大腿骨頚部骨折では骨頭への血流の問題があり、骨接合術では偽関節(5%-28%)、骨頭壊死(5-18%)のリスクが高いとされています。人工骨頭置換術、人工股関節全置換術いずれも優れた術後成績が示されていますが、多くの症例は人工骨頭置換術を受けています。また人工骨頭の場合、大腿骨ステムの固定についてはsystematic reviewでcement固定が優れていることが示されていますが、アメリカでは人工骨頭の60%ではuncementで固定されているそうです。日本ではもう少し多いかもしれません。
この論文で著者らはKaiser Permanente Hip Fracture Registryを用いてcement, uncementの人工骨頭の成績を比較しました。2009年1月1日から2017年12月31日までに36病院、481外科医によって人工骨頭置換術を受けた12,491人(平均年齢83歳、69.3%が女性)のうち、51.6%がcement、48.4%がuncement固定を受けていました。交絡因子を調整した多変量解析において、uncement固定は有意に高いaseptic revision(3.0% vs 1.3% @1 year, HR 1.77, P<0.001)率を示しました。Post-hoc解析で、aseptic looseningの違いは主としてperiprosthetic fractureによるものでした(1.6% vs 0.2%)。全ての年代でuncement固定症例で高いaseptic revision率を示しましたが、特に高齢群で大きな違いが見られました。一方術後の院内死亡率、1年間の死亡率に違いはありませんでした。
私自身も人工骨頭はほとんどuncement固定のものを用いていましたし、術後転倒してperiprosthetic fractureを起こしてがっかりした症例も多く経験しています。それではどうしてセメントを使用しなかったかというと、cement使用後の血圧低下などの理由もありますが、cementが固まるまで待っているのが面倒くさい、とかperiprosthetic fractureをおこすとcementを取り除くのが面倒くさい、といったような理由だった気がします。でもこの結果を見ると、cement固定を使った方が良いのかな~と思いました。すこし面倒ですが(←ダメ)。
Association Between Uncemented vs Cemented Hemiarthroplasty and Revision Surgery Among Patients With Hip Fracture
JAMA. 2020;323(11):1077-1084. doi:10.1001/jama.2020.1067
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