―――こんにちは。
わたしの背中に、伸びやかな
声が届いた。
――― はい。
と答えてふりむくと、そこに、
あのひとが立っていた。
それからゆっくりと、言葉が
やってくる。
――― 絵本をさがしています。
十二年という時間と距離が、一瞬
にして、埋まってしまう。
あのひとは、微笑んでいる。微笑み
の中から、たった今生まれたばかり
のような、言葉の花が開く。
―――もしかして、誰かと待ち合
わせ?
あのひとは、黒い、マントみたい
なコートを着ている。遊牧民のコ
ート。季節はずれ、ではない。
今は冬だから。外は比叡おろし
の吹き荒れる、冷たい季節だか
ら。
わたしは驚きのあまり、言葉を
失い、その場に立ち尽くしてい
る。
柔らかく、あのひとは言う。
―――― また、会えたね。
わたしの背中に、伸びやかな
声が届いた。
――― はい。
と答えてふりむくと、そこに、
あのひとが立っていた。
それからゆっくりと、言葉が
やってくる。
――― 絵本をさがしています。
十二年という時間と距離が、一瞬
にして、埋まってしまう。
あのひとは、微笑んでいる。微笑み
の中から、たった今生まれたばかり
のような、言葉の花が開く。
―――もしかして、誰かと待ち合
わせ?
あのひとは、黒い、マントみたい
なコートを着ている。遊牧民のコ
ート。季節はずれ、ではない。
今は冬だから。外は比叡おろし
の吹き荒れる、冷たい季節だか
ら。
わたしは驚きのあまり、言葉を
失い、その場に立ち尽くしてい
る。
柔らかく、あのひとは言う。
―――― また、会えたね。