徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
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世界の車窓から ~世界遺産リーメスとドイツの森~

2014年07月06日 | 旅行
今回のテーマは『観光客が行かないドイツ』!ツアーではまず取り上げられない観光スポットと、ドイツの森&ハイキングコースをご紹介します。



ドイツは今でも州によっては面積の4割が森林という「森の国」。有名なシュヴァルツヴァルト(黒い森)は恐ろしげな名前に反してハイキングやトレッキングのコースとしても大人気です。ちなみにドイツとオーストリアの山道は非常によく管理されていて、スイスに至っては「信じられないくらい凄い♪」のだとか。お国柄ですかね。



フランクフルトもドイツ第5の規模(人口70万)にもかかわらず、市域の1/3が景観保護区を兼ねた森林です。滞在中の一日、フランクフルト市街からSバーン5番(郊外電車)乗り換えなしで小1時間(50分)ほど離れたバート・ホンブルクの山の中にある「リーメス」見物に行った後、4キロほどハイキングをしてきました。(リーメスのあるザールブルクの集落まではバート・ホンブルク駅からバスで15分ほど)

※ドイツ語で「バート」というのは温泉や浴場のこと。この町の中心部にもクアハウスがあります。ちなみにフランクフルトの金融街に勤めるリッチな方々は、この町に庭付きの素敵な家やペントハウスを持って、市街まで通勤するんだそうです。人気の高級ベッドタウンと言ったところでしょうか。


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Q.リーメスとは? 以下引用

<Limes Germanicus リメス・ゲルマニクス>
リメスまたはリーメス(Limes)は、ローマ帝国時代の防砦システムであり、ローマ領の境界線を示すものでもあった。リーメスはローマ帝国全土に張り巡らされていたが、狭義ではドイツの長城跡(リメス・ゲルマニクス)を指す。



城砦の中で調査が行われているものの1つのザールブルク城砦は、ゲルマニア・スペリオルの部分に属し、城砦の初期は紀元前90年頃の建築と推定され、長方形の形をしており、面積は約0.7haであった。城砦内部には、物見櫓や浴場の跡なども残る。その後の135年頃に拡張され、長さ221m、幅147mの3.2haという広い敷地に4つの城門と、石壁、二重の堀を持つものになった。

ザールブルク城砦の発掘調査は、1853年と1862年に行われ、1870年から恒常的に続けられた。1897年にドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が、このザールブルク城砦の再建を命じ、第一次世界大戦前に完成した。現在ではこの時に復元されたザールブルク城砦が博物館として使用されている。
(以上wikipediaより)




つまり、発掘&一部復元された古代ローマの「とりで」です。対ゲルマニアの最前線にある(=辺境)城塞にもかかわらず、ローマ本国と変わらないその設備、生活文化レベルの高さに驚くばかり。分かりやすく例えると、映画『テ○マエ・ロマエ』でルシウスが浴場建設に赴いたローマ軍の駐屯基地、あれの小規模版です。



橋と砦の正門。ローマ軍人の像がお出迎え。


当時の全体像


ローマ帝国最盛期の領土(黄色)と支配地域の特産品。小麦、葡萄酒、オリーブオイル、金銀、塩といったものだけでなく猛獣とか奴隷なんてのもあります。


内部(兵士の居館、一般人の住居、店、工作場、武器庫、かまど、浴場など)建物の中は出土品や復元された当時の文物、再現ジオラマ、資料などでいっぱい!しかし「外国からのツアー観光客が行かない」つまりメジャーではない場所なので、細かい説明書きが殆どドイツ語オンリーなんですよね…とほほ。こういう場所が大好きな私としては、ドイツ語ももっと勉強せねばと思う次第です。












大人気の駐屯基地食堂でランチをいただました。ちなみにローマ時代の復元メニュー「押し麦と豆のスープ、ソーセージ入り」を選択。具だくさんでとろみがあってとても美味!





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さて遺跡を堪能したら、いよいよハイキングへ♪

道は整備されていますが舗装はされていないので、かかとの低い、スニーカーなどの歩きやすい靴がベストです。私は普段ばきのローファーでも行ってしまいますが、お天気が良ければ問題ありません。ただ秋冬はよく雨が降るので、ぬかるんでいる個所もあり、やはりある程度「汚れてもOKで、歩きやすくて、水に強い」というものがよいでしょう。服装もTシャツや長袖シャツ、パーカーにジーンズといった普段着でOK。ハイキングのルートは道幅が広いので、道を外れてヤブに分け入りでもしない限り、虫に刺されたり草木にかぶれたりということもなさそうです。気を付けたいのはちょっとしたおやつ(パンなどの軽食でも)と飲み物を必ず持参すること。コンビニとか自販機というものがない国なので、喉が渇いてもすぐ何かが飲めるとは限りません。両手は空いていた方がいいので、肩掛けかばんか、リュック推奨です。まあ、当たり前のことばかりですね(^^; 短距離なら普段特別に運動をしていなくても、取り立てて特別な準備をしなくても大丈夫です。



ハイカーやサイクリストの為に整備された遊歩道にはちゃんと通りの名前までついていて、道順や距離も明記されています。


遊歩道はリーメスの城壁跡(土塁)に沿っています。これは物見櫓。





ブラックベリーは今が花盛り。あとひと月半ほどで美味しい実がなります。森は道ばた(笑)にいろいろ花が咲いたり実がなっているので、田舎育ちとしては「おおっ!」と反応w ブルーベリーも普通に生えています。ドイツの場合、私有林でも花や果実、キノコの採集は自由で(地主は木材が目的で山林を保有)人々は自由に森に分け入って自然の恵みを満喫してます。





緑の森で濃いピンク色がひときわ目立つ花ですが、毒があり「(何でも口にする)羊でも食べない」というシロモノだとか。トリカブトみたいなものね、と納得。ホタルブクロにも似ています。



松ぼっくりと気の早いキノコ。これは食べられませんw こちらでは10月がキノコ狩りのシーズンです。採集はごく一般的で、森に近い町の週末市場では地元産の天然キノコが山積みになっています。


これは秋の市場。カボチャ祭りw


名前は「王様キノコ」食用として人気です。昨秋の戦利品(笑)

不思議なことにキノコの毒に当たって死ぬ人は滅多にいません。子どもは親と一緒に山に入ってキノコを実際に見て「これはOK、これはNG」などと習うんだとか。我が家にはフルカラー写真満載の分厚~いキノコ辞典があります。



お金がかかる趣味ですが、ジビエ目的でのハンティングも可能です。銃所持の免許があり、地主に伝えれば秋冬のシーズン中に森での狩猟は自由。森のところどころにハンター用の見張り小屋が建っています。



キツネが出ますよ、のサイン。森ではキツネだけでなく鹿やリス、野ウサギも時折見かけますが、この日はツグミやシジュウカラの仲間を見ただけでした。去年の秋にフサフサしっぽで飛ぶように駆けて行くキツネを一瞬だけ見ました。



このサインの意味は「悪い人も出ますよ」(冗談ですw)昔このあたりの森を根城にしていた有名な盗賊がいて、2丁の銃と似顔絵は彼にちなんだ遊歩道のマークです。



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森では数多いサイクリストやハイカーに出会いました。ドイツ人は基本的に(例外多数w)マジメで良く働きますが、こういう所で息抜きをして&ちゃんと休暇を取ってエネルギーチャージしてるんだなあ、と毎度ながら思います。特に今は夏で日がとても長いので、6時くらいから4時間ほどはスポーツやレジャーを楽しめます。庭にグリルを持ち出してのバーベキューディナーも一般的で、時には友達や親戚を招いて賑やかに飲み食いしたり。
逆に言うと仕事以外にすることがない人は困るわけで、特に男性で家庭をほとんど顧みない人は、仮に仕事ができたとしても尊敬の対象にならない、という暗黙の了解があります。会社の同僚同士で飲みに行く習慣も日本ほどはなく、仕事場での横並び的連帯意識に至ってはほぼ皆無!(爆)という個人主義なところも影響しているのかもしれませんね。





遊歩道のゴール、ローカル線(単線/非電化)の駅とバスのような列車。ここは第3セクターのような路線で、今日の出発地バート・ホンブルクまで15分ほどのんびりと小さな集落をぬけて走ります。Sバーンに乗り換えると、車窓からは「マインハッタン」と呼ばれるフランクフルトの摩天楼が遠く見えます。



そんなわけで「あまり定番っぽくない」ドイツの風景をお送りしました。