この世には、「励まし歌」が
あふれている。近ごろますま
すふえているような気がする
し、さめているはずの若者向
けの楽曲の中に、そんなメッ
セージが多いことにも驚く。
僕が思う「励まし歌」とは、
例えばZARDの「負けな
いで」だ。孝子の「夢をあき
らめないで」や、爆風スラン
プの「Runner」、ゆずの「栄
光の架橋」、GReeeeN]の
「キセキ」もそうだろう。
SMAPの「世界に一つだけの
花」もその仲間である。こう
いう歌を聴いて、「励まされ
ました」「救われました」「勇
気をもらいました」という人
々を見るたび、あ、みんな
同じなんだなと、ちょっと可
笑しくなる。
歌だけじゃない。
映画や、本や、俳句や詩歌、
あるいは書や絵本に至るまで、
人にやさしく声をかけ、なぐ
さめ、あたため、勇気づけて
くれるものは多い。そういう
ものに出会うたび、僕は、あ
らためて人の弱さや心細さを
知る。そして、思い通りにい
かない人の世の大きな壁の前
で、生きるためにけんめいに
もがくいくつもの人生を思
いうかべ、「がんばろうね」
と声をかけたくなる。
「憂き事の
なおこの上に積もれかし
かぎりある身の 力試さん」
誰のものか思い出せないの
だが、もう何十年も前に何
がで読んだこの言葉が、い
まも胸を去らない。