とはずがたり

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腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛に手術は有効

2020-03-19 13:11:05 | 整形外科・手術
腰椎椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛対する椎間板切除術(diskectomy)の有効性についてはこれまでにも多くの研究で検証されており、短期的には保存療法よりも症状を緩和するが、6ー12カ月後には変わらなくなる、とする研究が多いようです(Peul et al., N Engl J Med 2007; 356: 2245-56; Osterman et al., Weinstein et al., JAMA 2006; 296: 2441-50など )。しかしこれらの研究では組み込まれた患者における坐骨神経痛の持続が3カ月以内と急性期・亜急性期が大部分でした(WeinsteinらのSPORT trialでは手術群の方が成績は良かったのですが、治療adherenceが悪く評価が難しいという結果でした)。カナダから報告されたこの研究では、4カ月から12カ月片側性のradiculopathyが持続し、MRIでL4-L5あるいはL5-S1のヘルニアが存在する患者を対象としています。手術療法(顕微鏡を用いたopen diskectomy)と保存療法にランダムに割り付け、保存療法群にはcross overを許容しています。Primary endpointは6カ月後のleg pain intensity score(VAS)、secondary outcomeはODIやSF-36などとしています。各群64例ずつが組み込まれ、6カ月後のfollow up rateは手術群で80%、保存療法群で 84%、12カ月ではそれぞれ80%, 73%でした。手術群のうち7名は症状改善のため手術を回避し、1例は合併症のため手術ができませんでした。非手術群のうち22例(34%)は平均11カ月後に手術を受けました(cross over群)が、そのうち6カ月以内に手術を受けたのは2例であり、この2例についてはlost to follow upになっています。
Primary outcomeである6カ月後のleg-pain intensityは、手術群で2.8±0.4、保存療法群で5.2±0.4(95% confidence interval [CI], 1.4 to 3.4; P<0.001)で有意に手術群が勝っていました。Secondary outcomeについてもおおむね同様の傾向であり、12カ月後のleg-pain intensity scoreは手術群で2.6±0.4 、保存群で4.7±0.4、 ODI scoreはそれぞれ 22.9±2.3、 34.7±2.4でした。手術に関連した有害事象としては、手術群で6%、cross over群で8%でした。
単一施設で行われていること、20%のprimary outcome dataが不完全で多重代入(multiple imputation)法を用いているなどのlimitationはあるものの、NEJMには珍しく比較的外科医の感覚に近い結果ではないかと思います。
Surgery versus Conservative Care for Persistent Sciatica Lasting 4 to 12 Months
N Engl J Med 2020; 382:1093-1102
DOI: 10.1056/NEJMoa1912658
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1912658?query=featured_home 


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