本年もよろしくお願いします。世界が固唾をのんで見守るトランプ大統領の就任が近づいてきました。
ここまでの人事や発言などで気になったのは、元軍人や資源会社や金融関係者が多く要職につくようなところで、政治に疎いトランプさんは、採用した人々のバックグラウンドにある利害関係や、彼らのもつ知識や世界観にもとづく判断に促され、大統領の素人感覚のポピュリズムとミックスされながら、利害が対立しないかぎりにおいては、なんとなく意思決定がなされてしまうのではないかと思いました。こないだの記者会見を見ていても、自国内の雇用を創出する発言を強調していましたが、矛盾をはらんだ過激な発言のなかでは、一番大丈夫そうな最たるものではないかと思いました。
現時点で、これまでのトランプさんの発言と、閣僚として指名された人々の個別の発言や見解と真逆のものもあったり、その辺を感情的にならずに、論理的な整合性を持たせて方針を示していかないと、混乱を世界にばらまくことになるのでしょう。
選挙前の発言の中で、当初、中国も喜んでトランプさん支持にまわる動機の一つであったと思われる、世界の警察は止めるような発言については、連れてきた人材は、過去の世界観(利害関係)に縛られる人々ですし、最近では、世界の警察を止めるどころか、イスラエルを支持する発言をしたり、南シナ海や台湾の問題に積極的に関わっていく発言がでたりと、政権末期のオバマさんとは対照的に世界の政治に介入する気配を見せています。一貫性を欠いた情緒的な政策とならないように祈るばかりです。
中国の南シナ海での違法行為には、元軍人が閣僚に多いという点からも、強いアメリカを演出する必要もありますし、力を背景としてルールに従わせるような行動につながっていくのではと想像してしまいます。
一方、経済政策については、反グローバリズム、保護貿易主義的な発言が目立ち、自国内に雇用を創出しようと多くのグローバル企業に対して協力(恫喝?)を求めています。無制限なグローバリズムは、弊害もあるでしょうが、輸出もあれば輸入もある、世界で生産(供給)を分業することや、それぞれの国の得意分野を生かして貿易を行うことは、市場全体にとってメリットがあるわけで、
利益が強国であるアメリカ側に極端に偏るような、独善的な保護貿易主義を押し通せば、今後、敵対する国相手ならいざしらず、ふつうにお付き合いをしている国との関係もぎくしゃくし、一方アメリカの物価もあがりますので、米国にとって、米国民にとって、必ずしもメリットのみをもたらす結果にはならないでしょう。
ルールを守る常識的な同盟国と経済圏を構築する件については、もう少し閣僚らは大統領を説得して、きたるべき大きな対立に備えることが必要に思います。米国と同盟関係にある世界の多くの人々に対して、納得させる大義や規範を示して進めて行くべきです。
そもそも、第二次大戦後の世界では、世界の警察をアメリカや国連主導でやっていたと思いますが、オバマさんのあたりでそれを止めてしまい、国連も人にめぐまれず(積極的にそうなるような人材を指名した?!)権威は失墜し、その存在意義まで疑われ始めています。
そもそもの原因は、一口にいって採掘技術がよくなったからかもしれませんが、シェールオイルやシェールガスなどの資源が、アメリカ一国で自前で賄えるようになり、要すれば外国にまで売ることが出来るような、歴史的に見て大きな変化が起こったことがあげられます。
中東諸国に対して、イスラエルと組みながら、警察官?として様々な工作活動や政治介入を行う理由が消失したことが一番大きく、オバマさんの政権末期ということもありましたが、ルールを守らない国に対して、だれもリーダーシップを取ることを回避して、世界に対して放置プレーが蔓延してしまいました。
さらにさかのぼれば、敗戦国である日本を戦後に悪者にして、2次大戦前の直前の世界では、戦勝国に覇権主義などなかったようなきれいごとが、歴史として刻まれました。その辺の歴史を客観的に清算する間もなく、反共の冷戦に突入してしまいました。戦争の悲惨さに疲れた世界中の人々が、大戦の反動で平和やきれいごとを希求したことは、まぎれもない事実で、それ自体は、素晴らしいことではありますが、国連の強化や戦勝国が警察をする前は、日本も含めて大国一斉に資源の奪い合いをしていたのも事実です。そういったざっくりした延長線上で、中東にも先進国が強く関与してきた時代がついこないだまであったわけです。
アラブの春とよばれるように、アメリカが手を離してしまった空白地帯に、混乱に乗じるかたちで反米国が関与していくようになってしまい、そしてつい最近は、中国が一巡遅れで、共産主義を捨てて覇権主義的なカジノ経済に切り替えたことで、バブルが起こり(これはリーマンショックのショックを、特に欧州において緩和した?問題を先送りできた?)、中国が今後も成長し続ける見通しの下、資源が一時期さらに高騰しましたが、中国のバブル崩壊の過程で資源も大幅に下落しました。現在、移民問題に悩む、欧州の現左派政権は、そういった中国の繁栄と没落のなかで、利害を等しく(買収?)していたわけです。
トランプ政権が、中国と対立するのであれば、国際法を無視する、条約を無視する、資本主義や市場のルールを無視する国は、制裁無くしては抑止できないわけで、そういった大義名分を世論に訴えかけていく必要があるかと思います。また対立によって失われる経済的な損失なども明確にしながら、戦争による被害が経済面のみならず自国民や同盟国の血が流れるようになると、ベトナム戦争ではありませんが、メディアや世論に手のひらをかえされるか、言論を圧殺しないと前に進めないような面倒なことになるかもしれません。(といっても既存のメディアは、世論の支持を得られないうえに、世論の意図するところを汲み上げることも出来ず、依然としてネットの影響が強いままなのでしょうか。)
行き過ぎたグローバリズムやグローバリズムにただ乗りする無法国家を排除し、地産地消、消費地に生産を取り返すことは、悪いことではないと思います。
グローバリズムのメリットを最大限に受けながらも、大前提であるはずのルールを無視した、ただ乗りや、行き遅れた覇権主義、次の受け皿を用意しないで国家というシステムを否定する勢力、もしくは、それら(世界政府等)を偽装する覇権主義国家に対するアンチテーゼとして、大義名分を掲げ、ポピュリズムとの整合性を保ちながらかじ取りを行っていくのかと思います。
それにしても株屋や資源会社出身者や元軍人など一番色濃く、古い世界観(利害関係)に縛られる人が、今後の米国の政策に絡むとなると、世界が断絶すれば、改めて資源高騰が起こるかもしれないし、関係者は儲かります。トランプ陣営は、バブルのはじけた中国よりロシアに親近感を覚えるようですから、ロシアのみならず資源で儲かる国や企業は、高みの見物なのでしょう。