今季の巨人は地方開催の公式戦が目白押し。ふだんプロ野球を生観戦できないファンは大喜びだが、その背景には首都圏におけるセ・リーグの笑えない現実がある。
巨人ナインは21日、1週間の長期遠征に出発。まずは22日に宮崎市で横浜DeNA戦を行う。春季キャンプのメーン球場であるサンマリンスタジアム宮崎での試合だが、公式戦開催は10年ぶり2回目。この日、羽田空港で取材に応じた原監督も「久しぶりだよね」と意気込んだ。
宮崎でのナイター終了後はバスで約2時間かけて深夜に鹿児島入り。23日には県立鴨池球場で再びDeNAと対戦する。24日に飛行機組と新幹線組に分かれ広島へ移動、25日からは広島3連戦(マツダ)だ。「特にバス移動はしんどい。故障を抱える選手には負担がかかるし、春先はインフルエンザも広まったし。今年は地方の試合が多いよね」(球団関係者)
別表の通り、今季巨人が本拠地の東京ドームないし他球団の本拠球場以外で試合を行う“地方巡業”は15試合。その要因は対戦カードに注目すると浮かび上がってくる。8割がヤクルト、DeNA絡みなのだ。
関係者は「とにかくヤクルト、DeNAとの試合は東京ドームのビジター席が埋まらない。首都圏3球団で合同企画などもやってみたが焼け石に水。どうせ客が入らないなら、球団の戦略として意味がある地方でやろうという話」と説明する。
ヤクルトやDeNAでも、巨人とのホームゲームにかつてほどのうまみがなくなっている。15日には静岡・草薙球場でヤクルト主催の巨人戦が行われたが観客数は1万5955人。翌16日の本拠地・神宮での同カードの2万1373人より少ないが、ヤクルト関係者は「興行権を地元テレビ局に買い取ってもらっている。客が何人でも球団には関係ない」と明かす。
静岡では観客の大半が巨人ファン。まだまだ地方で巨人ブランドは健在で、“巡業”相手を選ぶならやはり巨人戦が一番おいしい。おのずと巨人の地方遠征が増えることになる。この調子でいくと、在京3球団同士のカードは首都圏で空洞化が進みそう。“ドーナツ化現象”の先には、球団移転や球界再編が待っているのかもしれない。 (笹森倫)