
「せつない別れの季節には
想いのたけを集めましょう
そして 朧の籠に乗せ
夜空の海へ 流しましょう」
『ぼーっとかすんで、なま
めかしい気配』
春の夜のぼんやりとかすんだ
状態が「朧」。
湿った南風の運んだ水蒸気
が空気中に立ち込めている
ためです。
夏であれば湿度が高く、蒸
し暑くなりますが、春の湿気
だと、夜気もやわらかく感じ
られ、湿った空気の中になま
めかしい気配を漂わせます。
同様の状態には何にでもつけ
られる語で、代表的なもの
は「朧月」。
どこか濡れたような月が空
にある景色が思い浮かびます。
日本の詩人や物語の作者に
愛されてきた「朧」。
『源氏物語』にも「朧月夜の
君」が登場しますし、漢詩や
和歌にもたくさん詠まれています