Une petite esquisse

日々の雑事の中で考えたこと、感じたことを徒然に書き綴ります。

村上春樹「ラオスにいったい何があるのですか?」を読み解く <連続シリーズ>(2)

2019年07月25日 | 社会学/社会批評
検証:寺院巡り(2)


ルアンパバーンのシンボル的な存在のシエントーン寺院。まず、見学すべき

「ルアンプラバンの街であなたがすべきことは、まず寺院を巡ることだろう。・・・(省略)・・・この街は京都や奈良に比べると圧倒的に規模が小さいので
寺院巡りはそれほど骨の折れる作業でない。・・・(省略)・・・二日もあれば有名な寺院はすべて見て回ることができるはずだ。
(文藝春秋刊、単行本165ページ)

村上春樹の文章は曖昧で具体性がない。「京都や奈良と比べると規模が小さい」と述べられているが、何を基準に規模が小さいと言っているのか理解できない。
ルアンパバーンは街の全域を考えるとかなり広大な面積になるが。
「有名寺院」の概念も分からない。ルアンパバーンの寺院のほとんどが有名寺院に該当すると思われるが。
 少なくとも、半島部王宮博物館より北東部に13の寺院があり、中心部には30の寺院があり、ルアンパバーン広域部には55の寺院がある。
ルアンパバーン全域を考えると、寺院の数を数えることは、ほぼ不可能である。
(ルアンパバーン観光局情報センター資料による)
一日24時間あったとしても、飯も喰わなければならないし、糞もしなければならない、寺院の移動にトクトクを使ったとしてもかなりの時間が掛かる。
二日間でこれらの寺院を巡るのは、1から1000までを3分で数えろと言う以上に不可能な事である。
寺院巡りを勧めるなら、ルアンパバーンの数ある寺院の中で、見逃せない最も評価の高い寺院について具体的に記述すべきだろう。
実際には二日間では、せいぜいシェントーン寺院とマイ寺院を参拝するのが限度であろう。
それに寺院巡りは観光であれ信仰であれ、作業ではない。


本堂に安置されている仏像

霊柩車庫の中の龍の首をもった霊柩車

境内の祠

「マイ・トーン」のモザイク画

※ルアンパバーンの面積は1万6875㎢、京都、奈良、兵庫3県の合計面積1万7000㎢にほぼ同じ、
(ラオス情報文化観光省観光公式ガイドによる)。
京都府の面積は4,612㎢、奈良県の面積は3,691㎢、圧倒的にルアンパバーン方が面積が大きい。

村上春樹「ラオスにいったい何があるのですか?」を読み解く <連続シリーズ>(1)

2019年07月25日 | 社会学/社会批評
検証:朝の托鉢(1)

「僧侶たちは寺院単位で列をなして裸足でひたひたとやってくる。・・(省略)・・・列の先頭に位の高い僧侶が立ち
(たまに賢い犬が列を先導してくることもあるが)、最後尾には小学校低学年ぐらいの年のちびっこ見習い僧侶たちが続く。」
(文藝春秋刊、単行本154ページ)


各寺院の先頭を行く僧侶、この方は位の高い僧侶か?


この2人も位の高い僧侶か?


この方は少しだけ位が高く見えるが?


この方も位が高い僧侶か?


この方も位が高いのか?


 村上春樹の旅エッセー「ラオスにいったい何があるのですか?」があまりにも軽薄で事実と乖離しているので、
事実を見極めるべく6月にラオスへの取材旅行を行った。
 5日間にわたり、朝の托鉢時の各僧侶たちの行列を観察し、行列の先頭の僧侶たちの写真撮影を試みた。
必ずしも、行列の先頭に位の高い僧侶が立ち、最後尾に小学校低学年ぐらいのちびっこ見習い僧が続くわけではない。
まして、犬が列を先導することはあり得ないし、その犬が賢いか否かは分からない。
書かれている事が事実ではない。読者受けを狙った文章としか言いようがない。
このワンセンテンスで村上春樹の観察力不足は証明できる。