日本に帰ってまいりました庵主です。
ワールドカップ2014ブラジル大会(以下W杯)を観に行っていたわけではありません。このところはフランクフルトとブリュッセルあたりに棲息していました。
・・・が。
ちょっと不思議な形で観てはきました!
その名も「パブリックビューイング」@ドイツ・フランクフルト!
ブンデスリーガ1部、アイントラハト・フランクフルトの本拠地であるコメルツバンク・アレナ、公式名は「ヴァルトシュタディオン(森のスタジアム)」フランクフルトの街を包む緑濃いザクセンハウゼンの森に佇む威容。フランクフルト空港へ離着陸する航空機から至近で見えるほどです。
ここで期間中(グループリーグ開催中はドイツの試合でしたが)W杯の中継をドイツ随一の大きさを誇るスクリーンでPVしてしまおう!というイベントなのです。(主催はフランクフルトで最大手のラジオ局)
ここに白状しますと、私はずいぶん長い間、欧州某国やら某国やらのサッカーファンでありました。
バックパッカーのように一人で観戦の旅に出たことも数知れず…うわあああああ、血が!血が騒ぐ!!とテンションはジワジワジワ~↑↑↑w
これは行かねばなるまい。(心の声)
いや、このために私はここに来たのではないか?(断じて違うw)
なお、PVチケットはスタジアム窓口でも売っていますが、オンラインで簡単に買えます。立見席(フィールドの上に芝プロテクターを敷いてアリーナにした自由席)と、座れるスタンド自由席。スタンドでも8ユーロというお得さで、しかも市内交通チケットつき。
公式HP 実施イベント一覧(英語)
http://www.commerzbank-arena.de/english/events
時差のあるブラジルでの開催とはいえ、視聴者の多い欧州での観戦ニーズに合わせてか比較的「まともな」時間のキックオフ設定が多かったように思います。※18時と21時でした。
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というわけで。来てしまいました、コメルツバンク・アレナ!フランクフルト中央駅から空港方面・ヴィースバーデン行きの各駅停車Sバーンで15分ほど。路面電車やバスでも行けます。
ここは2014‐2015シーズンから我らが日本代表のキャプテン、長谷部誠選手がプレーするホームグラウンドになります。収容人数は52,300人!すごいです。こちらでは家から毎日遠目に眺めていますが、至近で見ると大迫力!
スタジアム入口(駅から10分弱歩きます)→ゲートで荷物検査と身体検査を簡単に行い、チケットチェックをします。
グループリーグG第2戦、ドイツ対ガーナ(6月21日)ドイツ時間の21時キックオフですが、夏至近いヨーロッパのこととて、空はまだまだ明るいです。
初戦のミュラーのハットトリックで気をよくしたのか、仕事後に来る人も含めてかなりの混み具合。早くも酔っ払い満載なので車内はチャントやコールで大騒ぎ!実に愛すべきバカどもだ…東京のラッシュ以上の混雑、いやカオスです。頼むから電車の中で歌うなーーっ!!!叫ぶなーーーっ!!!(笑)中央駅の地下ホームは白・黒・赤・金のドイツユニや国旗、花飾り、緑のペンライトを持った人でいっぱいで、乗れない人も多数。関係ない観光客や通勤客は唖然!うんうん、これぞヨーロッパのサッカー大国のあるべき姿w懐かしいwww
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ところで1945年よりこのかた、ドイツ人は過去の世界大戦への反省と自戒から、国旗や国歌をおおっぴらに掲示・斉唱する行為には慎ましやかに拒絶の意を示してきました。ですが2006年のドイツW杯は、狂信的ナショナリズムとは無縁の「素直な愛国心」を、ある程度自由にしたという意味でも、大きなイベントではなかったかと思います。
DB(ドイツ鉄道)のICE備えつけ車内誌の表紙は代表それぞれの顔イラスト仕様で、全15種類!コンプしたくなりましたw 下はビール会社のW杯ドイツ代表応援広告。
おなじみの住宅街を歩くと、窓からおそらく住人のオリジンであろう世界各地の出場国の国旗がはためき「こんなに国際色豊かだったんだ」といつもの景色が新鮮に思え、街行く車はミラーカバーに黒赤金の三色をあしらったり、アンテナに国旗を飾ったり…試合の日はユニやファンシャツを着た老若男女で街のカフェやレストランは「プチPV」でいっぱいに。文字通り「明るいお祭り騒ぎ」ワールドカップというイベントの持つ祝祭性、平和性を折々に感じることになりました。
フランクフルトの目抜き通り・ツァイルにあるアディダスショップのディスプレイもドイツ代表!
PVのみならず、各家庭でのTV観戦も大盛り上がりです。特にメーメット・ショル、オリバー・カーンといった90年代の元ドイツ代表選手がコメンタリーをする試合中継は大人気。
・・・え?誰だって??
カーンのコメンタリー???(笑)
っていうかコメンタリーなんかできるのか、ヤツに?!
そう思われたあなたは私だ!
いや、むしろ「ドイツ的に」正しい!!!(爆)
ドイツに行ってから数日後のことでした。予選Lウルグアイ対イングランド戦で、カーンがコメンタリーをしていました。ジャケット姿の彼がTVに映るなり、居合わせた皆から「オリーwww」と、何とも言えないクスクス笑いが。良い機会なので「カーンがコメンタリーしてるってどういう感じ?」と質問してみました。
ドイツ人A「アイツ、今日もマトモにしゃべってるよw」
ドイツ人B「オリー・カーンが1センテンス以上の文を話すって信じられん。しかも正しい文法でwww」
ドイツ人C「バイエルンのGKとしては優秀だったと思うわ(苦笑)でもそれ以外は最低!」
ドイツ人A「どうやって調教されたんだろうなあ…」
あまりの言われっぷりに「え〜!(((^^;」状態の私。いや、個人的にはマテウスはメディア(ビ○ト紙とか)使ってライバルをえげつな~く攻撃するのに対して、エッフェやカーンはもっと動物的な印象がw(爆)
私「日本でもカーンは優秀なGKとしてリスペクトされてはいますが、割とそういうイメージがあって...」 ←おそるおそるw
ドイツ人A「ヤツは人間というよりむしろ類人猿に近いからなw」
ドイツ人B「アイツにコメンタリーなんかできたのか、ってのが引退後の驚きだったw」
ドイツ人C「猿の惑星から来たGK型最終兵器でしょw」
こらえきれず爆笑&悶絶した私wwwちなみに「どんなコメントしてるんですか?」と聞くと「特に変なことは言ってないよw 主にテクニカルな面の解説で」 ←えっ
皆さん愛情の裏返しなんでしょうかwひでぇ言われようですが、終始「www」な雰囲気で語られた「伝説のバイエルン&代表GK」カーン氏でした。(^^;
たぶん、カーンについてのエピソードはくだらないことメインに2時間くらい語れると思うので(爆)ひとまず措いて。PV@コメルツバンク・アレナの話です。
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ドイツ対ガーナ、2-2。
負けなかっただけマシか、と。
ホームで負けたときの恐るべき空気感を何度も体験しているワタクシ、感慨に浸ることもなく、さっさと脱出開始。終了後の観客向けコンサートで歌い始めた地元の人気歌手には目もくれず「さぁ!急いで出るよ!」連れ「えっ」私「とにかくスタジアムを出ないと!3万3千人に飲み込まれるからっ!」そう、昔取った何とやら。異様に現地観戦慣れしているワタクシ+スタジアムデビュー戦の連れは感覚が分からずキョトン。「いいから!そもそも駅に入れなくなるからw」早足でトラムの停車場まで行って、居合わせた始発にすぐ乗車、試合終了後40分弱で家まで帰ることができました。
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グループリーグ突破がかかった第3戦、ドイツ対アメリカ。(6月26日)
18時キックオフのためか、アリーナも1/3ほどの入り。最終的には結構入っていましたが。
この日は連れは仕事のため、終了が20時なら危なくもないし、帰り最短ルートも分かったし、と判断しピン参戦です。(昔ローマのオリンピコで23時終了の試合を一人で観に行ったことに比べたらw楽勝ですわ!)
この日は私にとって「欧州サッカーファン現役時代」に大好きだった選手の一人、クリンスマン(2006年W杯時のドイツ代表監督)が、今やアメリカ代表監督として後任のレーヴ・現ドイツ代表監督と対決する、因縁かつ記憶の書庫を旅するような試合でもありました。
ユルゲン・クリンスマン…当時セリエAとプレミアリーグを主に観ていた私の脳裏には、バイエルンやインテルでの姿よりも、何故かトッテナムでの輝くような1シーズンで鮮烈に焼き付いています。黄金の隼、というよりもスパーズの1stユニが白鳥のようで、本当に、素晴らしいストライカーでした。
しかし引退したら悠々自適!なんて現役当時のインタビューで再三言っていた彼が、何の因果か母国W杯開催時(2006年)のドイツ代表監督になってしまって。3位という結果は残したものの全然楽しそうな顔を見せずに疲労困憊して辞めてしまったこと、その後古巣バイエルンの監督に招かれて、1シーズンも持たずに解任されてしまった姿、そういった折々のニュースに胸を痛めていた元ファンは、クリンシーの「崖っぷち状態でもイキイキとした」アメリカライフに心慰められたのも、事実でありました…。
好きな選手には幸せな第二第三の人生を送ってほしいと思うのは、ファンとして当然のことじゃないですか?!そしてクリンスマンにはきっと(ドイツのようにあれこれウルサイ国よりも)サッカー中堅国の監督業が一番適してるのかもしれないですね。
(ちゃんと「星条旗よ永遠なれ」を歌ってるクリンシーはエライ)
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あの時代の好きな選手やチームを語らせたら、二晩くらい寝ずに暑苦しく語ると思いますので、ここではいったん措いてw(^^;
ドイツ人に圧倒的人気のシュバインシュタイガー(@バイエルン・ミュンヘン)前回は途中出場だったので、先発で名前が呼ばれただけで狂喜乱舞する観客たちw愛されてるなあ~w
ちなみにドイツではバイエルンは「国民的人気チーム」で、国内的にタメを張れるのは「ボルシア・ドルトムント」くらいなものですが、いかんせんビッグネームやらスキャンダルやら(笑)ではかなわない、といった様相を呈しています。領邦国家を近代的な「連邦」にした立役者は北ドイツのプロイセン。その現在のドイツが南ドイツ・バイエルンのチームに熱を上げるのも面白い状況ではあります。ちなみにミュンヘンの文化度、バイエルン人のプライドや自意識の高さに加え、ミュンヘンという都市の(ある意味)ポッシュで閉鎖的な雰囲気、独特の居心地の悪さ・・・というイメージは、他地域出身のドイツ人の中には確実にあるようです。
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試合はどちらも譲らず、引き分けか?と思ったものの、何とか決着。
ドイツ対アメリカ、1-0。
膠着状態にも思えた長い時間でした。
しかし16年前のフランス大会を思い出すと、間違いなくアメリカ代表は強くなりました。今や(旧植民地地域に限らず)さまざまなルーツを持つ移民とその子孫たちなくしては成り立たなくなった、欧州サッカーの伝統的強豪国の代表メンバー、中には二重国籍を持つ一流クラブ所属選手も枚挙にいとまがありません。クリンスマンは彼らをいち早く「元祖・移民大国」アメリカの強みとして取り入れて再構築したわけです。サッカー不毛の地と呼ばれたアメリカがかくも変わるとは誰が想像したでしょうか?開催国枠で参加した1994年のアメリカW杯からちょうど20年、隔世の感があります…クリンシーが見出した若手の成長と、世代交代を終えた新生アメリカ代表がロシアで縦横無尽に戦う姿をまた見てみたい!と思いました。
※本人談話によるとベスト16敗退でも2018年ロシア大会まで指揮を執る契約になっているそうで、何よりです。
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今回のW杯、ブラジルまで足を運ぶことはありませんでしたが、生々しいライブの息遣いを久しぶりに感じたPV参戦でした。ユーロ2016やロシア2018の開催時期に欧州を旅される方々は、こんなPVに足を運んで疑似参戦体験はいかがでしょうか?
観光名所だけではない、その国の「情熱的なもうひとつの顔」に出会えることと思います!