覚悟していたような戦争の悲惨さ、むごさは
あまり描かれていない。あくまで控えめで静かだ。
大泣きするようなシーンもない。
(人によってはあっただろうが)
静かで控えめだからこそ、心の奥の鉛が重みを増した。
「太陽の子」というタイトルの意味は
太陽の持つエネルギーを開放しようとしている人々のことかと
解釈させてもらいました。
春馬氏、柳楽優弥氏、有村架純さんについては
京ことばはとても自然に。
(有村さんは関西出身なので頷ける)
春馬くんの何気ない「ありがとう」の
イントネーションも完璧だ。手紙の部分も完璧だ。
ただ、見た目が「ただいま」の時は胸板が厚く
堂々としているのに、
家の中のシーンでは痩せていて目がギラギラして
見えたので、いつもの優しい春馬くんとは
かけ離れて見えた。役作りの成果か?
撮影の時系列がわからないのだが・・・
表面的には静かな魅力が感じられたが、
あの表情からは、もう「その覚悟」が
出来上がってしまっているようにさえ感じられた。
柳楽優弥氏(修)の迷いや苦悩は妙心寺天井画の龍でよく表されている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/92/1648725857a7b06758ff985998947c36.jpg)
クライマックスともいえる、海辺の入水未遂シーン。
朝陽が昇る関係で、一発撮りだったという。
春馬くん、柳楽くん、子役の頃から
共演やオーディションを重ねてきたふたり。
ふたりを抱きしめる、朝倉世津役の
いつもは柔らかい雰囲気の有村架純ちゃんの
一番の渾身の演技を見たようにも思う。
抜群の組み合わせで撮影できた満足感が
あふれていた。
田中裕子さんの、大切な息子のための
必死な思いで持たせるおにぎりを結ぶ表情。
いよいよ送り出す時の耳をさわるしぐさ、
本当は抱きしめたいのに、
当時はそんなことを許されない辛さがひしひしと伝わってきた。
自分が応援してきた長男の修(しゅう)の仕事が
多くの人を殺傷してしまうものだと知って、
自分だけ、科学者の母親として逃げるわけにはいかないという
必死で耐えようとしている表情。
来年公開の映画の一部として受け取れた。
来年を待ちたい。