とはずがたり

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パンデミック時の手術のトリアージ

2020-05-23 13:43:06 | 新型コロナウイルス(治療)
COVID-19が猛威をふるったNew Yorkにおいて医療機関は甚大な影響を受けました。PPEや人工呼吸器、ICU病床などが圧倒的に不足する中で、Columbia University Irving Medical Centerでは手術を90%削減し、手術室をICUとして運用することによってICU病床を2倍に増加させました。手術についてはトリアージが行われましたが、その際の基準として、
①患者に危害を与えずに手術をどれだけ遅らせることができるかで:24時間以内(緊急)、1~2日以内(緊急)、3~7日以内(準緊急)に分類
②人員(外科医、麻酔科医、看護師)、技術(人工呼吸器、透析装置)、消耗品(PPE、血液製剤)、術後リソース(ICUベッド)について、リソース強度分類(resource-intensity classification, RIC)を用いて予想される消費量を低、中、または高に分類し、全体的なリソースの消費量をクラスI(最も単純なもの)からクラスIV-B(最もリソースを必要とするもの)に分類しました。例えば同じ癌の手術でも多くのリソースが必要なものは後回しにされたそうです。
パンデミックがピークだった時期には、病院の審査委員会が設置され、緊急と分類された患者は直接手術室に運ばれましたが、準緊急症例(例えば、内固定を必要とする骨折や、神経学的症状の悪化を伴うヘルニア)は委員会によって評価され、臨床的緊急性とRICを考慮して(つまり緊急度ーRICマトリックスのどこに位置するかを考慮して)手術を受ける患者が承認されました。
状況は改善しているようですが、未だに手術室は完全に元通りにはなっておらず、長大になった手術待ち患者リストにどのように対応していくかは、今後の大きな課題になっています。今回トリアージに用いた「緊急度ーRICマトリックス」は、今後平時における手術優先度の決定にも役立つかもしれないとしています。 
Argenziano et al., Surgery Scheduling in a Crisis, NEJM DOI: 10.1056/NEJMc2017424 


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