昨今の「歴女」たちには太刀打ちできないが、オヤジ、かろうじて大河ドラマの第1作『花の生涯』に間に合った。尾上松緑ふんする井伊直弼が雪の降る桜田門外で襲撃される場面が今も目に焼き付いている。だから、歴代の大河はもちろん、歴史情報番組(大半がNHK)には目がない。
松平定知アナの名調子も懐かしい『その時歴史は動いた』、その後継番組で和装の渡邊あゆみアナが案内役を務めている水曜夜の『歴史秘話ヒストリア』はもちろん、前にも書いたEテレ火曜夜の『先人たちの底力 知恵泉』も井上二郎アナの作務衣姿を見たさにときどきのぞくが、いま一番はまっているのが木曜夜のBSプレミアム『英雄たちの選択』だ。
日本の運命を決める岐路に立った英雄たちが、さまざまな選択肢の中からなぜそれを選んだのか、その選択にはどんな人生経験や価値観が影響し、また後世にどんな影響を残していったのか、といったことを、スタジオに集った歴史学・軍事学・心理学・経済学などの専門家が、英雄の「脳内」に分け入り、探る。
一歩間違えば平凡なシンポジウムになるところを、司会を務める気鋭の歴史学者・磯田道史さんが毎回、巧みにさばき、一級の歴史教養番組に仕立てていく。渡邊佐和子アナがサポートし、俳優の松重豊が渋い声でナレーションを担当しているが、とにかく磯田さんの、学者とは思えぬ滑舌のよさ、弁舌のさわやかさが異彩を放っている。松岡修造に匹敵する熱い思いが感じられ、ハタと膝を打ったり、目からウロコが落ちることもたびたびだ。
「“脳内”に分け入るならまかせて」とばかりに、夕刊フジで『脳内の奇妙な冒険』を連載している“超美人”脳科学者・中野信子さんも準レギュラー出演している。白状するとオヤジ、半分は中野さん目当てで見ている気がしないでもない。 (新橋のネクタイ巻き)