彼の横顔は 何だか冷ややかだった
「あと、お願いしたいのは、家の固定電話の電話番」
「家の固定電話は廃止できないの?」
一人暮らしになってからずっと携帯だけなので、 俺はピンと来なかったのだ。
「うん 会社始めた時 、自分の家を事務所にしてたから、電話も家のを会社の電話として名刺やホームページで宣伝していた時期があったんだ。それでたくさんのお客さんに出会ったんだ」
それから 2、3年も経っているが、 この 固定電話への連絡は今でもあるという
「最近は ごくたまにしか来ないけれど、それでも 人脈が広がっていい面があるからやめたくないんだ。それなのに…その…例の変な電話が混ざってきて…」
「わかった それは全部俺が出て必要なものだけ取り次ぐよ」
「それ聞いたらほっとした。センパイ、 ありがとう」
と、いつしか カニをむくのに夢中になっていたらしい聖名の目は、涙をたたえかけているようにも見えた。
カニは照れ隠しに見えた。
初めて出会った日ほど 宴会は盛り上がらなかった。
おひらきの後は、俺はリビングの固定電話の子機を自分の部屋に置き、荷物の整理をしながら、シャワーの順番を待っていた。
ノックの音がして、俺は、
「はーい」
何だか嬉しいのはどうしてなんだろう。