皆さんは、「スーパーゴルフ2」という機種をご記憶だろうか?
1991年(平成3年)にマルホン工業から登場した、
初期新要件ハネモノである(祝・マルホン復活)。
賞球数は「8&15」で、最高15ラウンド継続。
元々は、「スーパーゴルフ1」という先行機種が
マルホン・新要件ハネモノ第一弾で発表されたが、
そちらは出回ることなく、この「2」がデビュー。
なお、旧要件期の1989年、豊丸が「スーパーゴルフP-1」という
ハネモノを既に出している(始動チャッカーの位置が特徴的)。
また、本機登場後の1992年には、京楽が新要件権利モノ
「スーパーゴルフ(2,3,4のシリーズ)」をリリース。
本機は、別名を「マルホン版・マジカペ」という(滝汗)。
実戦経験のある方なら、お判りだろう。本機は、三共の旧要件ハネモノ
「マジックカーペットI」(1989年)を、強く意識した(であろう)台。
マジックカーペットI(三共、1989年)
意識というか、「マジカペそのまま」といってもいいだろう。
それくらい、ゲーム性が「酷似」していた事で知られる。
旧要件時代、大一が「マハラジャ」というハネモノを出した時も、
「マジカペがモチーフ」といわれたが、本機とマジカペの類似性は、
特にゲーム性において、マハラジャのそれを凌駕していた。
この時期マルホンが出したハネモノは、過去の名機の「オマージュ」が
非常に多く、しかも「他社」のそれを意識したものが、少なくなかった。
「ローリングマシンI」(三共)によく似た「アドベンチャー」、
「うちのポチI」(三共)を彷彿とさせた「エンゼル」、そして
「魔界組」(西陣)のリメイク感たっぷり「ラッキーボーイ」など。
(後に、「ダッコちゃん」という魔界組っぽいハネモノも登場)
本機も、上品な(≒ケチくさい)羽根の開き具合、ヤクモノ上段スロープ、
ヤクモノ奥の可動式貯留ステージ、振り子のように左右に動くVゾーンなど、
どれをとっても「マジカペ然」。マルホン開発陣の、ライバル三共に対する
強い「リスペクト」の表れであろう(好意的解釈)。「マネホン」などと
揶揄する向きも、少なからずあったが…。
同時期には、本機と同じようなヤクモノの兄弟機「たまくん」も存在。
(当時のマルホンは、ドラくん(デ)、くるちゃん(権)、コン吉(権)、
ポン太(権)など、妙にユルユル感の漂う機種名が多かった…)
(デ)…デジパチ (権)…権利モノ
マジカペのモチーフが、アラブの「空飛ぶ絨毯」だったのに対し、
本機は「ゴルフ」がテーマで、ビジュアル的な違いは大きかった。
(同年のマルホンは、先行機「バーディーチャンス」という
ゴルフのハネモノ(スライド式の羽根)も送り出している)
盤面左上に大きく描かれたゴルファー。
その背景には、巨大なゴルフボール。
盤面センター上部の英字ロゴ。
「MARUHON・PRO・GOLF・TOUR
WORLD・CHAMPIONSHIP」とある。
「マルホン主催の世界ゴルフツアー」との設定か。
盤面右上には「ホールガイド」のような一覧表。
「BENT」はベント、「KORAI」はコーライ。
何れもグリーンの芝の種類である。
ベント芝、コーライ芝それぞれのグリーンまでの距離や、
規定打数(パー)といった各ホールの情報が書いてある。
「BACK」(プロ向け)「REGULAR」(一般向け)など、
ティーの位置も2種類表示しており、なかなか芸が細かい。
さらに、ハネのデザインは「ヤシ」ではなく「クラブとボール」、
ヤクモノ奥の貯留ステージが「魔法の絨毯」ではなく「グリーン」、
そのステージに乗っているのは「王様」でなく「ゴルファー」、
Vゾーンも「宝箱」でなく「グリーンと『HOLE IN ONE』の文字」と、
徹底してゴルフを強調。「決して、マジカペの二番煎じではない」という、
メーカーの強い意志(オリジナリティの主張)が見て取れる(好意的解釈)。
さらに、マジカペとの顕著な違いとして、ヤクモノ下に
設けられた、「7セグデジタル」の存在が挙げられよう。
Vゾーン真下の赤い7セグ(2ケタ)が、本機の大きな特性だ。
ハネ両脇の「START」と書かれた肩チャッカーへの入賞で、
このデジタルが変動を開始。「33」か「77」で止まれば、
ヘソの電チューが約5.6秒開く。電チューは2チャッカーを
兼ねており、電チュー入賞でハネが2回開く仕組みだった。
因みに、デジタル当選率は「1/25」となっていた。
電チュー変動中、かなり騒々しい効果音が鳴るのも特徴。
機能的にはマジカペと異なる7セグだが、「配置」はほぼ一緒。
この点も、マジカペの「オマージュ台」たる由縁(好意的解釈)。
因みに、マジカペの7セグは「大当りラウンドと入賞個数」を表示。
本機では、ヤクモノ「上部」の2ケタデジタルが、それらを示した。
通常、盤面左上(谷釘下)にある風車の外側に流れた玉は、
羽根に絡まず、オトシにも入らず、「無駄玉」になり易い。
しかし、本機の場合、風車外に逃げた玉が「START」に入って
小デジを回す可能性があった為、無駄玉が減る「利点」もあった。
左右オトシ(1)とヘソ(2)のチャッカー。各チャッカーに描かれたゴルファーの
イラストもいい味を出している。電チュー型のヘソは、デジタル当選で約5.6秒開放。
この電チューに入れば、ハネが2回開く。電チュー開放時間が割と長めだった為、
開放した瞬間などに電チューに入ると、2回のハネ開閉後も、まだ電チューが
開いている事があった。ここで再び電チューに拾われれば、二度目の
ハネ開閉チャンスとなる。デジタルが良く回るほど、有利なのは言うまでもない。
但し、ヘソは通常のゲージ構成になっていて、電チュー閉鎖時でもヘソに入る。
デジタルがほぼ回らないような台でも、ヘソ周りの釘が甘ければ、問題は無い。
一方、左右オトシ入賞時は、ハネが1回開放。「デジタルがサッパリ回らない、
ヘソがキツい」といった状況でも、オトシさえ甘ければ、割と勝負になった。
こうした7セグデジタルや電チューの登場は、平成2年10月の規則改正により、
サブ的な役割を持つ電動役物の搭載が認められた事による。特にマルホンは、
これらを多くの新要件機に採用した。先述の「オマージュ台」についても、
そのほとんどが、小デジと電チューの双方を備える。メーカーにとっても、
「過去機種の単なる二番煎じではない」とする、大きな根拠になっていた。
羽根に拾われた玉は、上段ステージ奥から下段奥に落ちて、手前に折り返す。
通常、手前のVゾーンは、マジカペと同様、中央部分で止まったままである。
手前に戻って来た玉が、角度よく中央方向に向かえば、V入賞のチャンス。
台の「クセ」にもよるが、賞球や継続ラウンドの多い新要件ハネモノの割に、
初V率は良好な部類に入る。但し、マジカペ同様、ハネの「開き」が小さく、
寄り悪の台だと、ハネの空振りの連続で、大いにストレスがたまった。
首尾よく大当りすると、やはりマジカペと同じく、ヤクモノ上段奥にある
貯留用ステージ(グリーンの上にゴルファーが立っている)が下降して、
ステージ上に玉を複数貯留できるようになる。なお、貯留解除までは、
手前Vゾーンは中央で停止したまま。これもマジカペと一緒。
その後、貯留ステージが上昇して貯留解除されると、
ステージ上の貯留玉は一斉に落下して、手前に転がる。
但し、マジカペ同様、この時Vゾーンも左右に動く為、
4個貯留があってもVを外したりした。3個以下なら、なお厳しい。
良好な初V率と比べると、継続率は割とキツい印象が残る。
下段ステージが左右に傾斜していて、解除玉が両サイドに流れ易いのも、
継続率が悪い要因とされた。まぁ、貯留解除後、動き続けるVゾーンに
玉が吸い込まれるか、ドキドキしながら見守るのも醍醐味だったが。
また、V継続率の良し悪しは、台毎のクセによっても左右された。
特に、停止状態のVゾーンの位置が、各台毎に微妙に違っていて、
きっちりセンターに止まっているよりも、左右のどちらかに多少
寄っていた方が、却って解除した玉を拾い易くなり、継続率もアップ。
こうしたクセに加えて、台の「ネカセ」もV入賞率、継続率に影響を与えた。
本機は、当時ホームだった「新宿」界隈でも、割と多くのホールに導入された。
特に、歌舞伎町で勢力をふるう、「日拓」チェーンにおける設置率が高かった。
同チェーンは、西武新宿駅の周辺に集中。「日拓パチンコ村」と呼ばれたが、
その大半の店で、本機の姿が見られたのだ。
この時期はスロも精力的に打っており、歌舞伎町中をハシゴして、当時流行りの
「コンチネンタルI」(瑞穂、3-1)、「コンチネンタルIII」(メーシー、3-1)、
「スーパーバニーガール」(オリンピア、2-2)といった香ばしい台と勝負した。
(あの界隈でお馴染み「5連アポロン」は、まだ出回る前)
だが、不調で持ち金の大半をヤラれる事もあり、財布の中身がおぼつかないと、
ハネモノシマに逃げ込んだりした。そんな折、日拓チェーンで本機を見かけると、
大好きだった旧要件のマジカペを重ね合わせて、引き寄せられるように座った。
かつては、歌舞伎町界隈で当然のように置いてあった「元祖マジカペ」だが、
’91年夏以降、新要件機が勢力を伸ばすにつれて、急速にその設置を減らした。
(高田馬場「ダイナム」なんかは、割と長くマジカペを残していたが…)
件の新宿「日拓村」もマジカペは既に撤去済だった為、亡き名機への思いを、
ぶつけるが如く打っていた。無論、「本家」との違いも、多々感じながら…。
この時期リリースされたマルホンハネモノの中で、最も多く出回ったのが本機。
当時、私と同じような思いで対峙したファンも、少なくなかったのではないか。
もしも、マジカペがまだ多く残っている時期に本機が設置されたなら、
あれほど、世のハネモノフリークに受け入れられる事もなかったハズ。
絶妙のタイミングで登場して、一時期ファンの心を掴んだのは確かだが、
「元祖」のインパクトの強さに勝てず、忘れ去られるスピードも速かった…。
(マルホン「スーパーゴルフ2」の項、了)
マルホンの役物は透明なプラスチック(アクリル?)を使ったものが多く、何となく硬くて玉が跳ねるイメージでした(どちらかと言うと三共もそうですが、西陣や平和は柔らかなABSっぽい感じの材質でしたね。気のせいだと言われればそれまでですが。
釘?バネ?についても、メーカーによってはねっ返りが強かったりそうでなかったりしたような気がしますが、実際のところはどうだったのでしょうね。