骨組織は豊富な神経支配を受けていますが、骨の疼痛を伝えるメディエーターとして重要なのが神経成長因子(nerve growth factor, NGF)です。NGFは受容体TrkAに結合することで細胞内シグナルを伝えますが、NGFの発現は骨への傷害にともなって上昇することが知られています。
本論文で著者らはNGF-eGFPレポーターマウスを用い、反復刺激による尺骨疲労骨折モデル(56週で治癒)において、3日目にNGF発現が仮骨部で最も上昇することを明らかにしました。NGF発現細胞は、3日目にはvimentinおよびPDGFRαを発現するperiosteal mesenchymal cellsおよび炎症に関与するマクロファージが主ですが、14日目にはosteocalcin陽性の骨芽細胞が主たる細胞でした。NGF発現上昇とともに傷害後早期をピークとして骨膜においてTrkA+CGRP+感覚神経の樹状突起の旺盛なsproutingおよびduplicationが観察され、その後もある程度高いレベルで維持されます。1NMPP1刺激によってTrkAシグナルがシャットダウンされるTrkAF592Aノックインマウスを用いて骨折治癒過程においてTrkAシグナルを抑制すると、反復傷害による骨膜反応が減じて仮骨形成が抑制されており、仮骨部の感覚神経の数も少なくなり(7日目、14日目の骨量はそれぞれ54.3%, 22.3%減)、骨芽細胞の活性も減じていました。同様の骨折治癒遅延はパクリタキセルによるsensory neuropathyモデルでも見られました。これらの結果は、NGF-TrkAシグナルが骨折治癒過程における感覚神経の誘導を介して骨折治癒に重要な役割を果たす可能性を示すものです。現在変形性関節症(OA)に対して抗NGF抗体が開発されていますが、その重要な副作用に急速破壊型OAが知られています。この機序はまだよくわかっていませんが、抗NGF抗体によってダメージによって生じたmicrocrackに対する修復機転が阻害されることによってmicrocrackの集積が生じ、collapseに至る可能性が考えられそうです。
本論文で著者らはNGF-eGFPレポーターマウスを用い、反復刺激による尺骨疲労骨折モデル(56週で治癒)において、3日目にNGF発現が仮骨部で最も上昇することを明らかにしました。NGF発現細胞は、3日目にはvimentinおよびPDGFRαを発現するperiosteal mesenchymal cellsおよび炎症に関与するマクロファージが主ですが、14日目にはosteocalcin陽性の骨芽細胞が主たる細胞でした。NGF発現上昇とともに傷害後早期をピークとして骨膜においてTrkA+CGRP+感覚神経の樹状突起の旺盛なsproutingおよびduplicationが観察され、その後もある程度高いレベルで維持されます。1NMPP1刺激によってTrkAシグナルがシャットダウンされるTrkAF592Aノックインマウスを用いて骨折治癒過程においてTrkAシグナルを抑制すると、反復傷害による骨膜反応が減じて仮骨形成が抑制されており、仮骨部の感覚神経の数も少なくなり(7日目、14日目の骨量はそれぞれ54.3%, 22.3%減)、骨芽細胞の活性も減じていました。同様の骨折治癒遅延はパクリタキセルによるsensory neuropathyモデルでも見られました。これらの結果は、NGF-TrkAシグナルが骨折治癒過程における感覚神経の誘導を介して骨折治癒に重要な役割を果たす可能性を示すものです。現在変形性関節症(OA)に対して抗NGF抗体が開発されていますが、その重要な副作用に急速破壊型OAが知られています。この機序はまだよくわかっていませんが、抗NGF抗体によってダメージによって生じたmicrocrackに対する修復機転が阻害されることによってmicrocrackの集積が生じ、collapseに至る可能性が考えられそうです。
J Clin Invest. 2019 Dec 2;129(12):5137-5150. doi: 10.1172/JCI128428.
Fracture repair requires TrkA signaling by skeletal sensory nerves.
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