とはずがたり

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CKD患者に対するビスホスホネート製剤投与の安全性

2020-12-31 07:39:40 | 骨代謝・骨粗鬆症
骨粗鬆症の講演を行った際にしばしば質問されるのは「腎機能低下した患者さんの治療をどうれば良いか?」という点です。特にビスホスホネート(BP)製剤は腎障害を生じるために、腎障害の程度によって禁忌、あるいは慎重投与とされています。この論文で著者らはイギリスのCPRD GOLD (1997-2016)およびSIDIAP(2007-2015)2つのコホートにおいて、eGFR<45 ml/min/1.73m2で40歳超という条件を満たすCKD 3bー5のBP userとnon-userを抽出し、その電子カルテ情報の解析から腎機能の変化を検討しています。Propensity scoreによってCRPDからは2,447人の BP userおよび8,931人のnon-user、SIDIAPからは1,399人のuser、6,547人のnon-userをmatchさせ比較したところ、CKD stageの増悪のhazard riskはCPRDで1.14(95% CI, 1.04, 1.26)、SIDIAP では1.15(95% CI, 1.04, 1.27)といずれもBP userで15%程度高かったという結果でした。CKD増悪に関してのnumber need to harmはCPRDでは40.8(3年)、20.7(5年)、SIDIAPでは29.4(3年)、28.6(5年)でした。一方で急性腎障害(acute kidney injury)、消化管出血/潰瘍、低カルシウム血症などのリスクはBP使用・非使用で変わりませんでした。後ろ向きのコホート研究ですので当然未知の交絡因子の存在などのlimitationはありますが、この結果はCKD患者に対するBP使用のリスクを再確認するものです。ただし急性腎不全などのリスクを変えないことを考慮すれば、benefit-riskバランスを考えた上でのBPの慎重投与を肯定する結果にも感じられます。



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