佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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IMRTについて その4

2008年01月27日 08時48分20秒 | 診療紹介Q&A
 hirako先生のIMRT記事、第4弾です。
 脚光をあびるIMRTの影の部分を、放射線物理学的にそして実際の照射の観点から解説してもらいました。

 次に線量率の問題があります。仮に従来法で300cGy/分の線量率で治療を行っていると仮定します。IMRTでは、照射内にばらばらな線量を当てるため、照射中にブロックが動きながら割合を調節しています。このため、平均すると30cGy/分程度の線量率ということになります。300cGy/分で1分間の治療と、30cGy/分で10 分間の治療、放射線生物学の知識がある方ならこの効果に差があることは容易に理解可能な話です。知識のない方でも、100kgの荷物を1m移動させるのと、10kgの荷物を10m移動させるのにどちらが体力を消耗するかということを考えていただければ想像可能かもしれません。つまり、正常組織への負担も軽い代わりに、病気への効果も同じ線量であれば劣る可能性をはらんでいるということです。

 また従来法では、治療中の臓器の動きはあまり考慮する必要がありませんでした。照射野内は均一な放射線があたるため、少々移動したとしても、あたる放射線の量に変わりがないからです。しかしIMRTでは、照射野内にばらばらな線量が当たるため、数mmの移動で、全く異なった放射線の量が当たることになります。前立腺は膀胱内の蓄尿の程度、直腸内のガス・便塊の動きで容易に移動します。また1分間程度であれば身体を動かさないことは可能であっても、10分間身体を動かさないことは、とても大変なことだと考えます。

 次回はいよいよ最終回です。照射機器の問題をふくむ、現場での問題点があがってきます。

 IMRTについてその1 IMRTの原理はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/d3912274b82d637eb72bd76e94fe1792

 IMRTについてその2 前立腺がん・頭頸部がんへのIMRTはこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/c5c2b96df7e59a4a4bbd3f168be03b50 
 
IMRTについてその3 IMRTの問題点、計画段階での問題点はこちら→
http://blog.goo.ne.jp/sagarad2007/e/18633dc3e6f215ca0b18753d4f94b3bd

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