子ちゃん、いなくなっちゃたよ」と、友達は直也に声を掛けます。
「本当だ、迷ったのかもしれないな、どこ行ってんだ、オレ、探してくるからよ、先に海へ行ってくれ」と直也は友達に声を掛けます。
「分かった、直也、たのむよ、行方不明になったら、オレラのせいになっちゃうよ」
そして、直也は久美子を探しに行きますが、すぐに見つける事が出来たようです。
「あれ、クーコ、何やってんの?」と直也は久美子に声を掛けます。
久美子は、作ったドリームキャッチャーを友達の自転車に縛り付けていたのです。
「直兄ちゃんの友達にもお守り付けてたの」と久美子は直也に伝えました。
そして直也は久美子の手を取り海辺へと向かいます。
「直兄ちゃん、すごい人立ちがいるよ」と久美子は驚きながら直也に声を掛けます。
久美子の言葉で、直也達が周囲を見回すと日光浴する人、釣りをする人、ただ散歩してる人、ボードしてる人、サーファーといっても陸でサーファーの数人はナンパしてる人、浜でゴルフしてる人、海に入って波を待っている人、様々でした。
「そうだね、でも、いつも通りの人達ばっかりだから」
「そうなんだね、びっくりした、直兄ちゃんが知ってる人?」
「ああ、殆ど知ってる人達だよ、みんな知ってるよ」
直也と久美子が会話をしていると、友達は直也に声を掛けます。
「あれ、直也、アイツいるよ、気に入らねえよ、こっちに来るのか?肉取られるぞ」
「面倒くせえよな、でも、しょうがねえよな」
友達の数人が直也に大声で叫びます。
「あれ?本当だ?何でいるんだ?オレが会ってくるよ」と直也は友達に言います。
「まじかよ?」と友達は言いますが、直也にとっては気になっていたライバル的な友としての存在であったようです。
「ひさしぶだね、真一、こっちに来ないか?」と直也は真一に声を掛け、直也は海から上がってくる真一のもとへ歩って向かい声を掛けます。
「直也、サーフィンしないのか?それからサーフボード買ってもらったのか?」と真一は浜辺を歩きながら直也に聞きます。
「今日は、バーベキューだけで海には入らないんだ、お年玉の貯蓄で自分で買ったよ」
「そうなんだ、お年玉か、ウェットスーツは?」
「無理だ、身長が伸びたら着れなくなるから買ってないよ、ところで真一は一人で来たの?」
「いいや、車で親に送ってもらって親は旅館にいるんだ、ところでサーフボード自転車で大変だな」
「なるほどね、そういう事だったんだね、サーフボードはサーフショップで置かせてもらってる、自転車では運ぶのは無理だから」
直也と真一は歩きながら会話をして友達のいる場所へ連れてきます。友達は真一から目をそらし横を向いて、真一に挨拶だけはしていました。
「オッス、久しぶりだね」
直也の思いは、いつもの友達に真一を友達として認めてほしいという願いでした
「お前らも、海が好きなんだなぁ、今日はいい波があるよ」と真一は、そっけない顔しながら直也の友達に声をかけていました。
「お前、いつも一人なのか、それなら、海では友達になろうよ」と直也は、さりげなく真一に声をかけました。
「フッ、フッ、フッ、・・・考えておくよ」と真一は言葉はなく表情だけ変えて答えています。
「お前、本当に嫌なやつだな」
こんな会話で、真一も海では友達になり、直也は真一の連絡用の電話番号もきく事もできました。直也と真一が会話をしていると、久美子は真一を見つめて何かを感じ取っていました。
「直兄ちゃん、真一君とは友達なの?」と久美子は直也に聞いてます。
「ん?真一とは、ライバル的な関係だよ、今はね」と久美子に直也は答えます。
「ライバルなの?でも、友達もライバル関係だから、真一君は友達でしょ」
「え?そうかもしれないな」
この時、初めて直也は、まるで天使のようで人見知りをしない久美子への不思議な思いを抱きます。
「はじめまして久美子と言います、よろしくです」と真一に声を掛けました。
「ああ、よろしく」と久美子に真一は小さな声で答えました。
「はい、お友達なら、お守りを上げますね」
「何これ、お守りってなに?」
「直兄ちゃんの、お友達には魔除けのお守りをあげてるから、ドリームキャッチャーです」
久美子をみる真一は苦笑いをして、ドリームキャッチャーを見て受け取りますが、真一は久美子とは初めての出会いなのにと思いながら、初めてじゃないような感覚を抱いていました。この日は直也や真一、久美子、他の友達、みんな仲良くバーベキューで楽しむ事になりました。
「いつもこんなんだと良いんだけどなー」
海からの帰り道、おそらく友達は皆そう思いながら自転車をこいでいたと思います。帰り道は海行きの反対で友達は一人ずつ「じゃぁな」って言って自分の家に向かって消えていきます。久美子は、はじめて直也とその友達らと一日を過ごし、よほど楽しかったようで、いつもの久美子に笑顔に戻っていました。この日、海から帰宅後の夕方は直也の家の縁側で、久美子の悩みを聞いて、家庭内では上手くいってなかったみたいでした。そして、その日は、直也の母親が営む飲食店で、直也と久美子は2人で食事をしました。直也の両親は久美子の気持ちを知っていたらしく久美子がちょくちょく来るのをいつも見守っていてくれていたようです。
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