Compassionate useで有効だったというNew England Journal of Medicineの論文などもあり、remdesivirにはCOVID-19治療薬としての期待が高まっています。日本でも「5月にも承認か٩(๑>◡<๑)۶ 」などの報道がなされています。
さてこのたびLancet誌に武漢の10施設で行われたCOVID-19に対するremdesivirの医師主導二重盲検RCTの結果が報告されましたが、結果は残念なものでした。
さてこのたびLancet誌に武漢の10施設で行われたCOVID-19に対するremdesivirの医師主導二重盲検RCTの結果が報告されましたが、結果は残念なものでした。
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組み入れ基準はPCRでSARS-CoV-2感染が確定している18歳以上の男女で、画像上肺炎があり、room airでSaO2が94%以下、あるいはPaO2/FIO2 ratioが300 mm Hg以下で発症から14日以内の患者です。治療群:プラセボ群=2:1の比で割り付けられ、ランダム化が行われています。治療群ではremdesivir初日200 mg、2―10日目は100 mgをIVしました。Primary outcomeはランダム化後28日以内の臨床症状改善です。Secondary outcomeは7,14,28日後の改善度(著者らが作成したsix-point scale: 死亡が6点、症状寛解が1点など)、28日目の死亡率、補助換気が必要な割合、酸素投与期間、入院期間、院内感染患者の割合、そしてRT-PCRによるウイルス検出患者の割合です。
(結果)237人の患者が組み入れられました(remdesivir群158人、プラセボ群79人)。武漢のアウトブレークがコントロールされた、などの理由から試験は途中で打ち切られ、あらかじめ目標としていた患者数に達しなかったため、statistical powerは80%から58%に減じています。2群の背景にはやや不均衡がありそうですが、まあまあそろっています。受けた他の治療などにも差がありませんでした。
①Primary outcome:最終観察日である4月10日の段階で、両群の臨床的改善に有意な差はありませんでした(中央値 remdesivir群23.0日 [15.0-28.0] vs プラセボ群21.0日 [IQR 13.0-28.0] , HR 1.23 [95% CI 0.87-1.75])。
②臨床的改善までの日数にも両群で差なし(remdesivir群23.0日 vs プラセボ群21.0日, HR1.27)
③発症後10日以内にremdesivirを開始した患者では症状改善までの日数が18.0日(プラセボ群 23.0日)とやや短い(有意差なし)
④28日目までの死亡率にも差なし(remdesivir群22人[14%] vs プラセボ群 10人[13%])。10日以内にremdesivirを使用した患者ではプラセボよりやや死亡率は少ない(11% vs 15%)が、逆に使用が遅かった患者ではremdesivir群のほうが死亡率は高い(14% vs 10%)(いずれも有意差なし)という結果でした。
⑤補助換気が必要になった期間にも差なし(ややremdesivir群で短いが有意差なし)、その他の臨床評価項目にも差なし。
⑥RT-PCRから計算したviral loadの変化にも両群で差なし。28日後にウイルス陰転化した割合にも差なし。
⑦有害事象に両群で差なしでしたが、remdesivir群では有害事象のために治療中止した患者が多かったとしています(12% vs 5%)。
途中で中止になったため十分な症例が集まらなかった、少しremdesivir群で高血圧や心血管障害の患者が多かった、呼吸数が24/minを超える患者の割合が多かったなどの問題はあるとしても、とても「remdesivirイイネ!」というようなデータではありません。基本的にremdesivirは抗ウイルス薬ですから、重症化した際のサイトカインストームなどに効くわけではなく、初期段階での投与が想定されますので、この論文の結果はかなりdiscouragingなものです。
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と思っていたら、アメリカからなんと「remdesivirに明確な効果(https://www.afpbb.com/articles/-/3280993)ヤッタネ!」などというプレスリリースが(このタイミングで)出されました。どう考えても上記のLancet論文が出ることにあせったGilead Sciences社(の大株主であるアメリカ)が、まだ解析が不十分な段階でプレスリリースをしたとしか思えません。日本のネットも「remdesivirイイネ!」という報道ばかりです。。案の定株価が上がったりしています。
私も期待していたので効果がないというLancet論文の結果は残念ではありますが、命にかかわることですので、あくまできちんとしたデータの客観的な評価をしなければいけないと考えています。アメリカの治験データが正式に公表された段階でまた紹介したいと思いますが、今回の報道には何か納得できないものを感じてしまいます。コレデイイノカ?
(結果)237人の患者が組み入れられました(remdesivir群158人、プラセボ群79人)。武漢のアウトブレークがコントロールされた、などの理由から試験は途中で打ち切られ、あらかじめ目標としていた患者数に達しなかったため、statistical powerは80%から58%に減じています。2群の背景にはやや不均衡がありそうですが、まあまあそろっています。受けた他の治療などにも差がありませんでした。
①Primary outcome:最終観察日である4月10日の段階で、両群の臨床的改善に有意な差はありませんでした(中央値 remdesivir群23.0日 [15.0-28.0] vs プラセボ群21.0日 [IQR 13.0-28.0] , HR 1.23 [95% CI 0.87-1.75])。
②臨床的改善までの日数にも両群で差なし(remdesivir群23.0日 vs プラセボ群21.0日, HR1.27)
③発症後10日以内にremdesivirを開始した患者では症状改善までの日数が18.0日(プラセボ群 23.0日)とやや短い(有意差なし)
④28日目までの死亡率にも差なし(remdesivir群22人[14%] vs プラセボ群 10人[13%])。10日以内にremdesivirを使用した患者ではプラセボよりやや死亡率は少ない(11% vs 15%)が、逆に使用が遅かった患者ではremdesivir群のほうが死亡率は高い(14% vs 10%)(いずれも有意差なし)という結果でした。
⑤補助換気が必要になった期間にも差なし(ややremdesivir群で短いが有意差なし)、その他の臨床評価項目にも差なし。
⑥RT-PCRから計算したviral loadの変化にも両群で差なし。28日後にウイルス陰転化した割合にも差なし。
⑦有害事象に両群で差なしでしたが、remdesivir群では有害事象のために治療中止した患者が多かったとしています(12% vs 5%)。
途中で中止になったため十分な症例が集まらなかった、少しremdesivir群で高血圧や心血管障害の患者が多かった、呼吸数が24/minを超える患者の割合が多かったなどの問題はあるとしても、とても「remdesivirイイネ!」というようなデータではありません。基本的にremdesivirは抗ウイルス薬ですから、重症化した際のサイトカインストームなどに効くわけではなく、初期段階での投与が想定されますので、この論文の結果はかなりdiscouragingなものです。
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と思っていたら、アメリカからなんと「remdesivirに明確な効果(https://www.afpbb.com/articles/-/3280993)ヤッタネ!」などというプレスリリースが(このタイミングで)出されました。どう考えても上記のLancet論文が出ることにあせったGilead Sciences社(の大株主であるアメリカ)が、まだ解析が不十分な段階でプレスリリースをしたとしか思えません。日本のネットも「remdesivirイイネ!」という報道ばかりです。。案の定株価が上がったりしています。
私も期待していたので効果がないというLancet論文の結果は残念ではありますが、命にかかわることですので、あくまできちんとしたデータの客観的な評価をしなければいけないと考えています。アメリカの治験データが正式に公表された段階でまた紹介したいと思いますが、今回の報道には何か納得できないものを感じてしまいます。コレデイイノカ?
Wang et al., ”Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial” Lancet, DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31022-9