「傾国のラヴァーズ」

ボディーガードの翔真は訳有の美青年社長・聖名(せな)の警護をすることに…(閲覧者様の性別不問) 更新情報はX🐦にて

「傾国のラヴァーズ」その3・闇の三代目

2022-10-25 18:26:00 | 傾国のラヴァーズその1~10
 その後が、この彼本人の苦労と実は俺は聞いてきたのだが…

「母は遊び足りない女の子で、子育てなんか全然できなくて、とうとう祖母に泣きついたそうなんだけど、祖母も成田先生との生活優先で母のことはお手伝いさん任せだったからできなくて。そのうち、母は諦めて僕を家に置いたまま出かけるようになって。夫と、とか、離婚の後は色んな男友達とか、二人目のダンナとかと」

 本人は淡々と話すが、聞いている方は気の毒で仕方なくなる。

「で、前から僕が家で一人で泣いてるのを知ってた近所の人がその日はとうとう警察に……警察に連絡してくれて。で育てられないって母と祖母でオレを押し付けあって…」

 結局、彼は児童養護施設に入ることになり、その後小学校入学の前に里親に引き取られた。
 この里親たちの存在が、俺には不透明だったので単刀直入に訊いてみた。
「その方が矢野さん?」
「そうそう、でも親戚じゃないんだ。祖父の後援会長だった矢野さんの長男夫婦。会長夫妻は高齢だったから」

 里親の二人のことはおじさん、おばさんて呼んでた。息子が二人いたんだけど、もう独立してて、たまにしか会えなかった。でもみんな優しかった。

「でも僕は、他人の家にいるのが申し訳なくて、中学を出たらどうにか働いて独立するつもりだった。そしたらその家の大人みんなが、せっかく成績がいいんだから大学行け、協力するって言い始めて。矢野会長がお金は自分が出すって断言して。祖母も母もその話に乗ってしまって」

「どのロが言ってるって僕は思った。でも僕は勉強が好きで大学への憧れもあったから、学費は大人になってから返すつもりでその話に乗ることにしたんだ」
 そしたら、上座に座ってた会長が、
「頼んだよ。成田先生の跡取りは君しかいないんだから、って」




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