とはずがたり

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細胞療法による心筋再生のメカニズム

2020-03-13 17:15:11 | 発生・再生・老化・組織修復
間葉系幹細胞などのいわゆるadult stem cellの移植は様々な分野で試みられており、脊髄損傷のように臨床的にすでに応用が始まっているものもあります。心筋損傷に対する細胞療法の有効性も以前から知られていますが(Beltrami et al. Cell 114, 763-776, 2003など)、その作用機序には不明な点が多く残されています。この論文で著者らはischemia/reperfusion (I/R)モデルで損傷した心筋へのbone marrow mononuclear cells (MNCs), cardiac mesenchymal cells (cardiac progenitor cells, CPCs)あるいは自然免疫を活性化するzymosan投与の効果のメカニズムを検討しました。正常な心筋に存在するマクロファージはCX3CR1+マクロファージが大部分ですが、MNCs (死細胞でも有効)やzymosan投与によってI/R損傷部位へのCCR2+マクロファージの集積が生じ、CX3CR1+マクロファージは損傷部周辺に移動します。これとともに心筋機能の改善が見られるのですが、マクロファージ集積の重要性はcyclosporin Aの投与による免疫抑制やclodronate lioposome投与によるマクロファージ除去が機能回復を阻害することによって示されています。Ccr2欠損マウスではI/R後の細胞投与の効果はありませんでした。一方で以前報告されているようにCx3cr1欠損マウスではI/R損傷による炎症が重篤化し、予後も悪くなります。この理由としてCX3CR1+細胞の損傷後の線維化の過程への関与も示されました。これらの結果は心筋損傷後に出現するマクロファージ(の産生する因子)が心筋機能の回復に重要な役割を果たしており、そのsubtypeによって役割が異なることを表しています。またMNCなどの細胞投与の効果は集積するマクロファージ制御を介する可能性を示唆しています。
正直言って結果に驚きは少ないですし、実験としては詰めきれていない点も多くあるように思います(例えばCCR2+細胞の投与によって心筋損傷は回復するか?など)。しかし細胞治療のメカニズムを明らかにしようという取り組みは評価すべきであり、また他の臓器への細胞療法の効果を検討する上でも参考になりそうです。 
Nature. 2020 Jan;577(7790):405-409. doi: 10.1038/s41586-019-1802-2. Epub 2019 Nov 27.
An acute immune response underlies the benefit of cardiac stem cell therapy.


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