『開けば春が来る』
文字どおり、春を閉じ込め
ている戸のこと。
“閉じ込められている“と
表現されるのは、春は格別に
誰もが待ち焦がれている季
節という気分があるからで
しょう。
「戸」を境にこちら側と
向こう側は別の世界であり、
「戸」は別世界への入り口
の比喩として使われています。
このように違う世界につな
がるものの比喩表現には、
「山を越える」「トンネルを
抜ける」「橋を渡る」などが
あります。
「山」には登るつらさが、
「トンネル」には暗闇を進む
不安が、「橋」は川の向こうに
彼岸があるというイメージに
つながり、心理的に深い意味
を持つ言葉です。
薄暗い室内にいて春を持ちわ
びており、戸の隙間からは陽
光が差し込み、戸を開けると
目の前に希望のあふれる「春」
の世界が開ける――そんな
情景の浮かぶ美しい言葉です。