下記はビヨンドヘルスオンラインからの借用(コピー)です
人生の目的がしっかりしている人ほど、日々の生活を健康的に過ごしていることが明らかになった。埼玉医科大学総合診療内科の廣岡伸隆氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Public Health」に4月29日掲載された。著者らはこの結果から、「生活習慣が健康的であるということは、人生に明確な目的があるということでもある」と記している。
人生の目的が明確な人ほど健康リスクとなる行動を避けることが既に報告されている。しかしそれらの研究の多くは、禁煙や身体活動など、個別の習慣との関連についての調査であり、生活習慣全般を評価した研究は少ない。廣岡氏らの研究は、国民健康・栄養調査と同様の広範な質問項目によって生活習慣を総合的に評価した上で、人生の目的意識との関連を検討したもの。
検討の対象は、日本成人病予防協会認定の健康管理士の有資格者であり、ヘルスリテラシーの高いことが見込まれる集団。その中で健康啓発活動を積極的に行うための生涯教育を定期的に受けている9,149人に調査協力を依頼し、4,820人が参加した。平均年齢は55.4±12.2歳、66.2%が女性であり、BMIは21.9±3.3で肥満者は15.0%だった。
生活習慣は、以下の11項目をスコア化して評価した。体重管理の意思、運動・飲酒・喫煙習慣の有無、および疾患予防のために生活管理をしているか否かについては2段階評価で回答を得て、好ましい選択肢の回答は4点、好ましくない選択肢は1点とした。食品の栄養成分表示ラベルを確認するか、バランスの取れた食事をしているか、運動を心がけているか、ストレスの程度、休息・睡眠の満足度については、4段階評価で回答を得て、最も好ましい選択肢を4点、最も好ましくない選択肢を1点とした。
人生の目的意識の評価には「生きがい意識尺度」を用いた。これは9項目の質問で構成されていて、45点満点で評価する心理測定ツールであり、先行研究によりその精度が検証されている。
結果について、まず生活習慣の全体的な傾向をみると、82.6%が体重管理の意思を持ち、89.2%は疾患予防のために生活管理をしていた。これらの数値から、調査対象者のヘルスリテラシーの高さがうかがえる。また食習慣に関しては、80%以上が食品の栄養成分表示ラベルを確認し(「常に」と「しばしば」の合計)、90%以上がバランスの取れた食事をしていると回答した。運動習慣に関しては、80%以上が運動を心がけ、63.9%は適切な運動量を満たしていた。休息と睡眠についても充足している人の割合が多かった。ただしストレスに関しては、「ストレスを感じている」との回答が74.4%と多かった(「高い」と「中程度」の合計)。
次に、前述の手法で計算した生活習慣スコアを合計し、その中央値をカットオフ値として対象全体を2分した上で、生きがい意識尺度スコアを比較した。すると、生活習慣スコアの上位2分の1に該当する群の生きがい意識尺度スコアは35.3点(95%信頼区間35.1~35.5)だった。一方、下位2分の1に該当する群の生きがい意識尺度スコアは31.4点(同31.2~31.7)であり、より健康的な生活を送っていると考えられる群の方が高スコアで、有意な群間差が存在した(P<0.0001)。
また、生きがい意識尺度のスコアが高いほど、生活習慣スコアも高いという、正の相関が認められた(r=0.401、P<0.001)。なお、生きがい意識尺度のスコア(r=0.15)と生活習慣スコア(r=0.29)は、双方ともに年齢と正相関していた(いずれもP<0.05)。
以上の結論として著者らは、「人びとの健康啓発に関与する健康管理士というヘルスリテラシーの高い集団において、健康的な生活習慣は人生の目的意識と関連していることが示された」と述べている。ただし、「両者の因果関係や関連のメカニズムは不明」として、この領域の研究の発展に期待を寄せている。
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