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鄭ヘグー論説委員・大学教授
誰がノ・ムヒョン前大統領を殺したのか
[寄稿]利害にさとい人々が幅を利かせる世の中で、彼は本当に ‘偉大な馬鹿’だ.
2009年 05月 25日 (月) 12:07:21 )
昨日の日曜日、私は慶南のボンハに行って来た. 故人になったノ・ムヒョン前大統領の殯所に焚香をするためだ. 参加政府時代大統領国政諮問委員会に委員として参加した縁のためでもあったが, 自ら命を絶たなければならなかあった人間ノ・ムヒョンに対する私の憐愍のためでもあった.
幾多の想いと感情が交差した. 大統領という、もしかしたら一番華々しく重い責任をすべて終えた人が、退任 1年をやっと越した時点で投身という極端な方法によって自殺をせざるを得ない我々社会とは一体どんな社会なのか? 何の考えて彼は自殺という極端的な行為を選択したのか?
ノ・ムヒョン前大統領の自殺はもちろん本人の選択だった. しかしその選択をするようにしたのは、我々な社会の政治的, 社会的外的要因も大きい. 社会の何が、そういう極端的な選択をするようにしたのか?
私はまず保守言論にその責任があると思う. 参加政府在任当時、彼らは大統領の政策を批判するより大統領個人の人格を批判し攻撃した.異常性格者として, 性格破綻者として絶えず食い下がることで、民主的に選出された現職大統領の印象を作ってしまった. しかし彼らはそれで終わらせなかった. 退任以後にもハイエナのように食い下がったのだ.
次に私は就任以後、李明博政府の広範囲な政治報復がノ・ムヒョン前大統領自殺のもう一つの原因と思う. 広く知られているように李明博政府は親参加政府人士、進歩的人士と思われる人々を大挙公職から追い出して来た. またそれと判断される政府組職や民間団体、そして一般市民に対しても過度な不利益を与え、弾圧をほしいままにして来た. そしてそういう政治報復の真ん中に、まさにノ前大統領がいたのだ.
しかし以上の原因よりノ・ムヒョン前大統領の自殺にもっと直接的で力強い影響を及ぼしたのは、まさに検察の公権力濫用だ. 検察は李明博新政府の嗜好を把握し, はじめからノ・ムヒョン前大統領周辺に対して緻密で大大的な標的捜査をして来た. 側近に対して, 家族に対して, そして最終的にはノ前大統領に対して包囲網を狭め執拗に圧迫を強めてきた.
腐敗の疑いがあれば検察が捜査することは当然だ. しかしその捜査は公正、公平でなければならない. 政治的理由で特定対象を標的に決め、疑いが出るまで果てしなく続けることが果して正当だろうか?
検察が過去の独裁者に対して, 腐敗した財閥に対して、自分たちの声を上げた事があったか? そんな検察が政権が変わるやいなや前職大統領に対して大大的な標的捜査を敢行して来たのだ. それは検察圏の濫用を越して検察の ‘蛮行’(蛮勇)だ.
私はノ・ムヒョン前大統領が腐敗していたかも知れない、と思う. また参加政府時代に、彼の政策に対して論難があり得ると思う. しかし、それでも私は、少なくとも次のような点では彼を高く評価したい.
第一は歴代大統領の中でノ・ムヒョン前大統領が一番少ない腐敗で終えている。 したがって一番きれいな大統領といえなくもない. 全斗換前大統領の腐敗は 1兆ウオンに達したし、ノ・テウ前大統領の腐敗は数千億ウォンに達していた. しかしノ・ムヒョン大統領の腐敗疑惑は、大きく見積もっても数十億ウォン。 もちろんそれも少ない金額ではない. しかし我々社会の腐敗した既得権者たちが, 大挙して彼に石を投げることができるのか?
二番目は人間ノ・ムヒョンに対する評価であり, これは彼の自殺以後今更確認した側面でもある. 我が国では, 特に既得権層の上層社会には合法、不合法を問わず多様、多数な腐敗が存在して来た. しかし彼らは自らを責めることも, 悩むこともしない。 むしろそれを隠すのに忙しい. しかしノ前大統領は、自らその道徳性を守ろうとし、自責感に苦しみ、悔しさも誠実に訴えようとした. そして結局それを命を担保にして購うに至った. それほど彼は自分の生き方に透徹した.
ノ・ムヒョン前大統領の死に対して保守言論と李明博政府は、一斉に哀悼を示して和解と安定を強調している. ‘鰐の涙’か, それとも一筋でも良心が残っていたというのか? 利害にさとい人々が幅を利かせる世の中で、彼は本当 に‘偉大な馬鹿’であった