のほほん書斎(日高茂和)

漱石には、日本人が得るもののかわりに失うものが見えていたのだと思う。

日露戦争の進行中に書かれた夏目漱石「吾輩は猫である」を三十数年ぶりに読み返した。知的遊戯的文章世界は滑稽味とともに刺激的なスパイス満載だった。漱石自身がモデルと考えられる苦沙彌先生が物語終盤に友人との冗談めかした会話のなかで次のように語る。

「とにかく此勢で文明が進んで行った日にや僕は生きてるのはいやだ」

維新のただなかに生まれその直後に育った漱石には、日本人が新たに得るもののかわりに失うものが見えていたのだと思う。
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