「あの、お水をいただけますか」
きっかけは、花嫁の一言でした。
披露宴前の硬い表情を、冷たい
水がすっと解いていく。
グラス一杯の水の力に気づいた
介添人のアイデアから、帝国
ホテルの「ストローを差した
力水」は始まりました。
来賓の方々も着席され、さあ、
入場、という緊張の高まる瞬
間。
3時間の披露宴の前の、ほん
の10秒に足らない出来事です
が、一口のどを潤すことで、
笑顔になって入場される方も
いらっしゃるのではないでし
ょうか。
型どおりの介添えではなく、
晴れの日の花嫁の
もう一人のパートナーとして、
気持ちによりそうこと。
そこから生まれる小さな心遣いが、
大きな晴れ舞台を支えるのだと
思います。
これには、後日談があり、
花婿は取引先のVANのデザイナ
ーで、朝、帝国ホテルに裏口にタキ
シードを着たまま黒のステーション
ワゴンで乗り付けた際、間違えて
ドアをスライドさせて乗り込んで
来たのが、オードリー・ヘップバ
ーンでした。これには
お互いびっくりしたそう
です。何て結婚式の素敵な
プレセントではないでしょうか。
おもわず、微笑んでします。