脂肪組織や骨髄などに由来する間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)は、抗炎症効果などが期待されて様々な疾患の治療に用いられています。整形外科分野では札幌医科大学から脊髄損傷に対する骨髄由来MSCの有効性が報告されており、細胞治療薬として保険収載されています(ステミラック®注)。しかし自己MSCを用いる治療には、細胞のリソースに限りがある、細胞ごとに有効性が異なる、などの問題点があります。
さてMSCはhuman leukocyte antigen(HLA) class II抗原を欠くため、他家移植が可能であることが知られています。この論文で著者らは、健常ドナー由来のiPS細胞から分化させたMSCをGMPに準拠した最適化された製造工程を用いて製造し(CYP-001)、そのステロイド抵抗性急性移植片対宿主病(SR-aGvHD)患者に対する忍容性、有効性を検証した第1相非盲検臨床試験(NCT02923375)の結果を報告しています。16名の患者に対する投与ということで小規模なものですが、結果は大きな有害事象もなく、有効性もしめされたというものです。iPS細胞由来のMSCには理論上は数の制限がなく、また均質性も担保されることから、今後このようなアプローチが様々な疾患に応用されることが期待されます。
Bloor et al., Production, safety and efficacy of iPSC-derived mesenchymal stromal cells in acute steroid-resistant graft versus host disease: a phase I, multicenter, open-label, dose-escalation study. Nat Med. 2020 Sep 14. doi: 10.1038/s41591-020-1050-x.
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