俺は嬉しくなって、
「ワインですか。いいですね 。でも平日なのに大丈夫ですか?」
ノンアルコールではないのも気になったが、中止になるのが嫌で 、それは言わなかった。
「うん。ていうか海原センパイの歓迎会 っていうことで。自宅で悪いけど」
一瞬は喜んだが…
思えば昨日のあの空白は、何だったのかと思うとまだモヤモヤするが、
「じゃあ お言葉に甘えてお願いします!」
…ワインはキラキラ輝く スパークリングワインだった。
さらに料理も俺の目から見てかなりのごちそうだ。
「すごいなあ」
俺が何気なく言うと、彼も何事もなく、
「このために 昨日少し買い出ししたから」
と言う。
俺はフリーズしてしまった。
「それで 雲隠れしていたのか?」
「それについては本当にごめんなさい。そして食料買い出しに行ったのは日曜日。記憶違い」
日曜はまだ俺の常駐が決まってなかったはずだが…まあいいか。
「昨日は本当に会合で、金策ではないからね。 信じて」
「いやそれは全く思わなかったけど…」
そうか。
彼は社長なんだから、よその社長と同じように、資金繰りが厳しい時は走りまわることもあり得たわけか。
でも、彼の元気のなさを見る時、やっぱり誰かに何かされたんじゃないかという気がするのだ。
しかしそれは当たっているようで、怖くて何も言えなかった。