「岡崎正義のかわら版」

スピリチュアルカウンセラー「岡崎正義」が、日々感じるこの世の事象を綴っていきます。

時代小説「お幸と辰二郎」第4章・・・時空を超え再会した二つの魂

2017年03月31日 12時33分14秒 | 小説・物語

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 時代小説「お幸と辰二郎」第4章・・・「沈む太陽」

 それから晴れて夫婦となったお幸と辰二郎でしたが、時が経っても、相変わらず毎日賑やかな一家のようで・・・。

 「おい!お幸! おいらの足袋はどこでぃ!」

 「フフ♪ その、肩にぶら下げているのは、なんですか・・?笑」

 「お、おう・・、誰だ!ここに掛けやがったのは!!」

 「何言ってんだい!! このバカ息子が!! ちっとは父親らしくならないもんかねぇ・・。先が思いやられるよ・・」

 「何を~!! 口が減らないババアだな! そろそろ棺桶で寝た方が良いんじゃねえのかぁ!!?」

 「はいはい♪ そろそろ出ないと遅れますよ♪」

 お幸に促され、しぶしぶ仕事に出掛ける辰二郎。

 「んにゃろぅ・・。 お~い♪ 父ちゃん行ってくるぞ♪ すっ飛んで帰ぇって来るから待ってろよ♪♪」

 口の悪い辰二郎でしたが、生まれて間もない長男には猫撫で声のようで・・・。

 お幸と抱っこされた長男に見送られ、元気に出掛けた辰二郎なのでした。


 そんな日常が繰り返され、お幸のお腹には2人目の赤ん坊が入っていたある日の事です。

 「お幸ちゃん、ちょっと寄り合いに顔出してくるから、あとで裏の洗い物取り込んどいてくれないかい」

 「はい♪ おっかさん。ゆっくりしてきてくださいね♪」

 「そうもいかないよ♪ あのバカが帰ってくるまでに戻らないと、何言われるかわかったもんじゃないよ!」

 そう言うとお吉は、近くの茶屋での寄り合いに出掛けて行ったのです。


 それから2時間ほど経った頃でしょうか。 血相変えて家に飛び込んでくる男性の姿がありました。

 「お、お、おい! お幸ちゃん!! お幸ちゃん!! てーへんだ!! お、お吉さんが!!」

 裏で洗い物を取り込んでいたお幸は、その声に慌てて土間に姿を現しました。

 「おっかさんがどうしたの!!?」

 「た、た、倒れちまって! ピクリとも・・! 動かねぇんだ・・!!」

 「!!! 巳之吉!! ここを動くんじゃないよ!!」

 長男にそう言うと、お幸は身重の身体を庇いながら、必死に茶屋へと急いでおりました。

 
 茶屋へ到着すると、お幸は奥へ飛び込み、お吉の姿を探しました。

 「おっかさん! おっかさん!!」

 すると、お吉の姿は、奥の座敷にありました。

 「おっかさん!!!」 駆け寄るお幸。

 その声が届いたのか、わずかに動くお吉。

 「おう!! お吉さんが目を覚ましたぞ!!}

 寄り合いで集まっていた一同も、一斉に声を上げました。

 「おっかさん!しっかりして!!」

 「・・あ・・、お幸ちゃんかい・・・。どうやら・・、お釈迦様が・・、お迎えに・・、来たようだよ・・・・」

 「なに言ってるの!! すぐに戻るって!言ってたじゃない!!泣」

 お幸はしっかりとお吉の身体を抱きしめながら、泣き叫んでおりました。

 「自分の身体はね・・・、自分が・・、一番・・、分かるからねぇ・・・。こりゃ・・・、どうにもならないよ・・・」

 「そんなこと言わないで!! 今からまだこのお腹のややこも産まれてくるんですよ!!泣」

 「・・会いたかったねぇ・・・、その子にも・・・」

 「いやぁ!! しっかりして!! 死なないで!!!」

 その時、物凄い勢いで茶屋に飛び込んでくる姿がありました。

 「ハァ、ハァ、ハァ!! おい!! どこだ!! ババァ!!」

 裾もはだけ、渾身の力で街を駆け抜けてきたであろう辰二郎でした。

 「・・なんだよ・・、お前は・・。いっつも・・、バカでかい・・、声だねぇ・・・」

 今にも消え入りそうな声で、お吉が辰二郎に対して答えておりました。

 「おい!ババァ!! 大袈裟に寝っ転がっているんじゃねぇ!! 早~く帰ぇるぞ!!」

 姿を見つけた辰二郎が、涙を浮かべながら、お吉に向かって怒鳴っておりました。

 「笑・・、上に・・行く時ぐらい・・、静かに出来んもんかねぇ・・・」

 「何言ってやがんだ!! ババァがいねえと、お、お幸が寂しがるだろ!!」

 「・・もう・・、大丈夫だよ・・・。お前の・・お望み通り・・、棺桶に入ろうってんだよ・・・笑」

 「な、な、な、何勝手な事言ってんだ!! 棺桶に入れるのはな!! お、お、俺がじじいになってから・・・」

 うろたえる辰二郎を優しいまなざしで見たあと、お吉はゆっくりとお幸に顔を向けながら、震える手で、お幸の手を握りしめました。

 「お幸ちゃん・・・」

 「おっかさん! なんですか!!?」

 お幸もしっかりとお吉を見つめ、その手を握り返しました。

 「・・この・・、バカ息子を頼んだよ・・・。口は悪いけどね・・・、根は・・正直な・・子だからね・・・・」

 そう言うと、お幸の手を握りしめていたお吉の手が、ゆっくりと力を失い、お幸の手のひらから、パタンと畳の上へ倒れていきました。

 「おっかさん・・? おっかさん? !!! おっかさん!!!!!!泣」

 ゆすっても動かないお吉の身体に、お幸は気が狂ったように泣き叫び、すがりついておりました。

 そのそばで、仁王立ちで呆然とし、一点を見つめながら、絞り出すような、か細い声で辰二郎が呟いておりました。

 「・・おい・・、ババァ・・。なに寝たふりしてやがんだぃ・・・、早~く帰ぇるぞ・・・」

 ・・・・・・・

 「ババァ・・笑、何いつまで・・、寝っ転がっているんでぃ・・、聞えねえのかい・・、早~く・・・」

 「辰さん!!! もう・・・良いの・・。行ったのよ・・・。おっかさんは・・・泣」

 お幸はお吉の身体を抱きしめながら、うろたえる辰二郎に言葉を掛けました。

 すると辰二郎は、よろよろと足を進め、お吉の亡骸のそばに、膝から崩れ落ちるように座り込みました。

 「・・・、おぃ・・、おぃババァ・・、バ・、おっ母・・、おっ母! おっ母!! おっ母!!!!」

 今まで我慢していたであろう感情を、ありったけの叫び声を挙げ、辰二郎は動かなくなったお吉にすがり付き、吐き出しておりました。

 その悲痛な声は、夕焼けに染まる綺麗な街並みとは裏腹に、いつまでも茶屋に響いておりました。


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2 コメント

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Unknown (まいこ)
2017-04-01 14:22:23
。・゚(つωஇ`)。゚・。シクシク
泣きました・・・!
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Unknown (ヨッシー)
2017-04-01 22:07:22
お吉さんとの縁も気になる~!
返信する

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