痛風を引き起こす高尿酸血症。血中の尿酸値が7mg/dlを超えた状態が続くと、血中の尿酸が結晶化し痛風発作に結びつく。近年、遺伝子変異によってそのリスクが高まることも明らかになった。痛風にならないための最新情報を探った。
【便からの排出低下】
防衛医大、東大、東京薬科大の共同研究で、痛風には「尿酸排泄(はいせつ)輸送体ABCG2」の遺伝子変異が関与していることは以前この欄で紹介した。遺伝子変異に加え、乱れた食生活習慣を続けると、痛風発作のリスクは上昇する。体内で何が起こっているのか。研究者の1人、防衛医大分子生体制御学講座の松尾洋孝講師が説明する。
「体内の尿酸は、3分の2が尿、3分の1が便で体外に排出されます。遺伝子変異があると、尿からの排出機能は高まる一方、便からの排出機能が低下することが分かりました。これは全く新しい概念で、『腎外排泄低下型』として医師の間にも広がりつつあります」
高尿酸血症では、一般的に体内で過剰に尿酸が生成される「産生過剰型」、腎臓からの排泄機能が低下する「排泄低下型」、「混合型」の3タイプに診断された。そのうち、「産生過剰型」の多くは実は「腎外排泄低下型」だったのだ。
【尿酸結晶が消える】
現在、産生過剰型と排泄低下型に作用する薬しかない。遺伝子変異で「腎外排泄低下型」に陥っている人は、治療をどう受ければよいのか。
「現在ある薬でも、十分に尿酸値を下げることは可能です。ただし、下げ方が問題。尿酸値が6以下になると、尿酸結晶は自然に溶けて消えていきます。しかし、7-8では、結晶は残ったままなのです。正常値の7以下であっても、尿酸結晶が存在していれば、痛風発作は起こります。まずは薬によって徐々に6以下に下げましょう」
薬を服用しても尿酸値が下がらないときには、薬そのものが病態にあっていないことがある。痛風の専門医に相談を。
【ダイエットが不可欠】
薬で尿酸値を6以下にすると、尿酸結晶は溶け出して痛風発作のリスクは低くなる。しかし、薬の服用をやめれば元のもくあみ。痛風に関わる遺伝子変異を持つ人はなおさら、再び尿酸値上昇に見舞われやすい。打開する策はあるのか。
「尿酸結晶は、10年程度の長い年月をかけて少しずつたまります。ところが、尿酸値を6以下に抑えるとほとんどは2年程度で結晶は消えてしまう。薬やダイエットなどで尿酸値を6以下にキープすれば、痛風は治る病気なのです」(同)
以前は、尿酸値を上げるプリン体を含む食品を控えることを指導されてきた。しかし最近では、プリン体の摂取抑制より適正な体重へのダイエットによって、痛風発作が起こりにくいという。
「薬で尿酸値を6以下にしつつ、1カ月1-2キログラムを目安にダイエットをしましょう。痛風遺伝子検査で自分のリスクを知って、モチベーションを維持することも重要。私自身、痛風の遺伝子変異を持ち、身長175センチで92キロのときには、尿酸値が9・2に跳ね上がりましたが、20キロの減量を実現したら尿酸値も正常になりました。標準体重であれば、痛風発作のリスクはかなり回避できるので、ぜひ試していただきたいと思います」と松尾講師はアドバイスする。